第43話 自分で釣った魚は美味い
「ヘンリエール、エサ付けて~」
「自分でやりなさいよ……」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日はわたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の同期の人たちで魚釣りに来ました。
〝山野井釣り堀〟
ここはイザヨイの山岳エリアにある釣り堀で、ニジマスやヤマメなんかを釣ることが出来るそうです。
釣った魚はその場で調理してくれるので、今日はいっぱい釣っていっぱい食べようと思います。
「っていうか、メロの釣り針小さすぎてエサ付けるの難しいんだけど……」
一緒に釣りをしている同期のメロは妖精族というかなり小柄なヒューマンなので、釣り竿も妖精族用の小さいタイプだ。
この割りばしみたいな竿で何が釣れるのかしら……メダカとか?
「ヘンリエールの手、なんか生臭いね」
「今さっきあなたの為に練り餌を触ったからね」
釣りに使うエサは『練り餌』という、なんか粘土みたいなやつ。
正直ミミズとかじゃなくて良かったわ……ちょっと変な匂いするけどね。
「メロ、釣りって初めて~。ヘンリエールは?」
「わたしは地元にいたときに一度だけ行ったことがあるわ。おじいちゃんが好きだったのよ」
あの時はおじいちゃんがエサを付けてくれた。
たしかブドウ虫とかいう……いや、思い出すのはやめておこう。
「どうやってやればいいの~?」
「魚影の近くに糸を垂らせば大丈夫よ。釣り堀じゃなくて普通の川とかだったらまた変わってくると思うけど」
「じゃあメロは誰も届かない穴場スポットに行っちゃお~っと」
「あっずるい!」
メロは釣り竿を持ったまま池の真ん中まで飛んで行って、そこで釣りを始めた。
さすが妖精族。なんか海釣りみたいね。
「わたしも自分のウキに集中しないと」
ぴく、ぴくぴく。
「お?」
ぴくぴくぴく。
「おお~?」
ぽちゃんっ!!
「きたっ!!」
ウキが沈んだタイミングに合わせて竿を立てる。
バシャバシャバシャ!!
「け、けっこう力強いのね……! よっと!」
ぴちぴちぴちぴち!
「釣れた~!」
これはニジマスかな?
中々良いサイズなんじゃないかしら。
「はあ、早く塩焼きにして食べたい……」
「ヘンリエール~! た、助けて~!」
「……ん?」
釣れたニジマスを針から外してバケツに入れていると、どこからかメロの声が聞こえてくる。
バシャバシャバシャバシャ!!
「ヘ、ヘンリエール~!!」
「ちょっメロ!? なにやってんの!?」
「さ、魚に引っ張られて~!!」
池の方を見ると、竿を持ったメロが何かに引っ張られて水面を飛び回っていた。ジェットスキーかな?
「て、店員さ~ん!柄の長い網貸してくださ~い!!」
この後、メロと魚が陸の近くまでやってきた所で網を構えて無事に魚をゲットした。
「メロちゃんでっかいコイ釣ったね~」
「えっへへ~まあね~」
「釣ったというか、大型犬の散歩してる子供みたいだったけどね」
……。
…………。
「お待たせしました~! こちらニジマスの塩焼きとコイのあらい、コイこくになりま~す!」
「「わ~い!!」」
わたしが釣ったニジマスを塩焼きにしてもらい、メロの釣った(?)コイはお刺身とお味噌汁に。
「ヘンリエール、はやく食べよう!」
「そうね……それでは、森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はぐ」
「いただきま~す」
…………。
「「おいしい~!!」」
ニジマスの身はフワフワで、味付けは塩だけなのにものすごくギュッとした旨味を感じる。
「ヘンリエール、このコイのあらい、めっちゃおいしい!」
「どれどれ……うわうっま! なにこれ!? コイってこんなに美味しいの?」
コリコリとした食感で、海鮮のお刺身とはまた違った美味しさ。
見た目はちょっと不気味だったけど、コイ、美味しいわね。
「あ~……お酒飲みたい」
「コイのあらいでお酒が飲みたくなるのはさすがにオジサンじゃない?」
―― ――
「はい、それでは釣り竿と餌のレンタル代、ニジマスの塩焼きが3匹、コイのあらい、コイこくが1匹で……2900エルになりまーす!」
「はーい」
「ごちそうさまでした~」
「ありがとうございました~!」
…………。
……………………。
さすがに市場で買った方が安いか。
【山野井釣り堀/ニジマスの塩焼き、コイのあらい、コイこく】
・お店:自然豊か。山の方なのでちょっとアクセスは悪い。
・値段:ちょっと高い。
・料理:自分で釣ったから余計に美味い。
ヘンリエール的総合評価:82点。
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