第37話 小魚の踊り食いは目が醒める



「はっはっは! ヘンリエールさんかなり飲めるね~! ほれもう一杯!」



「コク、コク、コク……ぷはあ~! 美味しいです!」



 こんばんはぁ、ヘンリエールでぇす。

今日はわたしが働いている商業ギルド『イザヨイ食品』と取引先のギルドの合同飲み会にきてまぁす。

飲み代はギルド持ちなので、いっぱい食べて飲んじゃいまぁす。



 〝鮮魚レストラン・掌輪舞〟



「もうヘンリエール~明日二日酔いになっても知らないよ~?」



「大丈夫だよメロ~明日は八日だから!」



「日付の話はしてないよ~」



 ちょっと飲みすぎちゃったかな。やっぱ魚料理とイザヨイ酒っていうわたしの好きな組み合わせが揃っていたのが良くなかったわ。



「あ、すいませーん! イザヨイ酒の……櫻河もういっぽん!」



「ヘンリエール、それもう5本目だよ~」



「なんだい、ヘンリーのやつひとりで一升近く飲んでるのかい」



「もういっぽん! ぽん……ポン酢?」



「こりゃあ相当酔ってるね。ようし、少し酔いを醒まさせてやろうかね」



「パーシアスさん、どうするんですか~?」



「まあまあ、ちょっと良いもん頼んでやるよ」



 …………。



「ヘンリー、ヘンリー聞いてるかい?」



「あっパーシー先輩~お酒きました?」



「おうよ、ほれこれをグイーっとやりなグイーっと」



「はーい、ぐいーっと……あれ? なんか入ってますよこのお酒」



「それはホワイトフィッシュだね」



「お魚、泳いでる……」



 なにこれ? これ眺めながらお酒飲む感じ?



「すご~い! メロ踊り食い見るの初めて~!」



「えっなに? 踊り食いってなんのこと?」



「まあまあまあ。はいヘンリエール、目瞑って」



「んん……?」



 ぴちぴち! ぽちゃん!



「はい、じゃあそのままお猪口でくいーっと!」



「は、はぁい……くいーっと」



 ぴちぴちぴち!!



「……!? ん~!?」



 口の中に広がる甘酸っぱいポン酢の味と、謎のぴちぴちする感触。

こ、これは……!?



「はいヘンリエールよく噛んで飲み込んで~!」



「んん~~~!?」



 ぴちぴちぴち! ぷちっ。ぴちぴち、ぴち……



「ん、んん……!!」



 ぷちぷちぷち。ぴち…………



「……ぷはあっ! はあ、はあ、はあ……」



 …………。



「えっ? わたし今、何食べました?」



「ホワイトフィッシュの踊り食いだね」



「イザヨイ酒のポン酢割り~」



「…………えっ?」



 めちゃめちゃ酔いが醒めた。



 ―― ――



「それじゃあごちそうさん! またお願いしますね~!」



「また飲みましょ~!」



「メロさん、こ、この後ってお時間とか」



「あ、メロこの後ヘンリエールの介抱しなきゃなので帰りま~す」



「……あ、今お腹の中で動いた」



「もう死んでるよ」





 …………。





 ……………………。





 命の息吹を感じた。






 【鮮魚レストラン・掌輪舞/ホワイトフィッシュの踊り食い】



 ・お店:お魚の水槽とかあって良かった。



 ・値段:まあまあ高い。



 ・料理:ぴちぴち、ぷちぷち。



 ヘンリエール的総合評価:79点。

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