第29話 廻るお寿司を奢ってもらった
「えーと……あっいたいた! おーい、イズミさーん!」
「ごきげんようヘンリエールはん」
こんにちは、ヘンリエールです。
今日はとある人と一緒にお寿司屋さんに行くことになりました。
なんとお寿司が回りながら出てくるらしいです。ちょっとよく分からないけど今からとっても楽しみだ。
「というわけで、『こっくり稲荷』店主のイズミさんでーす」
「誰に紹介してはるんです?」
今日わたしと一緒にお寿司屋さんに行ってくれるのは、イザヨイの獣人街でいなり寿司のお店『こっくり稲荷』をやっている妖狐族のイズミさん。
わたしはイズミさんのお店で初めていなり寿司を食べてからすっかり大好きになってしまい、今では常連として仲良くさせてもらっている。
この前寄ったときに、わたしが普通のお魚のお寿司を食べたことが無いと言ったら『ほんなら今度一緒に行きましょか』ということで快くお誘いを受けたというわけだ。
「ヘンリエールはん、ここが今日のお食事処でっせ」
〝廻天寿司・笹乃洲〟
「な、なんだかお高そうなお店……」
「ここはむしろ庶民的どす。本当にお高いところは回らないんですよ」
「回らない方が高級なんですね」
カラカラカラ、と引き戸を開けてお店の中へ。
「らっしゃい……って、イズミ姐さん!」
「二人なんどすけど、空いてるのん?」
「勿論ですとも! ささ、奥の席へどうぞ!」
「さあヘンリエールはん、入りまひょか」
「は、はい……」
楕円形のカウンターの前にあるレーンに、お寿司が2つ乗ったお皿が勝手にグルグルと移動している。
「どういう魔法……いや、このテーブル全体が魔道具?」
お客さんはレーンの上のお寿司を皿ごと取って食べ、卓の内側では数人の店員がお寿司を作って空いているレーンの上に補充している。
「陶器の皿と、竹皿と、木皿がありますやろ? 皿の種類によって値段が決まってはるんです」
「そうなんですね……」
お会計の時に食べ終わったお皿の種類と枚数を調べて料金を払うらしい。
初めて見るタイプのお店だ。なんだか新鮮で面白い。
「木皿が100エル、竹皿が200エル、陶器が……500エル!?」
「陶器の皿に乗っとるんは高級なネタですえ、お値段少しいきますけど美味いですよ」
回ってるお寿司以外にも、店員さんに直接注文して作ってもらうこともできるとのことで、イズミさんは早速いくつか頼んでいた。
「さあヘンリエールはん、どんどん取ってどんどん食べなはれ。今日はウチの奢りやさかい」
「へっ? い、いやそれはさすがに悪いですよ……!」
「そうです姐さん! ここはオレらが出しますんで!」
「なんで店側が奢ろうとしてはるんや」
何故か知らないけど、イズミさんは店員さんから『姐さん』と呼ばれてかなり慕われているようだった。
イズミさんもいなり寿司のお店をやってるし、お寿司屋さん同士ってことでなにか交流があるんだろうか。
「へいお待ち! アジふたつです!」
「おおきに。ヘンリエールはん、これウチの好きなアジのお寿司。2皿頼んだからヘンリエールはんも食べなはれ」
「あ、ありがとうございます」
アジのお寿司かあ。
この前食べたアジフライ定食、めちゃめちゃ美味しかったなあ。
アジって生でも美味しいのかしら?
「そ、それじゃあ……森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……ぱく」
…………。
「ほ、ほあ……お、美味しすぎる」
「美味いやろ? 寿司のネタだと、やっぱマグロとかシャケが人気なんやけどな、ウチはこのアジが1番好きや……いや、2番やな」
「そうなんですね……それじゃあ、1番好きなお寿司は?」
「そりゃあ勿論、いなり寿司や」
「あ、わたしも」
「そんなこと言うとったら、いなりが流れてきはったわ」
「食べましょう!」
この後も色々なネタが流れてきて、わたしは夢中になってお寿司を食べた。
―― ――
「ほ、本当に奢ってもらっちゃってよかったんですか?」
「かまへんかまへん。ヘンリエールはんにはいつもウチのいなりを美味そうに食ってもらってるさかい。それに、随分と割引きされてもうたし」
「……あの店員さん達とイズミさんって、どういう関係なんですか?」
「ふふ、その話はまた今度やなあ」
…………。
……………………。
お寿司、毎日でも食べたい。
【廻天寿司・笹乃洲/お寿司色々】
・お店:お寿司が回ってて面白い。
・値段:ピンからキリまで。
・料理:美味しい。推しはとびっことナスとお新香巻き。
ヘンリエール的総合評価:93点。
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