第28話 居酒屋でたこ焼きルーレットやるやつはアホ
「「「いえ~い! 乾杯~!!」」」
「か、かんぱーい」
こんばんは、ヘンリエールです。
今日はわたしが働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の若手ギルド会員のグループ飲み会に参加しています。
エルフ族だけだとこういうフランクな食事会はあまりやらないので、ちょっとまだ馴染めてない気がするけど、飲み会の雰囲気は嫌いじゃないです。
〝大衆酒場・白夜舞〟
「イザヨイ酒……辛口か甘口、淡麗、濃醇、純米、吟醸……色々種類があるのね」
わたしがエルフ族の国『タプナード』から人間族の国『イザヨイ』に来て好きになったもののひとつが『イザヨイ酒』というお米で作ったお酒だ。
タプナードにいた頃は薬草を漬け込んだ火酒しかなくて、ちょっとクセが強くて苦手だったのだけれど、こっちのイザヨイ酒は飲みやすくて料理とも合わせやすい。
飲みやすいからスルスル飲んじゃって、思ったよりも酔いが回っちゃうのが注意点。
「ヘンリエール、なに飲んでるの~?」
「ああ、メロか。これはイザヨイ酒の淡麗辛口のやつ」
「え~なんかヘンリエール、おじさんっぽ~い」
「失礼ね」
わたしが隅の席でしっぽりとイザヨイ酒を楽しんでいると、同期の女の子、妖精族のメロが絡んでくる。
「じゃあそういうメロはなに飲んでるのよ」
「メロは~苺ミルクのお酒だよ」
「はいはい、かわいいかわいい」
こういうところが男性ギルド会員にモテる理由なのかしら。
いやでも、苺ミルクでお刺身はちょっとキツイなあ。
「いえ~いみんな~!! たこ焼きルーレットの時間だぜ~!!」
「「「いえ~い!!」」」
「えっなにそれ」
店員さんが山盛りのたこ焼きを持ってくる。
たこ焼きは好きだけど、ルーレットっていうのはなにかしら……なんだか嫌な予感がするわね。
「当たりを食べた人が酒イッキね! はい取って取って~!」
「メロ、お酒弱いし~たこ焼きもおっきすぎて食べられな~い」
「メロちゃんは大丈夫だよ~。お酒イッキとか危ないからね」
「…………」
「はいこれヘンリエールさんの分ね」
「あ、どうも……」
ちくしょう、これが処世術か……
ちなみにメロはこの前パンケーキの店でこのたこ焼き1個より大きい同じサイズのやつ食べてました。
「ねえメロ、たこ焼きルーレットってなにか知ってる?」
「たこ焼きの中に当たりが入ってて~他のと味が違うの」
「どんな味?」
「それはお店によって変わる感じかな~食べてみてのお楽しみ~」
うーん、イマイチよく分からなかった。
とにかく、食べたら当たったのが分かるくらいには普通のたこ焼きと味が違うのだろう。
「はいそれじゃあみんな手に取って~! たこたこたこ焼き・ルーレット~! 3、2、1、ゼロ~!!」
「……ぱく」
…………。
「ッ~!!??」
「おっと~? これは~? ヘンリエールさん大当たり~!!」
「かっ……から~い!!」
わたしが食べたたこ焼きは激辛だった。そうか、当たりってこういうことか。
「他のお店のだとワサビとか~マスタードとか~にが~い薬草のペーストとかが入ってるとこもあるよ~」
「ヘンリエールさん大丈夫? はいこれイッキして」
「あ、ありが……ってこれお酒じゃないの」
「意外とノリ良いんだね、ヘンリエールさん」
わたしはこの後、みんなから謎のコールをされながらイザヨイ酒を飲み干した。
―― ――
「はい、飲み代回収しま~す! 一人4000エルね!」
「二次会行く人~! オレについて来い!」
「ヘンリエール、シメ食べに行かない~? メロ、うまトマラーメン食べたいかも~」
「……あなた、じゃあたこ焼き食べられたじゃない」
…………。
……………………。
こいつらとのグループ飲み会は二度と行きません。
【大衆酒場・白夜舞/たこ焼きルーレット】
・お店:雰囲気は良い。静かに飲むには向いてない。
・値段:リーズナブルな気がする。
・料理:食べ物で遊ぶな。普通に美味いたこ焼きだけ出せ。
ヘンリエール的総合評価:25点。
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