第27話 ドラゴンのステーキは美味いのか?




「うわあ、本物のドラゴンだ……」



 こんにちは、ヘンリエールです。

少し前に近くの村を襲ったドラゴンが討伐されて、わたしの住む街に運ばれたというニュースが報道されました。

そしたら今日になって、ドラゴン肉のステーキを期間限定で出すお店のお知らせが届いたので、行ってみることにしました。



 〝バーニング・ワイバーン〟



「お店の名前はドラゴンじゃなくてワイバーンなのね……」



 お店の前には氷漬けの状態で客寄せのように展示されているドラゴンの頭があります。

ちょっと悪趣味かも。まあ、これから食べようとしてるので人のこと言えないんだけど。



 カランコローン。



「いらっしゃいませお客様ー」



「あの、ドラゴンステーキを食べに来たんですけど……」



「はいはい、ありますよー。巨大なドラゴンが無くなるまではまだまだ余裕がありますんでね」



 まあ、それはそうね。



「おひとり様ですか? こちらへどうぞー」



 席について、期間限定用のメニューを開く。



「お決まりでしたら注文聞いちゃいますよ」



「あの、ドラゴンステーキって、どの部位が美味しいんですか?」



「そうですねえ……食べやすいのは足と肩、それに胸肉ですかね。クセがあるけど好きな人は好きなのが翼根と首の肉、食べ応えがあるのは尻尾と手の肉」



 内臓系は他のお店が取り扱っているらしい。そっちにも今度行ってみようかな。



「それじゃあ、胸肉のステーキを……300gで」



「ライスかパンが付きますよ。あとソースはどうします?」



「じゃあパンで……ソースはジンジャースパイスでお願いします」



「かしこまりましたっと。それではしばし外のドラゴンヘッドでも見ながらお待ちください」



「ふう……それにしても、頭部だけでもかなりおっきいわね」



 ここのお店は名前の通り普段はワイバーン肉の料理が専門らしく、ドラゴンはたまたま討伐されて市場に卸された時だけ競り落として期間限定でステーキを販売しているのだとか。



「保管期限がどれくらいか分からないけど、1匹手に入れば数か月は材料切れにならなそうね」



 今回討伐されたのはレッドドラゴンのオス。

メスが討伐されるとタマゴも手に入る場合があるらしく、ドラゴンのタマゴ料理は結構人気なんだとか。



「お肉を解体してるのは、巨人族の店員さんね……さすがに力がいるものね」



 このお店で働いているのは筋骨隆々な巨人族やサイクロプス族、人狼族なんかのいかにもドラゴンやワイバーン料理作ってますって感じのヒューマン達だった。

筋肉ムキムキでエプロンぴちぴちね。嫌いじゃないわ、そういうの。



「お待たせしましたー。ドラゴン胸肉のステーキ300g、ジンジャースパイスソースですー」



「わあ……」



 見た目はまあ、普通のステーキ……普通よりちょっと赤みが強いかしら。

別にドラゴンの鱗とかが付いてるわけじゃないからインパクトは全然ないわね。



「それじゃ、ごゆっくりー」



「ありがとうございます」



 よし、それじゃあさっそく一切れ……ん、結構切るのに力がいるわね……



「ふう、切れた。これ噛み切れるかな……森羅万象の恵みに感謝を。いただきます……はぐっ」



 …………。



「…………もぐ、もぐ」



 すごい、食べ応えがあるわね。

筋肉質なのか、かなり硬めのお肉なんだけど、ゴムみたいに変な弾力があるわけではないのでそれなりに食べられる。

味は意外にもあっさりしていて、ゴブリン肉みたいな臭みもほとんどない。

臭み消しも兼ねてジンジャースパイスソースにしたけど、これなら他のソースでも美味しいかも。



「あ、噛めば噛むほどジューシーな旨味が出てきてる気がする」



 正直ネタというか、興味本位で食べに来てみたけど意外と美味しかったわね。



 ―― ――



「ごちそうさまでした。あの、お会計を」



「承りましたー。ドラゴンの胸肉が300gで……お会計3600エルになりまーす」



「あっ……はい」



「5000エルのお預かりで、お釣りが1400エルになりまーす。ありがとうございましたー」



「ごちそうさまでした……」





 …………。





 ……………………。





 おいドラゴンの肉くっそ高いわ。





 【バーニング・ワイバーン/レッドドラゴンの胸肉ステーキ・ジンジャースパイスソース】



 ・お店:筋肉ムキムキマッチョマンな店員。



 ・値段:くっそ高い。時価って書くのやめろ。



 ・料理:かなり硬いけどまあ食える。あごが疲れる。



 ヘンリエール的総合評価:62点。

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