第26話 サイクロプス族のうどん屋で朝からガッツリ
「ふわあ……ねむ」
おはようございます、ヘンリエールです。
今日はわたしの働いている商業ギルド『カゼマチ食品』の月に一度の大納品日。
ギルドで取り扱っているエルフ族の携帯食料『エルフード』が、エルフ族の国『タプナード』からわたしが所属している人間族の国『イザヨイ』の店舗まで大量に納品されてきました。
この大納品日だけは本当に大変なので、納品される深夜から早朝にかけてギルドのメンバー総出で納品作業を行ないます。
先程無事に作業が終了して、あとは倉庫の清掃や納品書類を確認して本日のお仕事は終了。
「……うん、今月も問題なく納品が終わりました。みなさんご苦労様です」
「「「お疲れ様でーす!」」」
ギルド長の挨拶で締めくくって、本日はもう解散になりました。
「まだ朝かあ……どこかお店開いてるかなあ」
「おうヘンリー! 飯食いにいかないかい」
「パーシー先輩、朝からやってるお店ってどこか知ってます?」
「〝くっころ〟はどうだい? あそこならほぼ1日中やってるさ」
「うーん、朝からオーク肉かあ……」
オークカツサンドのお店『くっころカツサンド』は前にパーシアス先輩と行ったオーク肉料理のお店だ。
わたしは魔物肉がちょっとまだ苦手なので、普通の料理が良いんだけど……
「お二人とも、本日はありがとうございました。営業部からの応援、とても助かりました」
「ベーコンハットさん、お疲れ様です」
「ギルド長、お疲れ様」
パーシアス先輩と話していたところに眼鏡をかけた一人の男性がやって来る。
この人は人間族のベーコンハットさん。
わたしたち『カゼマチ食品』イザヨイ支部のギルド長をしている。
ちなみにギルド長が長命のエルフ族じゃないのは、本部の『各支部のギルド長はその国の種族が務める』というギルド内ルールがあるから。
「ギルド長、この辺で朝からやってる店を知らないかい?」
「そうですねえ……それなら、僕がこれから行くお店に一緒に行きますか?」
「なんのお店ですか?」
「うどん屋さんですよ」
……。
…………。
「さあ着きました、ここですよ」
〝川田うどん〟
「なんというか、無骨というか……」
「漢のメシ屋って感じだねえ」
「ギルドで出前の丼ぶりを食べているあなた達なら問題ありませんよ」
「う……」
わたしたちが残業終わりに親子丼を出前していたのはギルド長にはバレていたようだ。
は、はずかしい……
「らっしゃいませー!」
「3人で」
「はあい! お好きな席どうぞー!」
席について、温かいおしぼりと冷たい麦茶で一息。
ここのお冷は麦茶なのね、ヘンリエール的高評価ポイント。
「どうぞ好きなものを頼んでください、今日は僕の奢りです」
「ありがとうございます!」
「さっすがギルド長、懐があったかいねえ」
「それを言うなら懐が深いです」
「それにしても……サイクロプス族のお店ですか。初めて来ました」
「ここのうどんが美味しいんですよ」
店員さんは、厨房の人も含めて全員ガタイが良い一つ目のサイクロプス族だ。
サイクロプス族は女性と男性で結構体格差があって、女性は一つ目のこと以外はわたしたちエルフ族や人間族とほとんど変わらない。
男性は巨人族よりは小さいけれど、人間族やエルフ族よりは大きい。目が良くて、力持ちの温厚な種族だ。
「うどんと丼もののセットが安いですね」
「ここは彼らサイクロプス族やドワーフ族、人狼族なんかの朝からガッツリ食べてガッツリ力仕事をする人たちメインのお店だからね」
うーん、わたしも今日は朝、というか深夜から肉体労働をしたのでお腹ペコペコだ。
「それじゃあわたしは、山菜うどんと天丼セットで」
「アタシは肉うどん並盛で」
「僕は山菜そばにしようかな。すいませーん!」
「えっあれっ!? 二人ともガッツリじゃない!」
「僕はいつもこんなものなので」
「ヘンリエールちゃんは食べ盛りだね~」
「あっパーシー先輩! 小食女子アピールずるい!」
この後、開き直ったわたしは食後にいなり寿司とおはぎも食べた。
ギルド長は笑って『たくさん食べるヘンリエールさんが素敵ですよ』と言ってくれた。
あ、山菜うどんも天丼もしっかりした味付けでガッツリ美味しかった。
―― ――
「お会計1950エルになりまーす!」
「カードで」
「かしこまりましたー!」
「ごちそうさまでした」
「「ごちそうさまでしたー」」
「ありがとうございましたー!!」
「ヘンリーが950エル分だね」
「うるさいです」
…………。
……………………。
たまには朝からガッツリいくのも良いわ。
【川田うどん/山菜うどん・天丼セット、いなり寿司、おはぎ】
・お店:ただ飯を食う為だけの空間。オシャレとかいらん。
・値段:安い。しかも奢ってもらった。
・料理:濃い目の味付けでガッツリ美味い。
ヘンリエール的総合評価:85点。
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