第3章「死騎士狩り」これが本格異世界ファンタジーだっ……よね?
第16話 異界移動 道って勝手に流れる物じゃないと思う
不意に襲いかかる浮遊感。
俺は一瞬慌てるが、何かへと進んでいく流れを感じとったことで理解できた。
これは『辺獄』へと何かが向かう流れなんだと。
その流れに身を任せつつ、念の為に周囲を警戒する。
辺獄は人が住む領域とは言え、仮にも地獄の一部だ。
それこそ何が起きても不思議ではない。
(そんなの杞憂よ。)
どこからかルシアの声が聞こえた。
この声は辺獄にいる本体か、俺たちの世界にいる方か、どちらのルシアのものだろう?
(どっちでもあるわよ、向こうもこっちも同一自我なんだから厳密に分けるのは不可能。)
どこか楽しそうな声。
(いったい、ここは何なんだ?)
俺も
(ここは、『異世界への道』あらゆる事象も物理法則も因果律だって飛び越えて他の世界へと行ける道よ。)
へぇー、これが他の世界へと続くのかー。
俺は少し感動した。
多くの物語で語られる異世界へと行く方法を生身(?)で体験できているのでから。
(しかし、『異世界への道』ってなんか安直すぎないか?)
感動した自分だが思わず照れ隠しな質問が出る。
(正式な名前は有るけど、わたしやあなたには発音できないわよ? 転生組には『産道』なんて言ってるやつもいるけど。)
(……異世界への道でいいです……。)
あまりにもストレートな言い方に俺はゲンナリする。
そんなネタで恥ずかしがる程の年齢ではないが、品が無いと言うか。
第一、俺は転生する訳ではないので、産まれゆく道ではない。
その思考が漏れ聞こえていたのか、ルシアのクスクスと笑う声を感じた。
(そうね、今のわたしたちは生まれ変わる訳じやないから、産道は的外れね。)
ルシアの声に俺を大きく頷く。
(とりあえず、死なない程度に頑張ってきなさい。)
(ん?)
不意にルシアが優しい言葉を投げかける。
それに対し俺は思わず疑問がもれる。
(わたしの身体を貸してんだから、死なれても困るのよ。)
ああ、そりゃそうだ。
万が一、俺が辺獄で死んでしまったら、身体を貸したルシアもどうなるか分からないのだ。
なにせ他者の身体に入る異世界転入はイレギュラーらしく、転生者の身体に他者の魂が宿るなんて前代未聞の事態だろう。
(そろそろ時間ね。)
ルシアの声が響く。 心なしか少し寂しそうな音。
(一応あなたの望んた装備は用意したから、使いこなして。)
それを最後にルシアの気配は消える。
俺も意を決し、道の流れに身を委ねた。
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