第17話特級の務め

ナラクはこの頃ここに良く来るのに感慨深げ。

ギルドブレイズの本拠地である中古の砦。その原型を微かに留めた門の前にナラクはいた。そこにはもちろん門番がいた。ナラクは「この前の門番はどうした?どこか痛めたかな?」柄にもなく心配してみる。

その門番は「本当に弱く見えるな。これはあいつなら生意気な口を叩かれたと思って殺しに行くな」納得。

ナラクは「成程、多少は俺の対応を変えてきたか、つまらないな」軽く挑発。

「すいません。あなたの実力はもうブレイズに所属している全員が知っています。ですから無駄な挑発は止めて下さい。俺はこれでも上級傭神です」

上級傭神と聞いてナラクは期待を捨てる。すぐ用件に移る。

「クグはいるよな?」「確かにいますがひきこもってますよ」「いるなら問題無い、用件通りの働きをしてもらうから」「出来るんですか?

あの人が特級傭神の理由知ってますよね?」「だから連れて行くんだよ必要だから」

上級傭神は深々と頭を下げる。

「あの人をよろしくお願いします!」

ナラクは門を開けてもらい中へ。その足で迷わずクグの部屋の前まで行くとブレイズのギルドマスターのデンガと秘書のナマナが待ち構えていた。ナラクはその険悪さに驚かないどころか軽薄に声を掛ける。

「どうした?随分機嫌が悪そうだけど何かあった?」

険悪さを晴らすようにナマナはナラクに食ってかかる。

「どうした?何言ってるんですか!この緊急時にひきこもってる兄さんに怒ってるんです!それもあの騎士教会支部長からの依頼を蹴ろうとしてるんですよ?そんなの許される訳がありません!」ナラクは冷静に「だから呼んでも来なさそうだから迎えに来たんですよ」ナマナの怒りを鎮めようとする。ナマナは「ですが」その先が言えなかった。ナラクの面倒な顔を見た。これは内心腹が煮えくり返っている時の表情。

触れてはいけない、だからナマナは優しく「よろしくお願いします」後を任せた。

軽く頷いたナラクはクグの部屋のドアノブに触れると絶域を展開しているのを理解。この状況はデンガでも対応出来ない。だがナラクは違う。ドアノブを握ったままドアの鍵を開ける。そしてドアノブを回してドアを開けると暴虐的領域がナラクを襲う。だがナラクには全く通じない。ナラクは「入るぞ」部屋の中へ。そこには酒を呷っているクグがいた。ナラクは馬鹿を見る目で「相変わらず変な所がビビリだよな、あんたは」取り敢えず馬鹿にする。クグは絶域の威力を上げるがナラクは霧散する。首を傾げるナラクは

「どうやら実力は上がってるみたいで安心したよ。仕事の時間だぜクグ」じっとクグを睨む。

クグはたまらず「お前だけで充分だろ?俺は必要無い!だからお前だけで行けばいい」びびった声で行かない言い訳。ナラクに引く気は無いどころか魔力展開。

クグの絶域を強制停止!クグは何をされたかすぐに理解し口を開く。

「何なんだお前は?こんな凄え支配力があるのに何で俺を必要とするんだ?ちゃんとした答えがあるんだろうな?」

ナラクは支配を解かずに「あのなぁ、俺が今まで何の理由も無く誰かの助けを求めた例があるか?」まいったまいったという顔。

クグ、それにクグの部屋の入り口で聞いていたデンガとナマナも考える。クグの結論。

「どう考えても一っつもないな。というか俺が頼りにした回数は結構あるのに俺が頼りにされてるのは今この時だけだな」デンガも続く。「そうだ確かにそうだ。頼りにされたのは初めてだな」ナマナも続く。「いつも相談に乗ってもらってますが相談された覚えはありません」

ナラクは一通り聞いてクグに告げる。

「少しは理解出来たようで何よりだな。さて手伝ってもらうぞクグ」「待てよ!俺は何と戦わさせられるんだ?」「お前は戦わない。お前の仕事は中心地から半径四百メートルを絶域を張ってもらう。それだけだ、出来るだろ今俺の指環も使いこなせてるみたいだしな」「本当にそれだけか?」「疑い深いと疲れねえか?」「俺のいつもの思考パターン知ってる奴に言われると結構腹立つな」「元気を取り戻したようで何より、さあ行くぞ」「待て!」クグは念には念を入れる。

「俺は本当に戦わなくて良いんだな?」

ナラクは呆れるしかない。

「お前さあ、俺の首を討ちに来た時と今、あんたの中でどう違うんだ?是非聞かせてくれ」

「そんなもん簡単だ。どっちも俺の命に興味が無いのは同じだがお前の場合は俺を弄ぶぐらいだが、今の奴は俺を殺しに来るんだろ何ていう名前だったか?」「呪怪」「それは俺を狙って来るんだろ?」「まあそうだな」「普通死ぬかもしれない相手にいちいち戦いに行かねえだろ」

「気が済んだか?まだごねるならこうしよう」

ナラクは部屋の支配力を深める!

クグどころかデンガ、ナマナの三人だけでなく他の者にも影響が出始めた!それを引き起こしている元凶の口が歪む。

「もし来ないのならギルドブレイズは壊滅するかもな」「汚ぇぞ」「口だけは良く回るよな、それを仕事でも出来たら良いのに何で出来ないんだ?そもそも神の位に向いてないのかもな。魔導師なら研究職っていうものがあるからな」

「正気か?俺にそんな神経を使う職に向いてる訳ないだろ」「なら神の位でやってくしかないな。もう駄々をこねるの止めてさっさと行くぞ」「なら支配を止めろ」「なら行くか?」

クグは全身を震わせ「ダーーーー行きゃあ良いんだろ行きゃあ!」「それで良い」

ナラクは支配を解きクグの腕を摑み転移。

ナマナは「ナラクは相変わらず兄さんの扱いが上手いですよね」感心。デンガも「ここまであいつを転がすのはもう名人芸だな」乾いた笑い。それにナマナは「それでは仕事に戻りましょう。恐らく忙しくなるので今ある仕事を終わらせておきましょう」デンガに忠言。そのデンガは「ああそうだな、頑張るか」奮起。二人の予想通りなら確かになる。間違いなくようやく訪れるその時に感慨深げだった

ここはルーク騎士団城から五百メートル地点にナラクとクグは転移した。

ナラクは周りを見渡し「ちゃんとしたポイントに着いたみたいだな」ご満悦。クグは十人程戦神がいるのにすぐ気付く。

「何で戦神がいるんだ?」「もちろん状況悪化を防ぐ為だよ」「なら俺は」「いるよ。お前がいないと戦神程度では対応出来ない。そこであんたの出番だよ」「待て!状況がいまいち飲み込めないんだが?」「あんたの役目は呪怪のみを弱らせて戦神でも対応可能にする為。それだけの為にあんたをここに連れてきた」「呪怪ってそんなに強いのか?」「聖騎士の力を取り込んでるからな」「それって上級荒神ぐらいの力が必要…、ああだから俺の力が必要なのか。やっと飲み込めた」「ホーグ兄さんからどんな連絡受けたんだよ?」「君の力が必要だから迎えを出すからそれについて行ってくれ、だったか」

ナラクは後でホーグに一つ思い知らさせないといけないと自分に固く誓い「あんたの絶域なら上級荒神の力を下級戦神並に落とせる。その間に俺が大本を断つ、今回はそんな感じだ」軽口。クグはもう一つだけ質問。

「半径四百メートルはいい。但し時間はどれぐらいだ?」「三十分ぐらいだな。まあ一、二分の誤差はあるかもな」「お前ならもっと早く終わらせられるだろ?」「細かい仕事があるんだよ。さて百メートルぐらい移動するぞ」

ナラクが先導しそれにクグと十人程の戦神がついてくる。ナラクが止まると皆も止まる。

「クグ、やってくれ」「ここまで来たんだやるよ」

クグはルーク騎士団城を目視してそこを中心に半径四百メートルの絶域を展開に成功。

「良し!ナラクさっさと行って終わらせてこい」「もちろん」ナラクは駆けて行った。

そこに今まで黙っていた戦神の男共の一人がクグに質問する。

「 あのう、ナラクさんとはどういう関係何でしょうか?」

クグは一言「客だよ」本当に一言。

納得行かない戦神は「もう少し詳しく」腰が低い。「この件が終わったらいくらでもきくからあの呪怪っての何とかしてくれ!」恐怖混じりの命令口調だが戦神達は「応!」と呪怪に攻撃すると意外と倒せると活気付く。クグに取ってはごく普通だったが他の連中にはここまで喜ぶ程の力なのだと初めて知るのだった。




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