第8話 やはりサッカーは楽しい



ㅤ着替えてからグラウンドに向かうと、佐久間先輩と監督らしき人物が俺たちのことを待っていた。


「サッカー部に入部したいというのはこの子達か?」


「そうです!4人もですよ!」


「初めまして!新堂明那です!」


ㅤ明那が勢いよく自己紹介をすると、それに続いて俺たちもあいさつをする。


「初めてまして、このサッカー部の監督を務めている、眞島直樹マシマナオキだ」


ㅤ眞島直樹…どこかで聞いたことがあるような…

ㅤまぁ気のせいか。


「じゃあ君たちは向こうで軽くアップして体を温めてくれ」


「「「はい!」」」


ㅤ早瀬と明那と俺で適当にパス回しを始める。

ㅤ明那はMFなだけあり、パスがとても上手く感じる。

ㅤそれに対して俺と早瀬はパスのうまさは平均的と言った感じだろうか。


「明那くんはやっぱパス上手いね」


「まぁ中盤でパス下手だとやってられないからな」


「にしても上手いと思うけどな」


「正確なキックがなきゃ得点は生まれないからな!」


ㅤこのパスに合わせ俺が得点を得るシーンを想像するとワクワクが止まらない。

ㅤはやく実践がしたい、はやく明那からのパスを受けてみたい。

ㅤそんなことを考えていたせいか、俺から早瀬に送られたパスは力が入りすぎてしまい、早瀬の後ろの方にボールが飛んでいく。


「あ、ごめん!」


「大丈夫大丈夫!」


ㅤそんなことを言いながら早瀬は走り出すと、爆発的な加速力でボールに追いつき、完璧にトラップをしてみせる。


「「はっっや!」」


ㅤ俺と明那が声を出す。

ㅤこれにはさすがの明那も『まじかよ…』と言いたげな顔をしている。


「早瀬お前……足速いんだなぁ……」


「まぁ、少し自信はあるかな」


「少しってもんじゃないだろ!すごい速かったぞ!」


ㅤそれにただ足が速いだけではない。

ㅤまるで足に吸い付くようなトラップで完璧に足元に収めて見せた。

ㅤ思わずお見事!と言いたくなるほどだ。


「いやぁ……司、こいつはいい点取り屋になってくれるかもしれん」


ㅤ鳴潮高校のサッカー部は強い訳ではないので、トップにこういう奴が一人いるだけでだいぶ変わってくる。


「そうだな……脚も早ければ上背もあるから色んな得点パターンを期待できる」


「ははは…期待に応えれるように頑張るよ」


ㅤ少し困ったような顔で早瀬は言った。


「涼はもうちょい自信持てよー?脚の速さも、トラップのうまさも相当のものを持ってると思うけどな」


ㅤ明那が「司もそう思うだろ?」と言いたげな視線を送ってくる。


「俺もそう思うぞ、特に脚の速さは超高校級と言ってもいい」ㅤ


「そ、そんなにかな?……まぁでもありがとう、ふたりがそう言ってくれると、僕ももう少し自分に自信が持てる気がする」


「あぁそうしろそうしろ、謙虚のなのはいいことだが、自信が無さすぎるのはよくない」


ㅤどのスポーツでもそうだが「気持ち」というのはめちゃくちゃ大事だと思っている。

ㅤ確かにそれで天狗になるのはよくないことだが、自分のことを信じることが出来ないでいるとそれは結果に現れる。

ㅤ簡単なゴールを決めれなくなるとか、些細なミスを繰り返すとか。

ㅤだからもし何かに行き詰ったら、まず自分のことを信じてあげることから始めるんだ、そうすると自ずと結果も着いてくると俺は思っている。



◇◇◇



ㅤそれからも3人でアップを続けていると、明那が口を開く。


「司……どうだ、サッカーは……楽しいか?」


ㅤ明那の顔には期待と不安が混ざりあったような表情が浮かんでいる。

ㅤまだ俺がサッカーに復帰したばかりだし、ちゃんと楽しめているか不安なのだろう。


「ははっ!明那……心配入らねぇよ……俺今人生で1番楽しんでる!だからそんな顔してないでお前は笑ってりゃいいんだよ」


「なんか俺がいつも何も考えず笑ってるだけのヤツって言われてる気がしてないないな……」


「あれ?違ったっけ?」


「おい!」


ㅤ明那と俺が目を見合わせて笑い合えば自然と早瀬も笑い出す。


ㅤあぁ……やはりサッカーは楽しい。










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やり直せるのならサッカーを れいん @raindayo

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