6
じっと感じる。
熱はなかった。季節柄、やや寒いくらいだ。向きは北。突風と言うほど強くはないが、肌を撫でる感触はある。
唐突に――。
頭の中に映像が浮かんだ。
緑色の長い縄のようなものがうねっている。その後ろは青だ。
竜だ――と小太郎はすぐに察知した。
見たことはないが、緑色のものが竜だと、なぜか小太郎にはわかった。背後の青色は、どうやら空のようだ。
「ここからが本番だ」
背後からイカリの声がした。
「今から俺が言う言葉をそのまま繰り返せ」
小太郎はその言葉を繰り返した。今まで口にしたことなどない言葉なのに、
「今だ小太郎。目を開けて腕を思いっきり前に振れ」
その通りにした。
空気が
胸の前の空気が膨れ上がるような気配がしたその直後、強烈な突風が前方に向かって吹き抜けた。
邑人たちがその場にしゃがみ込む。地面に伏せて頭を手で覆い、悲鳴をあげる。
ごう、と風が
熊が一頭飛ばされていった。岩もいくつか飛んでいった。
しばらくして、ようやく風はおさまった。
地面に伏していた邑人たちが、おそるおそるといった様子で頭をあげる。
小太郎は背後を振り返った。思ってもいなかった結果に、言葉も出ない。
やるじゃねえかとイカリが言った。
「さっき唱えた言葉は神から力を授かるための言葉――
「神言」
「そうだ。はじめてにしては大したもんだ。頭の中に竜の姿が浮かんだだろ。それは俺と心が
そうかもしれないと小太郎は思った。この力があれば、まず敵を寄せ付けずに済む。万が一寄ってきたとしても、斬り殺してしまえば良い。日緋色金の剣はこっちにもあるのだ。対抗できる。一振りしかないが、一振りで
今までに感じたことのない
小太郎は横に控えていた従者に手を差し伸べた。
言葉は発さなかったが、従者はその意図を読み取ったらしい。持っていた暖暖丸の袖を小太郎の腕に通した。
手際よくもう片方の腕にも
小太郎は暖暖丸を着た。
「弥次郎」
次に弥次郎に向かって手を伸ばした。やはり言葉に出したわけではないが、弥二郎はその意を組んだらしく、預けていた日緋色金の剣を差し出した。
小太郎はそれを受け取った。
剣を抜く。
その切っ先を、小太郎は天に向かって突きあげた。
中天に差し掛かった太陽の光を照り返して、刃が赤く輝いた。
雛若の怒りを、邑人たちの恨みを、すべてを背負って立つ覚悟を、小太郎は固めた。
誰もなにも言わなかったが、邑人たちは
小太郎は――。
そうなるのが当然であったかのように、小太郎には感じられた。
「
小太郎は言った。鼓舞するつもりはなかった。誰かに向けて訴えたのでもなかった。言葉が勝手に、喉から漏れたのだ。ほんの小さな呟きだった。
にも関わらず――。
邑人は湧いた。拳を突き上げ、叫び、
戦が、始まる――喜三郎は懸念を
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