3
鉄の中でもさらに
小太郎はその恐ろしさを目にしている。
体が震えた。
「覚悟せよ」
千代包が刀を振りかぶる。
小太郎は目を瞑った。
そのときだ。
「
どこからか声が聞こえてきた。高くも通る声だった。まるで声の柱が空気を貫いて届いてくるかのようだった。
顔をあげると、千代包は剣をおろしてあたりを見渡していた。
「
どこへともなく大声で問いかける。
直後、風が吹いた。
枯れ葉が舞い、着物の裾がはためく。
再び声が響いた。
「
とてつもない早口だが、発音の一つ一つを小太郎は聞き取ることができた。
風がさらに強くなった。小石が浮き、
一方、千代包は腰を落とした体勢で両腕を胸の前で交差し、風圧に耐えているようだ。
「
ごう、と風が
木が二本倒れ、社殿の屋根の
それでも小太郎だけは飛ばされなかった。
千代包はいっそう腰を低くして耐えている。衣が狂ったようにはためき、長い髪がどろどろとうねる。剣は地面に落ちている。
渦は
「ぬあッ」
ついに千代包の体が浮いた。
浮くと同時に――。
千代包の体が縮んだ。小太郎が胸に抱えられるほどの小さな黒い
塊は、
鴉と化した千代包は激しく回転しながら、飛ぶというよりも飛ばされていった。
風がおさまった。
小太郎はしばらく呆然と
何が起きたのかわからなかった。あの千代包という男はなんだったのか。この神社に何をしに来たのか。
何より、あの声の主は誰だったのか。
「よう」
声の主が姿を現した。
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