第18話 母達の想いと応援する恋
☘美野里(信一と市江の母)side & 英美子(愛と優の母)side
●少し時間は遡り信一と愛が別れた事を家族に伝えた日の夜
「今晩は、美野里」
「あぁ、今晩は英美子~」
奇しくも二人は学生時代の同級生でもあり、旧姓 斎藤 美野里(みのり)と同じく旧姓 五木 英美子(えみこ)から親友であった
「ちょっと子供の事で話があるんだけど時間良い?」
「あ、そうねぇ~私も丁度、英美子と話したかったのよねぇ」
電話では話しづらいという事で、瀬川家で話する事にした
「美野里はビールだよね?」
「ああ、お構いなくぅ~と言いたいけど頂こうかしら?」
英美子は冷蔵庫からビールと酎ハイを持って席に座ると目の前の美野里にビールを手渡す
「グラスは要る?」
「ああぁ~要らないかなぁ~」
【プシュ~】二人同時に缶の蓋を開けると炭酸ガスの噴き出る音がリビングに響く、二人は言葉を交わすことなく缶ビールをコツンと合わせひとくち口に運ぶ
「ふぅ~美味しいねぇ」
「ふふ、美野里もオバサンぽくなったわね」
「あら、こう見えても買い物先で市江のお姉さんと間違われるんだからねぇ」
「はいはい、まぁ私らが歳を取るのも無理ないわね・・・子供が大きくなって恋愛の事で悩んでる年頃だもの・・・」
「あはぁ~英美子こそ、年寄臭い事言うようになったじゃない~」
「そうね、そうかもしれない・・・娘たちが恋愛で悩んでる姿を見ても、何も口を挟めない頼り無い大人になったのかもね」
「ふふ、子供は勝手に大人になって親の事なんか忘れて自分の好きになった相手の元に巣立って行くんだもんねぇ~」
二人は言葉を交わす度に、ひとくち、ひとくち、アルコールを口に運ぶ
「信ちゃんも、美野里や市江ちゃんに、愛と別れた事伝えたのね・・・」
「うん、愛ちゃんも英美子と優ちゃんに伝えたんだぁ~」
「うちの旦那は出張中で来週一杯帰って来ないし、家で知らないのは旦那だけかな?後で電話で事情だけ伝えるわ」
「ああ~、家の旦那も今日は遅くなるみたいで未だ知らせてないなぁ~夜に帰って来たら話しておくねぇ」
「その為にもお互いの子供からの話しの擦り合わせしときましょう」「うん、そうだねぇ」
二人の母親はお互い自分の子供達の言い分を情報として交換しあった
「はぁ~ますます私ら母親失格かもぉ~市江の方は何となく信一の事、違和感を感じてた様だし」
「そうね、うちも優が前から二人の事気にかけてたみたい・・・」
「それで?美野里は信ちゃんと愛の事どう思う?」
「う~ん、正直言うとあの二人は相性抜群だと思うのよねぇ、それこそ熟年の夫婦の貫禄さえ感じる」
「そうなのよ、受験勉強の時二人で勉強してるのを傍から見てたけど、全くの無言でお互いの事、全て成立させてるのよ」
「例えば、信ちゃんが飲み干したお茶のコップを手に取って持ち上げると愛がそれを受け取って、新しいコップを渡したり、愛が消しゴムを取ろうと手を伸ばしたらノールックで掌に消しゴム置いて渡してる信ちゃんと愛の様子を見て、コイツら何者?って思ったもん」
「そうね・・会話が無いって言ったけど会話しなくても相手の事が分かる境地に二人は既に至ってるのよね・・」
「あの二人・・この先で別れた事を後悔するんじゃないかな?」
「そうねぇ愛ちゃん以上に信ちゃんの事、理解できる様な子なんて・・・」
「私が信ちゃんを支えます!!」
「!?ちょっと優!」「あらぁ~お邪魔してます優ちゃん」
「小母さん!・・いえ・・美野里さん!私本気です、本気で信ちゃんの事・・大好きで昔から変わらずに信ちゃんの事だけ想ってます!」
「・・・優・・・あんたって子は・・本当に・・・」
「美野里さん・・・姉の事は私が何度でも謝ります・・・でも、どうか私にチャンスを下さい!!」
「優ちゃん・・・ありがと・・信一も幸せ者ね・・未だ近くにこんなにも想ってくれる子が居るなんて」
「ねぇ美野里?ここからは母親としてのお願いなんだけど・・・・」
・・・・・・・・・・・・
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「それは構わないわ、むしろ優ちゃんにあのグータラ息子を鍛え直してもらおかなぁ」
「いいこと?優、料理は相手の為に作るの、絶対に自分の味を押し付けたらダメよ、信ちゃんの好きな味を自分で見つけるの」
「普通に信ちゃんに聞いちゃ駄目なの?」
「信ちゃんに、私が作った料理の味付けどうだった?って聞いたら何て言う?」
「・・・・美味しかったって言うと思う・・・」
「そうねぇ流石、優ちゃんは、信一の事良くわかってるじゃない~、それなら安易に答えを求めるのじゃなくて信一の表情や食べる頻度を見て味の好みを知っていく方が、本当の信一の好みを知れると思うし」
「私も織田家の味付け優ちゃんに伝授しちゃうぅ~」
「本当ですかぁ!?やった、美野里さん宜しくお願いします!」
「あら、優、瀬川家の味付けもしっかり披露しなきゃ駄目よ?それに、宜しくお願いしますの前に(不束者ですが)が抜けてるわよ?」
「ちょっお母さん!」
「あらぁ~可愛いわねぇ~英美子には悪いけど本当に娘になっちゃうぅ~?」
「もう、美野里さんまで・・・」
一組の恋が終わり、新しい恋を応援する人達の思惑が、すれ違いを経て再び交錯するかもしれない二人にどんな影響を及ぼすのか・・この時点ではまだ分からない
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