第3話 信一のエターナル ブライダル


♠信一side


俺はこの2年前から始めた【エターナル キングダム】というMMOゲームにハマっていた


ゲーム自体は大筋のストーリーは存在しているが、醍醐味はその自由度と仮想空間内での疑似生活のリアルさだろう


人に依っては、お城に勤めてモンスターや敵国と戦う騎士になり生活したり、ハンターが採取した食材や薬草を店頭に並べて商人をしたり、ギルトというハンター協会に所属して特殊な討伐ミッションを複数人で挑んだりと


そのプレイスタイルは様々で、人間やエルフ、ドワーフや魔族、竜族や翼人属、獣族など個人の好みに合わせてキャラメイクをしていて中にはゲーム内のアイドルとして活躍してる人も居るくらいだ


国内と一部海外で展開されていて、そのプレイ人口は300万とも500万とも言われてる


俺の使ってるキャラクターはオーソドックスなヒューマンタイプで人間の男、出来るだけ感情引入出来る様にリアルの自分に似せたつもりだ


モンスターとのバトルが楽しくて、ゲームをはじめて直ぐにギルドに所属してそこでハンターとして職業登録をしている


そんな時、リリース3ヵ月記念として【エターナル ブライダル】というイベントが開催されることになった


簡単に言えばゲーム内でペアを作り結婚というイベントをすることで、特典として城下町の住宅街に戸建ての家がプレイヤーにプレゼントされるという破格の良イベントだった


家を持ては宿屋は不要になるし、何よりアイテムを大量に保管できる、捕まえたモンスターの保管数も格段に増えるし、本来なら課金ユーザー向けの報酬と言われてもおかしくない豪華さだった


当然おれはこのイベントの特典目当てて、一緒にペアになってくれる人を公式の掲示板で探した


掲示板には大勢の募集があり、大人数のお見合い形式のイベントで相手を探す事となった


『初めまして、僕ノブ―と言います、見ての通り人間でギルド所属のハンターです』


『初めまして、私はラブと言います、種族はエルフです採集ギルドに所属しています』


俺は目の前に居た、金髪の美しいエルフのラブさんに声を掛ける


『ラブさんパーティー申請してもいいですか?』


パーティーを組むと他の人からの申請は俺の承認もないと加われないので、所謂「二人きりでお話ししませんか」と言うお誘いだ


暫く時間があいて


『はい、是非』そう返事をもらった俺はラブさんと二人で話をする事にした


『ああ、私もあの特典が欲しくして!!可愛いモンスターを一杯仲間に出来るのは夢のようです♪』


『(^^)俺はやっぱ宿屋の費用が抑えられるのは有難いな~』


『確かに~♪城下町の宿屋って高いんですよね怒』


『本当だよ怒、便乗値上げも良いところ!!』


『あ、それじゃノブ―さんと一緒になったらモンスターの枠は私が多めに貰っちゃおかな~な――んてw』


『全然いいですよ!(^.^)bラブさんの好きなモンスターで埋め尽くして下さい(笑)!』


『やった―――!』


こうしてお互いの需要と利害が一致した俺とラブはエターナル ブライダルで結婚しゲーム内で夫婦となった


証拠として俺のステータスには【人間男】から【ラブの旦那】と表記が変更になり一部のアイテムがラブと共有化となった


そうして二人で同じ部屋、二人キリのパーティーで過ごす内に俺は少しずつ、ラブの中の人に好意を持つようになった


お互いの事を身バレしない様に注意しあいながらも、プライベートな事まで相談したり、逆に相談に乗ったりとラブと俺は日を追う毎に親密になっていった


身バレしてない以上隠し事をしても仕方ないので俺は正直に彼女が居る事も伝えている、するとラブの方も彼氏がいるとの事だった


『最近、彼女といても会話が続かないし、彼女も俺に興味が無いみたいでさ』


『あ、私もそう~彼氏に話題を振っても振られても全然話が広がらなくて、いつも上の空でさ』


『はぁ~本当に、彼女は俺の事を好きでいるのか最近特に疑問に思うよ』


『私も・・こんなで恋人なのかな?って最近特に思うよ』


『ラブが本当に彼女だったら良かったのに・・』


『私もノブ―が本当の彼氏なら毎日幸せなのに・・・』




所詮ゲーム内での恋愛であってリアルな恋愛では無い、その事は俺もラブも判ってはいるが現実の恋愛にはドキドキする毎日も、胸が熱くなる様な甘い時間も望み薄だった


だから画面を通して俺の事を優先してくれて、いつも一緒に居てくれるラブという【中の人】を想う事が増えてきていた、実際に愛と一緒に居ても頭の中では


(今日はラブと昨日の討伐イベントの話しよう、昨日みた動画の話しをしよう、昨日あった事を相談しよう)とラブに会って話す事しか考えて無かった・・



そして今日も大事な奥様ラブに会いにゲームにインする



『ねぇ~ノブ―今日レッドミンクが出現するイベントがあるんだけど、私まだ仲間にしてなくて』


俺はゲームングコントローラーを操作してグッドのポーズとウインクをしてOKの合図をしてチャットを送る


『うん、勿論一緒に行こう!ラブが喜んでくれるから俺頑張るよ!!』


するとラブから♥のエフェクト付きのウインクが飛んできて飛んできた♥が俺に当ってピンクの光が画面を一瞬彩る


『うん!ノブーは優しくて頼りになる私の旦那様だね♥』



「ああ、俺やっぱりラブの事が大好きだよ・・」

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