第75話 クリスマスイブ・帰り道
イルミネーションが煌めく公園を抜ける。木々に飾られた光の粒が、まるで星空のようだ。ベンチに座って、二人でホットココアを飲む。
湯気で少し曇った陽菜の顔が、幻想的に見えた。
「綺麗だね」
陽菜が、そっと俺の肩に頭を乗せる。その重みに、俺は心臓が締め付けられるような感覚を覚えた。
「ああ、そうだな」
これ以上の言葉は必要なかった。
ただ、この瞬間を、陽菜と二人で分かち合いたかった。
どれくらいそうしていただろうか。寒さも忘れて、ただ陽菜の温もりを感じていた。やがて、陽菜がゆっくりと顔を上げ、俺の目を見つめた。
「ねえ、輝」
「ん?」
「私、輝のこと……」
陽菜の言葉が、途中で途切れる。その瞳は、何かを伝えようと揺れていた。俺は、ごくりと唾を飲み込んだ。
陽菜の言葉が、途中で途切れる。その瞳は、何かを伝えようと揺れていた。俺は、ごくりと唾を飲み込んだ。彼女が何を言おうとしているのか、分かってしまう。期待と、少しの緊張が入り混じった感情が、胸の中で渦巻いていた。
陽菜は、少し潤んだ瞳で俺を見つめたまま、言葉を続けた。
「……輝のこと、本当に大切に思ってる。これからも、ずっと一緒にいたい」
陽菜の言葉が、冬の夜空に吸い込まれていく。その一言一言が、俺の心に深く響いた。俺も同じ気持ちだ。いや、それ以上の想いが、俺の胸には溢れている。
俺は、陽菜の手をそっと握りしめた。
「俺もだよ、陽菜。陽菜のこと、誰よりも大切に思ってる。ずっと、陽菜の隣にいたい」
俺の言葉に、陽菜の顔がぱっと明るくなった。彼女は嬉しそうに微笑み、そして俺の手に、自分の指を絡ませてきた。まるで、この温かさが永遠に続くように、ぎゅっと。
「ありがとう、輝……」
陽菜が、恥ずかしそうに視線を逸らしたあと言葉を続ける。
「やっぱり、クリスマスの夜は、特別な人と過ごすのが一番だね」
そう言って、陽菜は俺の手に、さらに強く力を込めた。
その言葉と、手の温もりが、俺の心に深く刻まれる。
「ああ。最高のクリスマスだよ」
俺は、陽菜の手を握り返し、再びイルミネーションの輝きを見つめた。この瞬間が、永遠に続いてほしい。そう、心から願った。
公園を出て、陽菜の家へと向かう道のりも、二人にとって特別な時間だった。繋いだ手は、離れることなく、二人の距離を縮めていく。陽菜は、時折俺を見上げては、照れたように微笑んだ。
陽菜の家の前まで来ると、玄関の明かりが灯っていた。
「今日は、本当にありがとう、輝」
陽菜が、そっと俺に抱きついてきた。
その抱擁は短かったけれど、俺の心に温かい余韻を残した。
「またね」
陽菜が玄関のドアを開ける。
その瞬間、中から元気いっぱいの声が聞こえてきた。
「お姉ちゃん、おかえりー! あ、輝お兄ちゃんも!」
咲音ちゃんが、パジャマ姿で飛び出してきた。
「ただいま、咲音。もう寝る時間でしょ?」
陽菜が優しく声をかけると、咲音ちゃんはぶんぶんと首を横に振った。
「だって、お姉ちゃん遅いんだもん! それより、お兄ちゃん、お姉ちゃん。なんか、顔赤いよ?」
咲音ちゃんの純粋な言葉に、俺と陽菜は顔を見合わせ、そして同時に吹き出した。
「な、なんでもないよ、咲音。ちょっと寒かっただけだよ」
陽菜が慌てて言い訳をするが、咲音ちゃんは納得がいかない様子で首を傾げている。
「ふーん……。でもね、お兄ちゃん、お姉ちゃん。明日、クリスマスの飾り付け、一緒にやろうね!」
咲音ちゃんが、無邪気な笑顔で俺たちを見上げる。俺と陽菜は、再び顔を見合わせた。
「ああ、もちろん。最高のパーティーにしようね、咲音ちゃん」
俺が言うと、咲音ちゃんは満面の笑みを浮かべた。
「やったー! 輝お兄ちゃん、大好き!」
咲音ちゃんが俺に抱きついてくる。その小さな温かさに、俺は自然と笑顔になった。陽菜は、そんな俺たちの姿を見て、少し照れくさそうに笑っていた。
陽菜の家を後にし、夜道を一人歩く。彼女の温もりが俺の胸に喜びを呼び起こしていた。クリスマスイブは、俺にとって忘れられない特別な夜になった。そして、明日からのクリスマス準備も、きっともっと楽しくなるだろう。
家に帰り着き、自室のベッドに倒れ込む。
天井を見上げながら、陽菜の笑顔を思い出す。来年も、再来年も、その先もずっと、陽菜と特別なクリスマスを過ごしたい。
心の中で、そう強く願った。
――――――――――
この度は数ある作品の中から
「迷子の妹を送り届けた着ぐるみの中の人が俺だと気づいたクラスのマドンナがぐいぐいやって来る」
を読んでいただきありがとうございます!!!!
長らく投稿できていなかったこと心からお詫び申し上げます。
これからは少しづつですが投稿していきたいと思いますので温かい目で見守っていただけると幸いです。
続きが読みたい!など思った方はぜひ、★やコメント、♥などを付けてくれると嬉しいです。
今後こうなって欲しい、かわいいなどコメントを残してくれると嬉しいです。
みっちゃんでした( ´艸`)
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