近所の女の子の『大きくなったらお兄ちゃんと結婚する』が最強すぎて逃げられない件
丸焦ししゃも
プロローグ
プロローグ
「へ、変態だぁああああああ!」
桜が咲いたばかりのある日。
私は知らないお兄ちゃんに声をかけられた!
「いやいや! ここでなにしてるのって聞いただけじゃん!」
「別になにもしてないもん」
「なにもない人は一人で泣かないよ?」
むぅ……。
確かに私は、そのお兄ちゃんの言う通り公園のブランコで一人で泣いていた。
「お兄ちゃんは誰ぇ……?」
「俺? 俺は
「おおやさん?」
「家を持っている人っていうのかな?」
「ぐすっ、よく分かんない」
「わわっ! 泣かないでよ! 良かったらお兄ちゃんに泣いている理由を聞かせてくれる?」
そのお兄ちゃんがとても困った顔をしている。
仕方ないなぁ……。
私は特別にそのお兄ちゃんに泣いている理由を教えてあげることにした。
「友達に髪の毛を馬鹿にされたの」
「髪の毛?」
「私の髪の毛、くるくるだって」
「あはは、そんなことか」
私がそう言うと、そのお兄ちゃんはしゃがみこんで自分の頭のてっぺんを見せてきた。
「見て見て、俺の髪もくーるくる。くるくる仲間だね」
「くーるくる……」
「良かったら君の名前を教えてくれる?」
「
「俺、
「えっ?」
「ここに一人でいるのは危ないよ。おうちまで一緒に帰ろうか」
「や、やっぱり変態だぁあああああ!」
「だからなんでそうなる!」
そのお兄ちゃんはとても優しい顔で私に笑っていた。
小さい頃に近所のお兄さんに恋をするなんてよく聞く話かもしれない。
なんの面白みもないありふれた話かもしれない。
――でも、間違いなくこの日が私の初恋の始まりだった。
◆
十年後
「んぅ……」
久しぶりに昔の夢を見た。
当時の私はめちゃくちゃ言ってたなぁ。
今でもお兄ちゃんの笑顔を思い出すと心がぽかぽかになる。
「くーるくる……」
自分の横髪を指でくるって巻いてみる。
子供の頃に比べたらかなりマシになったが、それでも寝起きとか湿気が多い日は毛先がくるくるになってしまう。
「お兄ちゃん、私が大きくなったら結婚するって言ったの覚えてくれてるかなぁ」
高校に入学してから二週間が経った。私が成人するまで後三年だ。
それまでに家事も料理もマスターしないとねっ!
「忘れてたって言ってももう遅いんだから」
そんなお兄ちゃんとの再会を心待ちにしている私だがちょっぴり不安もある。
お、お兄ちゃん、私が知らないうちに彼女を作ってたらどうしよう……。
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