第17話 繋がり始める“疑問”と“疑惑”

以前出題だされていた『宿題』の解答期限がきた―――かと言う様に出題者であるインコグニートが現れた…


「さあーーーてお約束だぁ、手前ぇら解答こたえは用意できたか」


僕達は“何者”か―――その解答こたえ、僕はまだ出せていない。 今回インコグニートが出題だした意図は僕達がこれから“何”になるのかを訊いてきた事にある。

僕達は“何者”か……こんな『仮想』の空間でしか自分を主張できない僕にとって、この『宿題』ほど難問はないだろう。 『根暗』で『オタク』で『引き篭もり』な奴なんて大概が“他”に依存をしている、その“他”と言うのも『人間』ではなく『(アニメやゲームの)キャラクター』と言ったところだ。


そんな人間に“何者”か―――これほどハードルが高いものは無い…


「そんなん決まった事じゃないか、私は“私”だよ……」


そう言えば“彼女”は出会った当初ときからそうだった、何より“自分”が強く“何”にも染まりはしない―――自分が“正しい”と思った事は例え周りが全部敵に回ったとしてもくじけやしない…

確かに“彼女”は光だ、自らがまばゆいばかりに輝ける光そのもの、それが本来の“彼女”の呼称よびなである【閉塞した世界に躍動する“光”】―――


だと、僕(と僕達)は思っていた、少なくともその時までは……


けれど意外なことが発覚してしまったのだ、それというのもインコグニートが僕達に『宿題』を出題だした時にはヒルデガルドさんはいなかった、と言うよりヒルダさんの気配を察知し、僕達から離脱を図るために『宿題』が出題だされたようなものだったのだ。


―――本来ならヒルダさんとインコグニートは互いを知らない他人と言う事になる…。


「やぁーっぱだったか…“ヤベえヤツ”」

「そう言うあんたこそ『インコグニート誰でもない者』なんてふざけた名前しやがって…大体なんだあ?あんた自身『誰でもない』クセにこの子達に“何者”か―――だなんて」

「フフン~気が利いてんだろ? こいつらみたく若い時分じぶんでなけりゃ夢見がちだったものを―――大人になるってなぁ随分とな世間様の不都合を知らなけりゃならなくなる」

「だからと言って子供のままでいられるはずもない、そこんところは同感だよ―――純真無垢な子供のままでいられたならなんかしなくてもいいものなのにね」


―――そう、どこか互いを知ったかのような発言…

“僕”とは違いそれぞれの“自分”と言うものを持っていた、しかもそれは周りからの影響を受け―――周りからの不都合を押し付けられたりしてつちわれた“経験”と言う名の『成長』…


「ひひひヒヒヒ―――ああ全くもってその通りだよ、しかしそれにしてもよく似てやがる、オレが会った事のある”に」

「“あいつ”―――だって?」

「ああ、そうだよ あんたによく似た雰囲気を醸してるヤツ、オレ達と初対面だった時もその強烈な“自我”ってヤツを押し隠しもせず、当時強烈な“色”をしていたオレ達に染まりもせず、この広い世界を所狭しと駆けた奴がいた、確か“あいつ”は本名の他に妙な名前を名乗ってたもんだ…」

「なによ…その―――『本名以外に名乗ってた名前』って…」

「何だったかなあ~~~長ったらしい名前みたいなもんだったが―――妙に恰好よくてな、当時絶賛『厨二』してたオレ達の胸に刺さったもんよ」


そしてインコグニートヤツは次第に口にしてはならない事を口に出していた、しかもそれはヒルダさんが本来“何者”であるかを知っていたかのような口ぶりでもあったのだ。


それが


         ―――【閉塞した世界に躍動する“光”】―――


「なんで―――あんたがそんな事を…」

「ぁあ?違ったかあ?そう言うそうじゃないのかい【閉塞した世界に躍動する“光”】さんよ」

「それよりも待って、

「『知っているのか』不思議かあ?まあオレも当初は半信半疑だったもんさ、なにしろ人間様が創った『仮想』の空間に突如異世界のエルフが紛れ込んでくればなあ?ただ―――あの時オレ達は感じたのさ…作り物の中とは言え妙に“生々しい”サマを 『仮想』の世界ゲームの世界にいるてのは『NPCノン・プレイヤー・キャラクター』てな存在だ、まだ現在より技術が供なってなかった5年前にゃ“自我”が存在してない存在だ、そんな中で出会った“あいつ”をオレはNPCの1人だと思っていたが…こいつがよく喋る喋る―――まるで自我を持った1個の人間みたいにな!? だからオレは、“あいつ”がNPCノン・プレイヤー・キャラクターPCプレイヤー・キャラクターか…ってな、そこから“あいつ”とは別離わかれの時が来るまでに濃密な時間を過ごしたって訳さ 【閉塞した世界に躍動する“光” あの名前】もその時に知ったもんでな」


ヒルデガルドさんの―――けれどそれをインコグニートが以前会った事のある異世界から来たエルフもそうだった…と?するとならば


「おい、ちょっと待てよ…今何て言った?私の聞き間違いでなきゃとてつもなく不適切な事が聞こえてきたんだが…」

「ぁあ?『不適切』―――?」

「さっきあんた自身言ってたろ!『“あいつ”とは別離わかれの時が来るまでに』って!それに“”って―――」

「ああーーー『シェラザード』の事か? びっくりしたもんよ、今じゃ会った時の記憶ことすら朧気になりつつあったのに…―――久々に乞われて“イン”してみりゃあいつによく似た気配をする奴がいる、しかもおまけにそいつも【閉塞した世界に躍動する“光” 同じ存在】ときたもんだ!」


ヒルダさんとは違う異世界出身のエルフの名…それが『シェラザード』と言うエルフだった、しかもそのエルフもヒルダさんと同じ様に【閉塞した世界に躍動する“光”】―――って事は??


「そうか………だったら参考までに教えてやんよ! その名前はな、この私の娘だ!その娘があんたみたいな存在と『』ぁあ゛~?お前ぇ…死ぬ覚悟はできてんだろうなぁ」

「ふヘヘヘ―――やっぱ感じた通り“ヤベえ”ヤツだ、怒りに任せてキレ散らかしたあいつと同じだ、だあーからああーーー1度目は尻に帆を撒いて逃げたって訳よ、だけどなあ…」


「その危険を周知の上で再び僕達の前に姿を晒した……」

「それって、もしかしなくても既に手を講じてるって事?」


「おお正解だあーーー『乙女』な“ガチムチ髭面中年男”ちゃん、それにオレはあんたと事を構えるつもりはさらさらねえ―――だからを収めさせてくれねえもんか」


普段のヒルダさんはどこか飄々ひょうひょうとしていて周りに流されない―――そう言うエルフだと思っていた、けれど彼女も所詮はエルフの子…いやその前に1人の母親だったと言う事か、しかも向うインコグニートはその事を判ってなのか煽りに使ってきた、そう言った意味では向うインコグニートの方が一枚上手だと言うべきだろう。


いや、問題はそんな処ではない、先程も言ったようにヒルダさんは周りに流されない―――少し口を悪くすれば『我、事に関せず』を地で行くような人だ、そんな人が…初めて感情を顕わにした―――またそれに伴い外見上も激しく変わっていたのだ。


まるで“羽”や“葉”をモチーフにしたかのような、そんな衣装とも言えないようなコスチュームに身を包み、背には翼が生えているかのような??おまけに体全体が僅かながらに発光しているみたいだった。

お伽話や伝承で伝わるような『天使』にも似た存在―――それが本来のヒルダさんの姿?!

それにこの状況を視るのに限り今のヒルダさんは激しく怒っている、自分の娘が不埒ふらちな男にもてあそばれたのかと思うと、つい“カッ”となってしまったのだろうか。 けれどその事はヒルダさんが異世界出身のエルフであると言うよりも―――異世界にある国の1つのお后様であると言うよりも―――1人の子の事を思う母親だと言う事が判ってしまったのだ。

とは言えインコグニートの意図が判らない、こんな風になる事は彼の方でも判っていたはず―――なのに…だから1度目はヒルダさんと接触するまでに引き上げたと言うのに、危険を冒してまで僕達に出題だした『宿題』の解答こたえを聞くために……


「ひとつ―――勘違いしない様に言っといてやるぜ、オレは何も【閉塞した世界に躍動する“光” そこのヤベえヤツ】に喧嘩を吹っかける為にこんな危険を冒してまで来たわけじゃねえ」

「はあ?ならどうしてわたし達の前に…」


「そうよね、それにそんな事を判ってて敢えてやるって意味が判んない」

―――…」


そう、インコグニートそいつ以前出題だした『宿題』の解答こたえを聞くために僕達の前に姿を晒したワケじやなかった。


インコグニートが…僕達の前に姿を晒した―――


「ひひヒヒヒ―――いいねえ~実にイイ、そうしたヒリついた視線浴びんのはこの上ない快感だ ま、そう言う事さ、本来なら何も言わずにさっさと“次”に行けばいいまでの話し、要するにだ以前“おこばあちゃま”から請け負ってた“お仕事”の報告、無事に済んだんだわ それで報酬をたぁんまり頂いて―――…かと思ってたんだがなあ?」

「その様子だと追加で“お仕事”が発生したとでも?」

「さぁっすが―――察しのお早い…こう言ったのは“広く”“浅く”が信条だったのになあ…」

「同情してやる余地もないね、それより―――」

「そんなん決まってんだろぉ~【閉塞した世界に躍動する“光” あんた】と鉢合わせになった所為せいだよ」

他人ひと所為せいにするんじゃねえよ、あんたの日頃の行いが悪いからだろが」

「ひひ―――言ってくれるねえ~ええと…」

「『ヒルデガルド』―――お前が手を出してくれた『シェラザード』の母親だよ」

「一族揃っておっかねえ存在って事に変わりはねえか、取り敢えずは時間だ…本来の目的は聞きそびれたが、また会う機会もあろう―――諸君、さらばだ! はあーっははははは」


インコグニートが請け負っていた“お仕事”と言うのは、その報告をもって終了―――と言う訳にはいかなかったらしい、そう彼に“お仕事”を発注していた依頼元でもある“おこばあちゃま”なる存在が、また新しい“お仕事”を用意して待ち構えていたみたいなのだ。

その事に僕達は同情してみるもののヒルダさんはそうではなかったらしく、自分の愛娘をどうにかした存在の更なる不幸が降りかかってきた事に内心ほくそ笑んでいたようなのだ。


それにしても不思議だった、だとしたらあの『宿題』とは何だったのだろう、その解答を聞きもせずにインコグニートは僕達の前から去ったのだ、それもヒルダさんと出会ってしまうと言う危険を冒してまで。


  * * * * * * * * * * * * * * * * *


―――完全に私の“ミス”だ、『らしく』なく国に残してきた娘の不遇を知ってつい頭にキテ姿晒しちゃうなんて……


ケント辺りはあった出来事で深く考え事をしてくれそうだけど…はそうは行かないみたい―――私がインコグニートあいつからの煽りで姿を見せちゃったみたいなもんだから…


「あ、あのーーー嫁ちゃん?な、何なのかなあ…」

「それよりヒルデさんあの恰好ナニ?すっごい恰好よかったんだけど―――」


お、おぅぅ…喰い付きがスゴいな、顔が近いったらない、それにこの子『投稿サイト』の売れっ子(までかどうかまでは知らないが)の作家さんだから、そう言う人の前でなるべき姿じゃなかった―――と、今更ながら猛省中なのでありますのだ。

けれどまあ子を持つ親の心情としては判ってもらえると思う、可愛い我が子があんな下衆いヤローの毒牙にかかったと知ったとあっちゃあ居ても立ってもいられやしないだろう、それにーーー私としては瞬殺するつもりでいたのにさあ、なんていうかーーーインコグニートあいつの状況の持って行き方が手慣れていたと言うか、あれは相当場数を踏んでいるからとしか思い様がないよな。


                  で


それはそれとして―――だ、やはりみっちょんの方は信じていた人からの裏切りがあったと判ってからは“しょんぼり”としていたものだった。


通っている学校の中でも以前までのような活発さは鳴りを潜め、授業中にしても休み時間にしても何かを考えている風だった…

この時の私の弁護をするには―――うん…仕方がないと言うべきか、私もそう言う経験がないわけじゃないから、そう言った状況に陥った人への対処の“ひとつ”として“そっ”としておく…ああ言ったのは下手に障っちゃうと周りに甚大な被害をもたらしちやうからな。


だけど―――今回はが裏目に出ちゃった…と、言いましょうか……


 ◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


僕は今、校舎の裏庭にいる。 これはもしかしなくても―――と思われるかもしれないが、残念ながら


こうした状況は主に『いじめられ』キャラが『いじめ』キャラ達に呼び出されて暴力行為を働かれるということになる。 以前までは僕の身に起きていた常態的な事柄ではあったのだが、いまではヒルダさんのお蔭もあって僕をいじめようとするヤツらは駆逐されてしまったのだ。


だとしたら―――だ…僕を校舎裏に呼び出した存在と言うのは“誰”?


うん…と言うより、今のこの状況は僕ですら望んでいない、変な事を言うようだが、こう言う事になるならまだ僕をいじめていたヤツらの方がまだだとすら思えてくる。


て、言うかなんでだよおぉぉぉ~~~何でが―――


「ねえケンち、わ、わたしの悩み聞いて貰えないものかな…」


またちょっと変な事を言います、こんな状況校舎裏に男女2人きりならまだ瑠偉ちゃんの方がだああーーー!

それが…それがどうして『トリプルブリッヂ・コーポレーション』のご令嬢である三橋京子あんたなんだようぅぅっ!

つまりはそう言う事だ、『放課後や休み時間の校舎裏こんなシチュエーション』は主に暴力行為集団リンチなどに使用される事が多い、けれどそんな事を『まだまし』と思えるのは僕の思考が麻痺しているのか?いいや違う―――そうしたパターンもあるのですが、実はもうひとつパターン…そう、『放課後や休み時間の校舎裏こんなシチュエーション』で『いじめ目的』じゃない、しかも『男女が2人きり』って……!

それに三橋さん…頬を紅潮あからめてうつむき加減で“もぢもぢ”しちゃってるしぃ……しかもこの人とは例え見せかけであったとしても『婚約』をしてしまっているのです、ですがねぇ…って『トリプルブリッヂ・コーポレーション』を吸収合併しようとしていた新興のIT企業の魔の手から逃れるために一芝居打った『苦肉の策』ですよねえ?だからこの人との間に恋愛感情てなものは―――


「な、なんでしょう…三橋さん」

「あのね、わたしね、ケンちにお願いがあるの…」


その時の彼女は“いつも”の派手な恰好をしていなかった…人工的な光で肌を焼いたり、爪に大小さまざまな石(みたいなの)を散りばめたり、まつ毛を盛大に盛ったり、メイクも高校生とは思えないくらい派手―――があってからと言うものは自分を飾る事が出来ないまでに思い悩んでおり、そうしたモノも薄まりつつあった。


そんな彼女から“お願い”をされてしまったのだ、そう―――


「がるどっち、あの時あいつ…『インコグニート』ってヤツの『雇い主』“おこばあちゃま”って人の事も知ってた感じだったよね、だからケンちの口添えであの人に会える算段つけてもらえないかできないもんかな。」


あ。 そっちでしたかあーーーいやあ“ホッ”としたというか何と言うか…だってほら、僕って対人弱者だから同性同士でも苦手なんだけれど、これが異性で…しかも恋愛絡んだりしたらヨユーでタヒねますよ? それにこの人とは(一応)“フェイク”だとしても『婚約』までしちゃってることだし―――『放課後や休み時間の校舎裏このシチュエーション』が『僕への愛の告白』じゃなくて本当に良かったあああ~。



         ―――{※フラグが立ちました※}―――



ん?なんだ今の―――







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