第13話 オレ“様”の家庭内事情(家計的に苦しいんで“副業”してます)
“オレ”は今、『
とは言え“オレ”は我慢強かった―――我慢強い方だ、下手をしたらそのうち命を落としかねない就業内容を5年と勤め上げたのだ、だけど命の危機を感じ勤め先を辞めてしまった…。
これでいよいよ一文無し―――生活困難に陥るものと誰もが思いなさったことだろう……
ふっふっふ、くっくっく、ざあんねんでした―――実はそうはならないのだ。
と、言いますのも、実は“オレ”にはとある“コネ”がごさあまして、社蓄としてブラックな企業に勤めていた同じ時期に『副業』でそれなりに生計を立てていられたのだ。
労働法で定められた就労時間を優に超え、住んでるオンボロアパートに帰ったら『寝る』だけなのだが…数年前に出来た“彼女”と一緒に暮らしてたならブラックな企業の給料ごときでは足りゃあしない。
もうね、“女”ときたらそれはもおーーー金のかかる生き物でござあまして、この“オレ”も疲れた体にムチ打ち、“オレ”が持っている“コネ”のひとつに媚び得ってどうにか2人分生活できるカネを捻出できているのだ。
ところで―――気にはなっているとは思うが、“オレ”と“彼女”が一緒に暮せられるまでの資金の確保を一体どうやってやっていたのかと言うと、それが“コネ”が提供している『オンライン・ゲーム』をプレイすると言う事だったのだ。
しかもその時の“オレ”は『プレイヤー』なのではない、実際視た目ではプレイヤーなのではあるが、“オレ”の役回りと言えば…
「ちょ~っくらゴメンなさいよーーー、今あんたがやってるのは『不正行為』って奴だ…このまま大人しくしてもらえれば厄介な事にはならないんだがぁ?」
「な、なんだ
「ふっふっふ、テンプレートな回答ありがとう…と、取り敢えず言っておこうか そーーーう!このオレこそが平和で健全なネット社会を護る為、日夜を問わず見回っている『特別警備隊』だ! そうと判ったなら大人しく観念しろい!」
まあーーーなんていいますか…数年前まではこのオレ自身がその『平和で健全なネット社会』とやらで仲間達と好き勝手シホーダイ暴れ回ってたワケなんですが、時間の経過とやらはおかしなもので、今やそんな“オレ”が『平和で健全なネット社会』を護る立場なんだと、思わず笑っちまうよなあ……
とは言え、今は食って生きていかなきゃならん(それも2人分な)、その為にもと現在の収入源と言うのは“コネ”の仕事で
それはそうと、“オレ”と同居中の“彼女”は―――と言うと、“オレ”とは別口で元“オレ”の仲間だった奴らとつるんで別の『オンライン・ゲーム』で運営側の手伝いをしてるらしい、2人揃って好きなオンライン・ゲームを手に職なんて…世も末と言った処だ。
* * * * * * * * * * * * * * * * *
そんなある時、“コネ”で働かせてもらっている運営の管理者様からこんな話を頂いた―――
〖すまんが至急お主に動いて貰わねばならん懸案事項が浮上した、やってもらえるな〗
「えーーーなんすかーーー『懸案事項』って、面倒なの、ヤですよオレは」
〖
「へえーーーアレで他より多いんすか…けどこっちの生活も毎月カツカツでねえ~? こんなこたぁ言いたかないんですけど、アイツが浪費する額も半端なもんじゃないってなもんでして」
〖むぅ~~~困ったヤツよのう、仕方があるまい特別支給じゃ―――これでどうかの〗
「へへへへ、判ってるようじゃあーりませんか“おこばあちゃま”」
〖全くお主と言うヤツは、減らず口ばかりが達者になりおって…〗
「ま、一応報酬は確認しましたんで…それじゃ聞きましょうか“話し”って奴を」
現在の処の“オレ”の上司様は、見た目は“幼女”けれど言葉遣いが“婆ァ”じみていると言う特徴の持ち主だ(それで“おこばあちゃま”なワケなんだが)、それで“コネ”と言うのも以前まで“
それはそれとしてなんだが、どうやらここ最近“おこばあちゃま”がその技術の一部を提供した〖プログレッシブ・オンライン〗に不穏な空気が流れていると言う……
「(つか不穏な空気って…)あのーーーひとついいですかね、これってアジアの一部や欧州の一部で台頭している超大国のクラッカーの仕業じゃないんです?」
〖お主でも最初にそこに行き着いたか、じゃが残念なことにそうではないらしい〗
「『そうじゃない』ってどゆこと?かなあ~?」
〖直接出向いて担当の者と
『直接』……って言っちゃってますけど、それヤバくない?だって“おこばあちゃま”って割とファンタジーな世界観に於いては『フロア』や『エリア』はたまたは『ダンジョン』ボスに該当するような―――
〖おい、聞いておるのか『人中の魔王』〗
「あ? ああ~イヤだなあちゃんと聞いてますってぇ、それより『
〖判っておるのなら
「(ふぅーん…)“オレ”達の
〖外れておるとは言え、中々鋭い所をつきおると言った処の様じゃの、そう言う事じゃ、今回の騒動の
“オレ”達が
そしてその
「ひょっとすると不法侵入された挙句、好き勝手し放題されてるってヤツぅ?」
〖認めたくはないものじゃが的を得ておると言った処じゃよ、そこでお主にやってもらいたい事とは“ワシ”のやっておる事にケチをつけようとしていた者の『洗い出し』と『調査』―――出来れば『排除』も願いたいものなのじゃが…〗
「(ん?)どしたんですぅ~? あんたらしくもない―――妙に言葉尻が重たいじゃない」
〖実際、重たくなると言った処よ、最近になって判った事なのじゃが、その容疑者…どうやら通常の人間ではないようなのじゃ〗
「(…)それってえーもしかすると、“
〖うむ、認めたくはないが
「あ、あのぉ~“オレ”も一応は通常の人間なんですけどォ~? なのに化け物じみた―――つうより最早化け物を『排除』しろだとぉ~?」
〖おや、異な事を言う、そんな通常の人間様が“ワシ”らを向うに回し、更には主導権を握った事もある―――事を忘れたと申さぬであろうよなあ?〗
「(むぐぐ…)そんなですねえ、思い切り過去の事を
〖
5年以上も
それにしても、今回の
と、まあ概要は把握出来た事だし、“お仕事”頑張りますか―――
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
その一方、僕達は三橋さんが独白してくれた事で他のプレイヤー達が知る事が出来ないような事を知ってしまった。 一応はゲーム内にログ・インしているものの、例の独白のお蔭でいつもよりは警戒をしているって処かな。
いやあ~それにしても“重い”よ、“重い”! 最新のアップデート直前で死人が出たって…そんなのアニメの世界だけで御馳走様ですって! それに三橋さん自身、その危険性を考慮して修正プログラムをアップデートし直したって言ってたけれども、死人を出した原因のプログラムが排除出来た―――って言う確信ないままだしさあ…そんなんでおちおちゲームをプレイできますか?
けれど、僕にしてみれば現実逃避先って
「ふむ、これだけあればなんとかなるじゃろ…(それにしてもじゃ、あやつめ…余計な事を吹き込まなんだら、今のこうした気分もないものじゃろうがなあ…)」
「おう、『トラビアータ』そっちの景気はどうだい」
「なんじゃ『マクドガル』か…まあぼちぼちと言ったところじゃな、それよりお主はどうなのじゃ」
「ま、お互い似たような処と言った処よ」
ひと仕事終えた『
『それにしても困ったものよねえ三橋さんにも』
『ははは、それにしちゃ高坂さ―――』 『ん゛~?』
『(…)瑠偉ちゃんも他のプレイヤーが知りもしない事実を知っちゃってもログインするもんだよね』
『まあ、ね…それほどこのゲームへのインが私の生活のルーティーンになっていると言うか…』
『
いや、まあーーーーそう言う事じゃないんですけど、僕としたら彼女の事をどう呼ぶか迷いもすると言った処だ。
この事は今までにも散々言って来た事でもあるのだが、僕と彼女との間では決定的に違うものがある、そういわゆる『社会的立場』と言うヤツだ。
僕は小・中学校といじめられ続けてきた事もあり『根暗』であり『オタク』でもあり『引き篭もり(体質)』でもある、それにそうした環境で多感な時期を過ごしてきただけに
まあーーーそれはそれとして、一応僕達は同じ事情を共有した仲だ、それにこれから話す事にはこのゲームの運営の根幹にかかわる事が存在する…
『あれからヒルダさんも、一応は排除されたけれどもまだどこかに潜伏しているかもしれない不正プログラムの断片を調査してるみたいだけれど…』
『でもさ、それってヒルダさんも一度調査して異状は見つからなかったんだよね』
『うーん、まあ…あの時そう言ってたからね―――』
『だったら、このままでいいんじゃないのかな…』
『(え?)瑠偉―――ちゃん?』
『だってさ、その不具合見つかっちゃったらどうなるの? 最悪このゲームが終わっちゃうって事?イヤだよ私…そんなの―――』
『なにを、言って―――』
『だってさ、健くんとお話しできるようになったの、このゲームがあったからなんだよ?! まあお互いのリアルが割れるまではそうじゃなかったけど…リアルが割れた今となっちゃ健くんの『トラビアータ』が健くんそのものなの! それを…許せない―――私の幸せを、私の望みを妨害するヤツのプログラムなんて絶っっっ対に許さない!!』
ん、んん゛~~~何と言うか―――瑠偉ちゃんの内に吹き溜っていたモノはここぞと言う時に爆発してしまったと言うしか…まあ『校内一のマドンナ』にここまで言われて悪い気は、しません…しませんが―――
「あらあら、お2人して仲睦まじい事ですこと、わたくし妬けてしまいそうですわ」
「お…おおぅ、誰ぞかと思うておったら【癒しの聖女】ミザリア殿ではないか」
「な、仲睦まじいってそんなんじゃないわよ!」
「のう…マクドガル、お前も今の自分の姿を考えんかッ!」
「(…)す、すまねえ、つ、つい―――な」
第三者の目からしてみれば『幼女のくせに頑健な“盾”役のベテラン』に寄り添う『ゴリゴリマッチョの髭面中年男』な構図なのだが、事情をよく知る者からすれば同年代の男子と女子が“キャッキャウフフ”してる場面と思われてしまったらしい(まあ斯く言う『事情をよく知る者』の1人にこのミザリアもいるわけなのだが)、そしてそのままなし崩し的にミザリアもPTに迎え入れ…
『ちょ、瑠偉チャソもうちのダーリン狙ってんなし』
『あの、三橋さん?もうそろそろ
『ダーリンも、そろそろうちのこと『三橋さん』じゃなくて『きょーこ』と呼べやし』
『あの…三橋さん? この私でさえ『
『ぷぷー、だぁったらあーもぉー既に飽きられてるんじゃね?』
『なにか、言ったかしら?』
1人の蔭キャ男子を巡って“幼馴染み様”と“ギャルだけど財閥のご令嬢様”が一触触発の状態となっている、こうした状況は二次元創作物では“ハーレム物”と見紛うばかりだけれど、実情としてはそうではない…とだけは言っておこう。 それにこのままにしていても状況の進展は望めない為―――
『あの、そろそろいいかな2人共、いま僕と瑠偉ちゃんとがPT組んでいるって言うのは、以前三橋さんが伝えてくれた情報のお蔭でもあるんだよ、まあその事自体が悪いって言う訳じゃないんだけど…以前僕達が知ってしまった情報と言うのは他のプレイヤー達は知りもしなかったような割と重要機密なものなんだよね』
『そうなんだよね―――本来ならあんた達にも話していい事じゃなかった、けれどその事を
『でも一応は排除出来たんだよね、そのプログラムというかバグ』
『うんーーー一応と言えば、一応ね けれども完全に脅威が無くなってしまったかと言えばそうじゃない…このうちがそう感じちゃってるんだよ』
僕達より前の世代で一時的に爆発的な人気を博したアニメの作品、その作品はその時代の世相をよく表していた事もあり『オンラインネットゲーム』を題材としたものだった。 ストーリー展開としては
けれどそうした狂った設定は『アニメ作品』の中での世界観展開でしかない、現実であるこの世界ではそんな事など起こるはずもない―――そう、思っていた…そう、思っていたかった、けれど三橋さんが言っていた、『(アップデートする前の)テスト段階で死人が出た』と…そこで思わず例の作品の事を知っている僕や瑠偉ちゃんは息を呑むしかなかったのだ、『まさか、あの狂った設定そのものが、この現実世界に?』と…。
それに三橋さんも『(一応は)問題性のあるプログラムを排除できた』とまではしたみたいだったけれど、彼女自身の勘なのか油断はしていなかったと言う訳なのだ。
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