第22話 異変
インセクトロード(笑)を倒した後も特に歩みを止めることなく進んで行く。
配信はダンジョン職員限定公開にしたままだ。
何が出てくるかわかんないだろ?
神谷:紘一君、すまんが、一旦席を外す。トラブルのようだ。行くぞ、皆川君。
皆川夢乃:はい。
「わざわざ律儀にコメントでやり取りするのウケる」
「沖田さん……」
叔父さんと夢乃さんはもう行ってしまったようだが、俺の呟きに遥がクスクスしてるの可愛いから抱きしめて、と。
偶然横田さんと目が合ったが、逸らされてしまった。
嫌われてる……わけじゃないけど、呆れられてるかもな~。
ダンジョンの中でのイチャイチャは控え目にしないとな。
何回も戒めるんだが、ついやってしまうのは幸せだからだろうか……。
ちなみにエフィーはインセクトロード(笑)との戦いで疲れたと言い張って俺の肩の上で寝てる。
お前、ちょっと言い争っただけで何もしてねぇじゃね~かという俺のツッコミには後ろ足でほっぺたをぷにってやられた。
なんだよ?
どう考えても高位ダンジョンの、それも100層を歩いていると言うの緊張感がなさすぎると思わないか?
それが今後発生する事件への対処を遅らせるのであった……とかにならないといいけどな。
叔父さんの言うトラブルってなんだろうか?
触りだけでも話していかなかったということは俺は無関係なんだろうか?
そんなことを考えながら歩いて行ったら、ようやく見えて来た。
禍々しい魔力を漂わせる重厚な扉。
ゲームだと魔王が出てきそうな雰囲気を醸し出している。
部屋の外からは全く魔力を感じないのは、たいしたことないやつだからなのか、それとも魔力コントロールが俺の想定よりも上だからなのか?
まぁ、どんなやつがいたとしても、どうせ虫だ。なんで太平洋で虫なんだと思う気持ちは変わらないが、さっさと倒して東京に戻ろう。
叔父さんを手伝えるなら手伝わないとな。
急に襲われることもあるだろうから、入る前に防御魔法などのバフをかけあった。
ギィ~~~~
俺は扉を開ける。
東京に続く、俺たちとしては2つ目の高位ダンジョン100層のボス部屋だ。
……って、空じゃね~かよ!!!?
そう、そのボス部屋には誰もいなかった。
しいて言うなら、俺たちが入ってきたのとは反対側にも扉がある。
これは確定だ。間違いなく、太平洋ダンジョンには101層以降のフロアがある。
でも、ボスはどこ行った?
部屋の中に入ると、恐らくボスのものであろう魔力の残滓は感じられる。
そしてこの部屋には何か魔力的な細工がしてある。
外と中が明確に分けられており、これのせいで外から何も感じなかったんだ。
「何もいませんね……」
遥が呟く。
横田さんは部屋の中を走り回っていたが、無言で戻ってくる。
エフィーは相変わらず寝てる……。おい、斬魔精とやらよ!?
部屋の中を手分けして調べながら思考を走らせていても何も出てこない。
100層に限らず、ボス部屋が空って初体験なんだけどな。
「とりあえず帰るしかないか。帰って、世界ダンジョン協会にある石板が変化したかどうか確認してもらえば何かわかるかもしれない」
「そうですね」
「おかしい……」
遥が俺の言葉にうなずきながら同意してくれるが、横田さんは何かに気付いたようだ。
「どうした?」
横田さんが喋ること自体が珍しいから、何かあったのは確定だ。
これで例えば何か暑いなとか言われたらずっこける自信がある。そんな無意味なことを言う人じゃない。
「神谷会長と皆川さんは退席したが、配信自体は切らずに続けていたはず。他のダンジョン協会職員は見ていたはずなのに、なにもコメントがないなと思ったら、配信は部屋に入った後に切断されていた」
こんなに長く喋ったことあったっけ?
思いのほか耳心地の良い声音に引き込まれそうになるのに耐え、配信動画を確認しながら話す横田さんの発言の意味を考えたが……。
「外と中で魔力的に遮断されているみたいだからな。結界みたいな感じになってる。だから切れたんじゃないか?」
さっき感じた通りだ。ダンジョン内でのスマホの通信はダンジョンの機能を使っているとは聞いている。きっと魔力的な何かなんだろう。
「一度外に出てみよう。嫌な感じがする。この結界自体はボス部屋にかけられたものじゃない。録画を見ても、部屋に入るときじゃなく、入って数歩歩いたあたりで切れている」
俺の説明では横田さんの危惧は晴れないようだ。たしかに部屋自体ではなく、内側にかかってるとしたら、それはこの部屋の仕様ではなく誰かがかけたものなのかもしれない……。
「ボスが魔法型でこの結界をかけた。そして……転移したとか?」
「どこに?」
聞きながら確かに嫌な予感がする。
どこかへ行ったのか?
どこへ?
ぷるるるるっ
部屋から出ると通信が復活したようでスマホが鳴る。相手は夢乃さんだ。
これは横田さんの危惧がビンゴかもしれない。
『沖田さん、大変です!』
「どうしたんだ?」
『巨大な虫型モンスターが東京に……きゃあ~~~』
なっ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます