第21話 モンスターの世界?

『情けなく敗れた我に何を話せと言うのだ……』


予想外だったが素直に答えてくれるらしい。

見た目はあれだけど、強者のプライドとか、そういうのでもあるんだろうか?

知らんけど。


「まずは……」


神谷:すまん、紘一君。配信は止めてもらえるだろうか?

皆川夢乃:さすがにちょっと極秘情報とか飛び出しそうですね

:くぅ~ここでお預けはきつい

:おにぃ~、ダンジョン協会のおにぃ~~!

皆川夢乃:あぁん!?

:すみませんでした……

:ぶくぶくぶくぶくぶくぶく……

:皆川さんを揶揄ったりするからwww

皆川夢乃:全員ID覚えたから。

:ひぇえぇえぇぇええ

:どうか助けてください。4つ上のコメントのやつはどうなってもいいんです。僕だけはどうか!!!

:お前が一番悪いだろうがよ!


ちょっと黙ってくれないかな……。


神谷:すまんな。話せる内容だったら公開するが、世界ダンジョン協会と相談するような内容もあり得るからね。

皆川夢乃:ここで聞いた人が全員日の当たらないところで一生を過ごすことになるかもしれないけど、それでもいいなら配信は続けてもらってもいいけどどうする?

:お疲れ様でした~

:今日もカッコよかったです沖田さん

:今日も可愛かったです遥ちゃん

:モフモフしたかったですエフィーちゃん

:耳元で『死にたいの?』って囁いて欲しかったです那月さん


那月にそんなコアなファンが?

とか驚いている間にほぼ同接者がいなくなった。

みんな怖がり過ぎ……ってことではなく、物わかりの良い視聴者で助かる。


「じゃあ配信きるわ~」


皆川夢乃:いや、大丈夫よ。操作させてもらってダンジョン協会員限定公開に変えたから


「そんなことできるの!?」


皆川夢乃:ちょろいわよ。IDパスワードも知ってるし。


なんだと……なぜバレた。

めっちゃ恥ずかしい。


遥に言われて開設したから『haruka_love』と『ILyou4E』なんだけど……。

後者は読めるだろ?

I Love You Foreverだよ!!


「どうして沖田は赤くなってるの?」


皆川夢乃:あら。可愛らしいIDパスワードだったじゃない。


マジデヤメテクレ……。


『で、なにが聞きたいのだ?』

律儀にもこちらのやり取りを待っていたインセクトロード(笑)が話しかけてくる。


話題を逸らすタイミングもばっちりだ。

おしいな。

君がモフモフ妖精だったなら、俺は何を置いても君を確保していただろうに。

蝶なのか蛾なのか知らんけど、虫に生まれたことが君の悲運だったな。


「まずはエフィーを狙う理由だな」

『それは斬魔精だ。斬魔精は敵だ』

「モンスターは敵なの。許せないの」

えっと、全く理解できん。インセクトロード(笑)もエフィもどっちも。


「生存競争か何かか?」

もしそうなら理解できるかもしれない。縄張り争いとかな。


『そのような温いものではない。お互いに決して相容れぬ。必ずや滅ぼさなければならない存在だ』

「エフィーのセリフなの。鋼虫族は消し去るの」

新しい言葉が出て来た。

もうどうでもいい。


きっとこれ以上聞いても理解はできそうにない。


『その昔な。我々と斬魔精は神と魔の狭間と呼ばれた世界に暮らしていたのだ』

おぉ……それっぽい話が始まったな。

もしかしたらモンスターのルーツとかの話なんだろうか。重要そうだ……。


ゴクリと息を飲んで話を聞く。


『そこには神がいた。神界からは堕ちた神だが、我らにとってはまさに創造神であった』

「エフィー達にとっても魔力を消す方法を教えてくれた凄い神様なの」

ほう……。


『魔力を消す方法などと……神は優しき故、問われたことには答えたかもしれぬ。しかし、それは我らを消し去る力。そんなものを我らの目の前で堂々と聞く貴様らを我らは許さない』

「虫は気持ち悪くて嫌いなの。動物になって出直せなの」

『貴様ぁ……』

ん?なんかいきなり俗っぽくなった。もっとないのか、こう伝説みたいなものが。


「お前たちは汚いの。エフィー達のうんこにたかったりするの。気持ち悪いの」

『万物から栄養を得られる我らを汚いなどとよくも言ったものだな。殺してやる!』

「ストップ!」

『くぅ……』

煽り耐性0かよ!


いや、事実っぽいな。さっきもフンコロガシ出て来たし。


『以来、こやつらは我らの敵。争ったせいで神と魔の世界から共にはじき出されたが、こやつらを滅ぼすことができれば、我らはあの約束の地へ帰れるのだ』

「それは無理なの。神は争いに悲嘆し、汚いお前たちを封じ込めるためにエフィー達を遣わしたの。魔力を消す力がその証拠なの!」

『言わせておけば!絶対に滅ぼしてやる!』

「受けて立つの!虫なんか沖田がぶっ殺すの!」

『ぐぅ……』


なんで俺が戦う前提なんだよ。

嫌だよ。俺虫嫌いだし。

この流れだと絶対にあれがいるだろ?

あの嫌悪感マックスなあれが。さらに気持ち悪い奴らもいるかも。

勘弁してくれよ……。


『我は敗れた。先へ進むがいい。そして真なるインセクトに滅ぼされるがいい』

やっぱりな……。この先にいるのも虫らしい。なんも具体的な話はなかったし、帰っていいかな?

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