第18話 このパーティ強すぎてやべぇ

:沖田さんに目標ってあるの?

:あぁ、それ気になる。

:最強すぎてな……


「目標? この前雑談配信で話しただろ?」


:いや、配信の目標じゃなくて

:なんて言うのかな。探索者としての目標とか


ん~と、生きるためじゃだめなのかな?


「お金稼がないと生きていけないだろ?」


:そういうことじゃなくて……え~と

:お金稼ぐのはダンジョンに入らなくてもできるじゃないですか。でも、ダンジョンって命を落とすかもしれない危険な場所だと思うので、そこにあえて入る理由と言うか。

:そうそう。もうすでに相当稼いでるんじゃないかと思うんだけど、今なおダンジョンに入る理由とか


「金は特に稼いでないぞ?」


:はっ?

:えっ?

:なんで?

:ドロップアイテムは?


「"明星"の契約でドロップアイテムはパーティ資産になった上で分配されるはずだったんだけど、前に協会を追放されたときに没収されたままだな」

特に金は貰ってないもんな。貴重だと思うアイテムは持ってるから、そうか、これを売ればよかったのかな?


:ちょっと待って、没収されたままってどういうこと?

:ダンジョン協会、ちゃんと仕事してくれ!

:むしろ収賄とかの範疇だろうから警察の仕事では?

:裁判官とか弁護士の仕事かも!

皆川夢乃:え~と、その件は現在まだ処理中というか、係争中で残っていまして、時期に対応が完了すれば沖田さんの口座に振り込まれる予定です。

:なるほど。対応中ってことなら理解

:でもそれを沖田さんに説明してないのか?


「きっと聞いてもわかんないし、そう言えば叔父さんに丸投げした気がするな。あっはっは」

正直細かい法律の話しとか、手続きの話をされてもよくわかんないんだわ。


:遥ちゃん、大丈夫かこの人で?

:今なら俺なら空いてるよ

:きっと一生空いてるからな

:あれっ、涙が……


アホな会話をしながら歩いていると、前を歩いていた那月がペースを落とした。


「なんかいるな」

「はい……たぶん虫系か……物質系かもしれない……」

横田那月さんが喋ってる……こんなに長い台詞を。衝撃的だ。


前方にいると思われるモンスターは特殊な感じがするけどたいして強そうではないから、自然と意識と言うか驚きが横田さんの方に向いた。


その時……。


「エフィ、下がれ」

「なんなの!?!?」

下がれとは言ったものの反応できるか怪しかったからエフィを掴んで引っ張った。

そこを斬撃のようなものが通過していく。

なかなか早いな。


しかしエフィーもちゃんと後方にステップしようとしていたみたいで、俺が引っ張ったことで勢いがつきすぎて後ろに飛んでいく。

すまん……。


俺のせいで真っ二つにされたりしたら後味が悪いから、ちゃんとそのモンスターの追撃は受け止め、カウンターを叩きこむ。


「エフィーはよく変なモンスターに狙われるよな」

「なんでなの!?」


:何も見えないけど、エフィーちゃんが後ろでひっくり返ってるな

:沖田さんが何かを防いだように見えたけど、敵か?

:今何層だっけ?相当深いから未知のモンスターとかがいてもおかしくないよな?

:そんな場所で雑談配信続けてる沖田さんって一体……

:ただの日本最強で、もしかしたら世界最強かもしれない一介の探索者だろ?

:世界最強かもしれない一介の探索者って、ちょっと長いけど相当なパワーワードだよなw


コメント欄は賑わってるみたいだな。

襲ってきたモンスターは事切れてるみたいだから、俺はエフィーを助け起こす。


「こいつはお前の故郷とは関係ないモンスターなのか?」

「こんなモンスターは知らないなの」

「でも、なんとなく前のやつに似てないか?」

「それはそうなの」


全身金属性の虫系モンスター。前回は◎面ライダーみたいなやつだったが、今回はもっとずんぐりむっくりな体に、大きな頭。こいつはなんだ?


「フンコロガシ?」


あぁ……遥の予想は当たってるっぽい。

昔昆虫図鑑で見た記憶がある。


でも、思い当たった結果、一気に戦う気が失せた。

やだよ、あの足、何かの糞を転がしてる足だろ?

きちゃない……。


でも、メンバーは女の子ばっかりだしな……。もう一体出てきやがったから、ここは俺がやるしかないか?

いや、そう言えばエフィは案外強かったもんな。


こいつ明らかに人間じゃなくて動物よりだし、それならフンコロガシへの嫌悪感とかないかもしれない。

俺は期待した視線でエフィーを見つめるが……。


「なんか近寄りたくないの。嫌な感覚があるの……」

使えない。なぜ動物が虫に怯えるんだよ。そこは犬とか猫みたいに噛みついて来いよ。

なんなら鳥さんだって虫さんはぱくぱく対象だろ?


しかし、無理っぽい。

どうやら嫌な気配とやつは本当みたいだ。


仕方ない。俺の刀を見せる時が来たようだ。


決して触りたくないからじゃないぞ?


一刀のもとに斬りふしてやるためだ。


:おぉ、沖田さんが刀を抜いて遥ちゃんや那月さんを下がらせたぞ!?

:カッコいい♡

:ああやって、自然にモンスターの前に出る強者感はやっぱすげえよな。惚れるわ。

:遥ちゃんは魔法障壁張ってるし、那月さんは何か魔法用意してるよな。バランスいいチームなんじゃないか?

:今たぶん92層だよな?

:そんな場所でも全く気負いがない……


動くなよフンコロガシ。

特に絶対にキックとかしてくんじゃねぇぞ!?

ばっちいからな。

そんなことしたら全魔力を持って貴様を消し飛ばしてやるからな!


:なんかいつもより目つき険しいけど、本当に余裕綽々なのかな?

:当たり前だろ!沖田さんだぞ!?

:東京100層を鼻歌交じりで踏破していく沖田さんに向かってなんてことを言うんだ貴様は!?

:通報しました

:なんで!?!?!?

:wwwwwwwww

:あれっ?沖田さん消えた。

:敵モンスターはどこ行った?

:えっと、なんかあいつが立ってた床に黒い粉が……


ふぅ、またつまらないものを斬ってしまった。


:いや、ツヨっ!?

:えぇ、見えたのか?

:解説を!

:解説も何も、凄まじい速度で沖田さんが刀を振りまくって、相手が文字通り粉みじんになっただけだお

:やばすぎる……92層のモンスターが瞬殺と言うか、マジで手も足も出ないとか……


「さて、どんどん先へ行こう」

「「「はい(なの)」」」


:このパーティ強すぎてやべぇ……

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