なかよし


教室では騒然としていた。

一限目の授業をすっぽかした二人。

次に戻って来た時、昨日とは全く違う関係性となっている。

少なくとも他のクラスメイトの連中はその様に思っていた。


「と、遠崎、これ…どう?」


画面共有を行い、遠崎識人にランジェリーショップの画面を表示している。

彼女が選んだものを見ながら、遠崎識人は目を細めて笑った。


「ん、いいね、こういうのも」


遠崎識人が購入を促すと、彼女は嬉しそうに笑った。


「そう、なんだ…えへへ」


彼の好みを知ると、嬉しく感じてしまう。

鞭野瑪瑙は購入画面へ移動していた。


…その様な二人の行動を見ているクラスメイトたち。

明らかに、距離感がぐっと近づいている。

あの、他人に対して格下だと見下していた鞭野瑪瑙が、だ。

自分の体を遠崎識人に預ける程に、心を許しているのが有り得ない事だった。


「…なあ、あれ、どういう事なんだ?」

「あんな、鞭野、見た事ねぇぞ…」


天変地異の前触れでは無いだろうか。

その様にクラスメイトたちは話し出している。

そんな二人を見て、同じ境遇である筈の白宮桃花は置いて行かれた様な感覚に陥った。


「(遠崎くんと、鞭野さん、距離感が近い…なにかあったのかな)」


二人が仲良くしている所を見るだけで、白宮桃花は寂しく感じている。

自分も、同じように、あの輪に入りたいと思っているのだろう。


「…(いいなぁ、私も、ああいう風に甘えたいけど…人の視線があるから…)」


豊満な肉体を持つ白宮桃花が、鞭野瑪瑙の様に遠崎識人の太腿の上に座ったり、首に手を回して密着すると言った行為は、なんだかはしたなくて、とても出来る行為では無かった。


遠崎識人は、彼女の視線に気が付いた様子で、白宮桃花に向けて手を向けると、こっちにおいで、と手招きをする。


「白宮さん」


名前を呼ばれる。

少しだけ嬉しくなる白宮桃花。

それを顔に出す事無く近づく。


「え、ぁ…うん、遠崎くん、何か用?」


と、そう言って遠崎識人の方へと向かう。

近くの椅子に彼女は座る。

他のクラスメイトの席なのだが、遠崎識人と鞭野瑪瑙との中心から半径一メートルの範囲には生徒の姿は無かった。

誰かの椅子を借りて、白宮桃花は遠崎識人の隣に近付く。

遠崎識人は首を傾けて、〈イデア〉を起動していた。

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