第16話 ペナルティ
「……見つけた」
ジムを出て辺りを散策していると、紫音のスマホが震えた。
自転車を止めて、画面を確認してみるとモンスターがマップに表示されていた。
ただ、それは見慣れたスライムではなかった。
「……ゴブリンか」
角が生えた緑色の小鬼。
ファンタジーの世界ではスライムと肩を並べるくらい有名なモンスターのゴブリンだった。
『ゴブリン:LV5』
「……結構強そう」
しかし、その強さは通常のスライム以上。
初めて戦ったベニスライムの次に強い。
何故こんな強いモンスターが出てくるのかと、紫音は疑問を持ったがすぐに智也の説明を思い出す。
おそらく、紫音の家から一キロ以上離れたせいで出現するモンスターが変わったのだろう。
「……まぁ、勝てなくは無さそうだしやってみよう」
始めたての頃なら間違いなく逃げていた。
何故なら、ベニスライムを倒した時のような固定ダメージを与えるアイテムはもう持っていないから。
だが、紫音はチュートリアルをクリアしたことでレベルが四になりステータスが向上している。
その上に新たに習得した魔法や特技を上手く使えば、レベル一程度の差なら差なら問題なく埋められるそう判断した紫音はゴブリンとの戦闘に踏み切った。
『ゴブリン♂:LV5が現れた。
【ゴブリン♂:LV5】
職業:斥候
体力:40
魔力5
攻撃力20
魔法攻撃力5
防御力15
魔法防御力10
素早さ10。
【シオン:LV4】
職業:旅人
体力:30
魔力20
攻撃力20
魔法攻撃力20
防御力20
魔法防御力20
素早さ12
使用可能特技
二連切り、癒しの舞、メタル切り
使用可能魔法
サンダ、ファイア、ウォーター、エアスラッシュ
貴方の行動を選択して下さい。
『攻撃』
『アイテム』
『特技』
『魔法』』
「……とりあえず、『攻撃』で」
戦闘が開始しステータスを確認したところ、体力以外のステータスは紫音の方が勝っている。
このことから、魔法や特技などの特別なことをしなくても攻撃だけで倒せるだろうと紫音は判断した。
『シオンの攻撃。ゴブリン:LV5に5のダメージ』
『ゴブリン:LV5の攻撃シオンに2のダメージ』
その判断に間違いはなくそこそこの攻撃が入り、対するゴブリンの攻撃は軽く殆どダメージがない。
(勝った)
そう思いながら、紫音が攻撃を連打していると予想外のことが起きた。
『ゴブリン:LV5が『薬草』を使いました。体力が二十回復しました』
「……は、だる」
体力が半分を下回ったところで、敵が回復アイテムを使ってきたのである。
まさか、こんな序盤に回復アイテムを使ってくるモンスターが出てくると思わず、紫音の口から文句が出た。
しかし、体力が逆転されてはしまったがまだまだダメージレースは紫音の方が有利。
もう一度薬草を使わなければ問題なく勝てるので、紫音は若干苛つきながら連打を再開する。
『ゴブリン:LV5が薬草を使いました。体力が二十回復しました』
「……はぁ!?ゴブリンの癖になんで二個も回復アイテム持ってるんだよ。クソゲー過ぎるでしょ」
しかし、紫音の立てたプランはまたしても瓦解した。
なんと、ゴブリンの体力が尽きかけたところでもう一度回復してきたのである。
一般的なRPGならほぼあり得ない事態に流石の紫音も声を荒げた。
「……もうめんどいから魔法を使って倒そ」
チマチマ戦っていては、先程と同じように回復されるかもしれない。
そう考えた紫音は魔法による攻撃に切り替えることにした。
『シオンがファイアを唱えた。ゴブリンに10のダメージ』
これによりダメージは先程の二倍に増加。
さらに、同じ魔法を撃ち込み後一発で倒せると、紫音が思った時スマホが地震速報が来た時のように激しく震えた。
『ターン制限の超過を確認。これによりペナルティが発生。リアルワールドへのモンスター転移を行います』
「……なに、これ?」
突然のことに困惑する紫音。
次の瞬間、スマホが激しい光を発した。
「くっ!?」
紫音は咄嗟に腕で顔を庇った。
時間にして僅か二秒が経過したところで、光が収まり紫音が目を開けると
「GAAAAーーーー!」
「……うそ」
ボロボロのゴブリンが目の前に立っていた。
あとがき
本編開始。
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