第133話 浜辺での戦闘

上陸地点を確保していたマリウスの周囲にも人影が現れたが、その人影は海の中から現れていた。その人影は腰布程度しか纏っていない。手には槍の様なものを持っていた。幸いにも上陸地点のすぐ側は絶壁で、神殿騎士達はその絶壁を背にしてマリウスを中心とした半円状の隊形をとり、対峙していた。暫くすると戦闘が開始される。神殿騎士達は無闇に相手を殺さない様に守勢に徹していた。その様子はジゼルが残る船からも見えた。


「どなたか上陸用の船を出して下さい。僕が救援に向かいます。」


すぐに船員が船を降ろし、ジゼルと2名の船員がそれに乗って漕ぎ出す。何人かの敵は未だ海中に潜んでいた様で、ジゼルが乗った船に襲い掛かろうとしたが、大型船の船上から神殿騎士が矢でその行手を遮った。陸が近づくとジゼルは船を飛び降り、マリウス達と戦っている敵へと向かって行った。既にジゼルの胸には紋章の光がある。


「ジゼル君、殺してはダメだ。」


「分かりました。」


ジゼルの接近に気付いた敵が槍を突き出してきたが、ジゼルはその槍の穂先を光の剣で斬り飛ばし、続けて光の盾で構えながら相手を体当たりした。体当たりされた敵は後方に、神殿騎士の方に飛ばされ、神殿騎士がすぐさま後頭部を殴って気絶させた。ジゼルは左右から同時に突き出された槍を躱しながら後方に飛んで一旦距離を取ると、再び敵へと突進し、2人の敵の槍を中程で両断した。武器を失った敵に今度は神殿騎士が後方からぶつかり、そのままその2人を拘束した。


「まっ、待って。降参よ。」


ジゼルが少し離れた場所にいた敵に斬り掛かろうとした時に、海上から声がした。若い女性の声。ジゼルが振り返ると1人の少女が海から上がろうとしていた。身なりからすると他の敵より身分の高い人物の様だった。


「先ずは武器を捨てて下さい。」


ジゼルは光の剣を突き出しながらその少女に向かって歩き出す。


「分かった。分かったから、そっちも止まって欲しいの。みんな、聞こえてたでしょう。あちらは殺さない様に手加減してくれてたのよ。私も犠牲を出したくない。だから戦闘を止めて武器を手放しなさい。」


残った敵は少し後ずさってから浜辺に武器を放り出した。海から上がって来た敵も同様に武器を放り出す。神殿騎士は拘束していた2人を放し、その2人は気絶していた1人を抱えて距離を取った。


「先ずは話し合いましょう。」


「攻撃して来たのはそっちだ。」


「ジゼル君、ちょっと待った。僕の方で話をするよ。」


神殿騎士の後ろに隠れていたマリウスが出てきてジゼルの肩に手を置いた。ジゼルは警戒を解き、数歩後ろへ下がった。


ーーーーーーーーーー


「私は、ルミリス様を崇める魚人族マーフォークのルル。族長であるルーベルの娘よ。」


ルルと名乗った少女は、やや青みがかった肌で、薄っすらと鱗の様なものが肌の表面に見える。それ以外は普通の人間と同じに見えた。


「じゃあルルさん、僕はマリウス。それと後ろにいる少年はジゼル君だ。これから幾つか質問しても良いかな?」


「大丈夫です。でも我等は陽の光に弱い。出来れば水に浸かっているか、日陰に入りたいのですが、問題ありますか?」


「問題ないよ。あちらの日陰に移動しよう。」


2人は日陰へと移動した。ジゼルと神殿騎士は少し距離を置いて周囲を警戒していた。


「先ずは僕達がなぜ襲われたのかを知りたい。」


「この島は我等の棲家です。急に見知らぬ人間が現れたら攻撃するのは当然です。」


「なるほど、急に現れた事を謝罪するよ。僕達は水を補給したくてこの島に来ただけなんだ。僕達の仲間が内陸に入って行ったけど、どうなってるか分かるかな?」


「そちらへは父が向かいました。父は強い。今頃はあなた達の仲間を捕らえています。」


「それはまずい。直ぐに仲間の所へ連れて行って欲しい。」


当初、ルルは何色を示したが、ジゼルが睨むと大人しく魚人族の住む所へと案内した。

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