第35話 魔人の追跡と討伐

イェルガはハルザンド、ジョルジア、および西方諸国の領域を担当し、魔人の追跡と討伐に取り掛かった。魔獣討伐会議での情報によれば、魔獣を発生させている魔人は5組、イェルガは西方諸国での討伐から着手した。彼としては、ライドルからの見て遠方の西方諸国を先ずは片づけ、その後はハルザンド、ジョルジアの順で東方に進み、途中で新たな魔人の痕跡が見つかればその都度対応、何もなければライドルにいるジークに合流するつもりだった。


各国の国軍との連携に大きな支障はなかったが、西方諸国の国を跨ぐ情報伝達は若干の遅れがあり、魔人の居場所を特定するのに時間が掛かってしまった。それでもどうにか最初の魔人の場所を特定し、予想地点に部隊を潜ませた。暫くすると闇夜を足早に進む人影がこちらに向かってくる。それを見かけたイェルガは、人影が近づくギリギリまで背丈の高い草に隠れ、人影の先頭の何人かがイェルガの横を通り過ぎようとした時、自身の大剣を横に薙いだ。剛者のイェルガの大剣は強い衝撃波を伴って先頭の人影の何人かを胴で切断し、後続の何人かを吹き飛ばした。その後は残敵を掃討し、倒した人影を改めた。カインの報告にあった魔人の姿だった。


次の魔人の居場所は西方諸国とアルムヘイグとの国境付近、起伏のある平原だった。時間はまたしても夜間。小高い丘の上に立てば容易に相手を発見できるが、夜間では見落としもあり得る。それに相手に先に発見される可能性もあった。イェルガは仕方なく兵を分散配置したが、結果、分散させた兵の一部が魔人に襲撃されてしまった。騒ぎを聞きつけたイェルガが魔人を一掃したが、兵の犠牲は少なくなかった。


魔人討伐はハルザンドおよびジョルジアへと場所を移して継続されたが、かなり早いペースで進んだ。ハルザンドからイェルシアが参陣した為で、智者である彼女の指示に従った事で被害も抑えられた。魔人討伐がひと段落した後、ハルザンド国軍およびジョルジア国軍はライドル共和国との国境警備に就き、新たな魔人の侵入に備えた。


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もう一方のカインの方は...


カインはアルムヘイグ、スーベニア、および旧ゲイルズカーマイン地域にある各国を担当した。前半のアルムヘイグおよびスーベニアではイェルシアの支援を受けて早いペースで魔人討伐を進められたが、旧ゲイルズカーマイン地域に入る頃にイェルシアはイェルガの支援へと移った為、カインだけで進める必要があった。


旧ゲイルズカーマイン地域に入ってからは、カインは後方での作戦指揮に専念し、各国国軍を使って魔人討伐を進めた。国軍兵の被害は少なくないが、各国で同時並行的に討伐でき、早期に魔人による魔獣発生を抑える事で、結果的に魔獣による街や村への被害を減らせると目論んでいた。カインのこの目論見は成功し、魔獣被害を低く抑える事が出来た。カインは魔人討伐が完了したことを受けて、新ゲイルズ王国の国軍をライドル共和国との国境に配備し、新たな魔人の侵入に備えた。


ここまでの作戦によりイェルガとカインは魔人をライドル共和国へ封じ込む事に成功し、国境警備の配備を確認した後、二人はライドル共和国にいるジークの元へ向かった。

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