第22話 エッチ

 旅館に戻ってから、俺は荷物を整理していた。そして、浴衣を準備する。

 実は、俺はこの和歌山県の旅館の、秘湯が楽しみだった。着替えを持って温泉へと行く。

 男湯の暖簾をくぐって、着替えて温泉の湯にとっぷりと浸かる。

「ふう」


「きゃははははは」

 女湯のほうから、水穂や秋月たちの笑い声が聞こえてきた。

「ほんと、菜穂ちゃんっておっぱいでかいよねえ」

 大竹のはしゃぐ声も聞こえる。

「きゃあ。ちょっと、揉まないでよお。ぅん、あっ、はあ」


 やべえ、また股間が痛くなってきた。


「そういえばさ、大竹さんはどうして竹達くんのこと選んだの?」

「えっ、いま聞きます?」

 水穂の声に疑問で返す大竹。


「ちょっと、いい加減に揉むのもやめなさいよ」

「あっ、ごめんごめん。えっと、水穂さん、私が彼を選んだ理由は……」


 俺はごくりと生唾を飲み込んだ。こんな女子会トーク、聞いていていいのだろうか。

「彼は、実直で、そして誰かのためなら“共犯”になってもくれそうだったからです」

「共犯?」

「ええ。だって彼、誰かを救うことしか考えていないじゃないですか。誰かを救うためだったら一緒に犯罪も犯してくれそうだしね」

「へえ。確かに、彼って芯があるからね」


 思わず褒められたことに感激を覚える。いや褒められたのか。

「で、エッチはしたの?」

「え、エッチ?」

「早めにしといたほうがいいわよ。このおっぱいでか女に彼の童貞取られないようにね」


「あっ、たしかに」


「確かにじゃねえよ!」


 怒りを露わにした秋月。それに大笑いするふたり。

 ふざけやがって。あとで怒ってやる。

 そう、思いながら温泉を出た。


 ◇


 一人部屋で俺は畳の上に布団を敷いて、眠っていた。

 すると、誰かがずかずかと布団にもぐってくる。


「ん?」


 俺は振り返ると、顔が上気した大竹だった。


「えっ‼」

「しぃ」

 大竹が唇に人差し指をあてる。静かにしろということなのだろう。

「みんな、寝たから」

「……そう、なのか」


 まさか、大竹は期待してるのか。その、エッチとやらに。

 俺は大竹の茶髪を撫でる。優しく、それでいて俺は興奮を感じていた。

 そして俺は彼女に口付けした。


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