第33話 ボルネオでの叙勲とご褒美

 そういう状況にあるにも関わらず、海賊興産は約束の500億円の入金を済ませたと『直人マネジメントコーポレーション』に伝えてきた。


 ちょうど、スイスで処理を行っていた海賊興産の花村さんが途中のボルネオにより、俺たちと面会をして直接知らせてきた。

 アリアさんとかおりさんが対応をしていたが、入金の確認後、正式に契約が効力を発する。



 この頃になると世界中の市場関係者や経済官僚などの人たちは大忙しなのに殿下をはじめアリアさんたちは一段落をしたのか余裕が出てきた。


 花村さんを西館にて接待をしたあと空港に見送った。

 ちょうど日本にいるウサギさんチームとリスさんチームとの入れ替えもあり、日本へ自家用機を出すので、これで花村さんを送ることを提案したら、喜んでいたのだが、会社側からの許可が降りずに泣く泣く商業ラインでの帰国することになったようであった。


 空港で花村さんを送ったあと、ちょうど日本からの乗り継ぎ便で到着した人たちがロビーに出てきた。


 その中でひときわ目立ったのが、美少女ばかり30人くらいの集団で、俺でも知っている今日本で大人気のアイドルグループである談合坂32の一団だ。

 空港警備員にガードされるように空港の車寄せに止めたるバスに乗り込んでいった。


 俺はそのバスにも覚えがあった。

 最初にボルネオに着いた時に乗せられたのと同じバスだった。

 といことはあのバスは王室関係のバスだ。


 俺は何か引っかかるものを感じるも、そのまま皇太子府西館に帰っていった。


 西館に戻ると西館玄関ホールには皇太子のハリー殿下がニコニコした顔で俺を待っていた。


「ハリー殿下。

 なぜここに」


「直人を待っていたんだよ。

 やっと、直人にお礼ができる。

 準備が整ったようだから、これから俺と一緒に王宮に行くぞ」とハリー殿下自ら俺の手を取り拉致するかのように用意していた車に押し込んだ。

 車は躊躇することなくそのまま王宮に向かった。


 俺が王宮に着くとすぐに侍従たちに囲まれ、別室に連れて行かれた。

 謁見用の服に無理やり着替えさせられ、ハリー殿下に連れられて、陛下との謁見に無理やり同行させられた。


 俺自身はハリー殿下のおまけと考えていたようだが、今回の謁見は俺が主役であった。


 陛下の前で、俺はハリー殿下の真似をしてどうにか体裁を整えているが、俺自身既にアップアップの状態だ。

 隣でハリー殿下が小声で指示を出してくれるが、全て英語なので、正直つらい。


 式が進み俺が陛下の前に呼び出されると、ボルネオ王国の侍従長より、勲章を授けられた。


「此度の直人殿の働きにより、我がボルネオ王国は救われた。

 また、国際情勢が緊張を増す中、我が王国は大国に対しても面目を損なわずにいられてるのは、ひとえに直人殿をはじめお仲間の尽力があったればのことと理解している。

 これら全ては直人殿の我が国への献身と感謝しておる。

 よって、外国人には珍しいことなのだが、我が国最高の勲章の授与となった。

 誠感謝しておる。

 また、今後も変わらぬ献身を期待もしておるぞ」


 陛下のお言葉も横に居るハリー殿下が英訳して俺に教えてくれており、今回呼ばれた趣旨をこの時になってやっと理解したようだ。


 この後陛下主催の晩餐会に参加を命じられ、やっと別室に下がることを許された。


 別室ではアリアさんとかおりさんが待っていた。

「おめでとうございます」

「おめでとうございます。

 直人様。

 これで二つのタイトルを得ましたね」


「二つのタイトル?」


「そうです。

 ここボルネオ王国ではスレイマンと違って貴族はおりません。

 王室かそれ以外かという区別しかありません。

 直人様は、最上級の勲章を得たことで、王室待遇といいますか、それに準ずる待遇を約束されたようなものだそうです」


「王室に準ずるね~。

 でも、今だってそれに近い扱いを受けていなかったっけ」


「そうですが、それは皇太子府だけのことで、これからは王国全土で同じ扱いを受けます」


「これは直人様のお手柄に対しての報奨です。

 直人様がご自身の人脈を使っていなければあれほど早期には発覚しませんでしたし、その後の対応もあれほどスムーズにはいかなかったでしょう。

 直人様は十分に誇れることをなしたのです」


「誇れることをね~~。

 ま~~いいか。

 もう帰って食事でもしようか。

 お腹がすいてきたよ」


「え、何を言っているのですか。

 これから陛下主催の晩餐会ですよ。

 直人様は主役ですから欠席は許されません。

 ですのでこれに着替えてください。

 お手伝いしますから」

 と言われ、直人にタキシードを渡してきた。


 今来ている服とあまり変わらないのだが、直人は言われるがまま着替えた。

「そう言えば、アリアさんたちも今日は随分おめかししているけど、王宮に来るためなの」


「いえ、晩餐会には直人様と同伴しての出席が認められておりますから、ご一緒させていただきます」


「アリアさんが言っているのは間違えではないのですが、殿下がアリアさんたちにも感謝しており、今朝命じてきたのです」


「命じられればね。

 でも、僕にとっては嬉しいかな。

 勝手も知らない食事会って不安だものね。

 それに言葉がね。

 かおりさんが通訳してくれるでしょ」


 そうこうしているうちに侍従が直人たちを呼びに来た。


「直人様、ご準備がよろしければ会場に案内させてください」

 俺たちはその侍従に連れられ、言われるがまま会場に案内された。


 さすが主賓扱いだけあって陛下の隣に座らされたが逆側にかおりさんが座ってくれた。

 これは俺のことを気遣っての措置だろう。

 この晩餐会も陛下の個人的なものの扱いでかなりこじんまりとして、形式にはとらわれないので安心してくれと陛下自らおっしゃってくれた。


 しかし、俺が一番気になったのが俺の正面に座った日本人だ。

 なぜここに日本人と思っていたが、晩餐会が始まってしまい聞くことができなかった。


 俺の疑問は晩餐会が始まってすぐに解けた。

 陛下がその日本人を紹介してくれた。


「直人殿、この度は本当にありがとう。

 感謝してもしきれない。

 直人殿に何かしら報いたちと考えていたのだが、あいにく我がボルネオ王国にはスレイマン王国と違って奴隷なるものがいないので、奴隷を授けて報奨とすることができない。

 友好国であるスレイマンに対して依頼もできなくはないが、綺麗な女性なら我国でもどうにかなると思い、この者に来てもらった。

 この者は日本で芸能事務所をやっている吉井と申す者だ。

 古くから日本での彼の事業を資金面で応援してきた関係で、色々と便宜を図ってもらっている。

 今日は吉井に頼み直人殿を心ゆくまで歓迎したいと思っている」


「日本で、『バニーガールず』の会長をしております吉井と申します。

 本郷様にはこれからも陛下ともどもお世話になるかと、今日は我が事務所の精一杯のおもてなしを準備させておりますので、ご堪能ください」


「これはご丁寧に、本郷直人と申します。

 陛下より偶然から過分な評価を頂きましたが、これもなにかのご縁なのでしょう。

 これからもよろしくお願いします」


「私は、直人様の秘書を務めておりますかおりと申します。

 これからは、このご縁を大切にして行きたくよろしくお願いします」と俺とかおりさんが日本語で吉井さんに挨拶を交わして、陛下を交えて英語で会話を楽しみながら食事を勧めた。


 2時間ほどで晩餐会は終わり、参加者は三々五々に会場をあとにしていった。

 しかし、俺はまだ陛下に捕まっており、陛下と吉井さんの3人で侍従長に案内され、王宮奥の部屋に向かった。


 案内された部屋は、かなり広かったが、特徴はそれだけでない。

 毛足の長い絨毯が一面に敷かれており、床がフカフカなのだ。

 それに程よく散らばってこれも肌触りの良さそうなクッションが置かれている。


 何よりこの部屋を特徴づけているのが奥中央に一段と高くなった場所があり、そこが十分な広さがある。

 早い話がステージのある部屋のだ。

 それも寝転がってステージで演じられるものを鑑賞できるような部屋だ。


 王室の方がプライベートで楽しむために作られているのだろう。


「本郷様、こちらがよろしいですよ」

 と吉井様に案内された場所はステージ真正面でそれもかなり近い場所だ。

 大迫力でステージを楽しめそうだ。

 それにしてもこの吉井会長はこの場所に慣れているようだ。

 決してここが初めての場所じゃない。


 直人は案内されるままそこに直座りをして待った。

 吉井会長と陛下は少し離れた場所で座っている。


 3人がその場に座ると部屋の明かりが暗くなった。

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