第6話 俺目当てにめちゃくちゃ女子が集まる

 その日の放課後から俺の茶道部での活動は始まった。

 俺は初めての部活ということもあって、放課後すぐに部室にやってきた。


 中には静香が1人でいた。


「お早いですね、優馬くん」


「流石に初めての部活だしね」


 それから、着付けしてもらわないといけないし。

 俺の着付けで部活のスタートが遅れても申し訳ないってことで、早めにやってきたんだけど。


「まだ人いないんだね」

「そもそも茶道部って、廃部間近ですからね。新入部員もなかなか来ないんですよ」


 諦めたような顔をしていた。


「ほら、地味でしょ?茶道って、葉っぱからお茶作って飲むだけなんで」


 まぁ、地味だよな。

 俺も静香がいなかったら足を運ぶことなかっただろうし。


 と思っていたのだが……。


 ザワザワ。


「外が騒がしいようですね?」


「部員が来たんじゃないの?」


「こんなに大声になるくらいの部員いないんですよねー、実は」


 静香は俺の着付けを終えると、道場の入口に向かっていった。

 扉を開けると、そこには沢山の女子生徒がいた。

 目線は俺の方に集まっていた。


「あの人じゃない?茶道部に入った新入生」

「エッチすぎますぅぅぅぅ」


 そんなことを言いながら女子生徒が中に入ってきた。


「お、お待ちを!」


 静香の静止の声も虚しく、大量の女性徒が中に入ってきた。

 その数10人くらいいるだろう。


 静香は慌てた様子で帰ってきて俺を守るように立っていた。


「離れて、とりあえず落ち着いてください。エッチなのは分かりますが、ここは学園内。秩序は守ってくださいね?」


 その声でやがて落ち着きを取り戻していく女子生徒たち。

 しかし、1人が声を出した。


「佐渡さん、茶道部に入部したいんです」


 その声が皮切りになった。

 実はこの大量の女子生徒たちは全員が入部希望者だったらしい。


 そのあと、静香はひとりひとりから入部届を受け取っていた。


 女子生徒たちがみんな、部活を始めるために着替えを始めていた。

 その間暇なので俺は静香と会話。


「信じられませんね。一日でこれだけの入部希望者が集まるなんて。いったい何があったんでしょう?」


 その時だった。


「部長、ごめーん遅れたー」


 開け放たれた扉からひとりの女子生徒が現れた。

 どうやら、部員らしい。


「はぁ、酷い目にあったよー。作動部について聞かれまくりだったよー」


 その女子生徒は赤髪の女の子だった。

 すごい、ド派手な髪色。


 中に入ってくると俺に目を向けてきた。


「うわっ、グルチャで見た通りだ。エロすぎ、しかもイケメン?!」


 さっそく、俺に話しかけてくる。


「普段はサボるんだけど見に来てよかったよー、眼福眼福ー」


「杏奈。ひょっとしてこの騒ぎはあなたのせいですか?」


 杏奈と呼ばれた赤毛の女の子は部室の中を見た。

 ようやく気付いたようだ。


「うわっ……まじか、こんなことになるなんて」


「なにかしたのです?」


「あっ、いや。それがさ。送られてきた写真があまりにもエロかったから友達に見せたんだけど、不味かった?ごめん!」


 パン!

 両手を音が鳴るくらい叩いて謝ってきた杏奈。

 ついでに頭も下げてる。


「優馬くん、どうしますか?」

「俺は別に気にしないよ?」


 なんで俺が気にする必要があるんだろうか?


 早い話、俺は承認欲求が満たされてるしぶっちゃけどうでもいい。

 俺はこんなに多くの女子に囲まれて気分を悪くするような男では無い。

 むしろ、気分がいいくらいだ。 逆にこんだけちやほやされて機嫌悪くなる奴いるのだろうか。


 そのとき、新入部員の女子たちが着替え終わったようで集まってきた。


 スマホを手に持っている子もいる。

 なんでスマホ持ってるんだろう。


「優馬くん、ちょっと、写真撮っていい?エロカッコよすぎるよ」

「優雅にお茶を注いで欲しいなぁ。ホーム画面に設定したいんだー」


 そんなことを頼んでくる。


(あー、俺の写真撮りたいのか)


 にこっと笑顔を浮かべる。


「もちろん、いいよ」


「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!!」」」


 そういうわけで話し合いの結果。

 俺がお茶を作ってるところをみんなに写真に撮ってもらうことになった。


 とは言え、茶道については分からないことは多い。

 そのため静香にお茶の作り方とか教えてもらいながら活動していった。

 あちこちからパシャパシャと写真を撮る音が聞こえてくる。


 前の日本では写真を撮られたことなんてなかったのに。


(うぅ、目立ってるせいで緊張するな。)


「優馬くんかっこよすぎるよぉ……」

「クールかっこいいっ!甘い言葉囁かれながらずこばこヤリまくりたい!」


 どれくらい時間が経過しただろうか。

 初めは写真を撮られることに緊張してたけど、だんだん慣れていった。



 数時間後、その日の部活動は終わることになった。

 ちなみに、活動内容は俺がひたすらお茶作ってるところをパシャパシャ写真撮ってただけ。

 途中から杏奈と静香まで混ざり出して俺以外お茶作ってなかった。


 茶道部とはいったいなんなのかを問われる一日だったが、些細な問題かな。


「さて、今日の活動はこれで終わりですよ」


 静香が部活動の終わりを宣言。

 みんなでユニフォームから制服に着替える事になっていた。


 とうぜん、俺も素肌を晒すことにもなるんだけど。


「優馬くん、動画撮っていい?」

「私も撮りたい。男の人の素肌初めて見るかもーーーーー」


 俺はにっこりと答えた。


「いいよ」


 答えるとみんな、動画を回し始めた。

 みんな、満足していた。


 前は俺の着替えなんか撮る人いなかったのに、貞操逆転世界はすごいなー。


 って思ってたんだけど、静香に声をかけられた。


「優馬くん、あんまり甘やかすのはいけないと思います」

「そうかな?」

「はい。こういうのはどんどんエスカレートしますから」


 うーん、それもそうか。

 どこかで線引きは必要か。

 流出とかしたらちょっと嫌だしね。


「ごめん、みんな胸が痛いんだけどやっぱ今の無しにしてくれる?」


「あうぅ……」

「まぁ、仕方ないよね。裸だもんね」


 みんな聞き分けが良かった。


 その代わりに俺はみんなにこう言ってみることにした。


「みんなのこと愛してるよ。ありがとう、聞き分けがよくて」


「「「きゃぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁぁあ!!!!王子様ぁぁあぁぁぁぁ!!!」」」


 今日一の黄色い歓声が上がっていた。

 まじで、アイドルになったみたいだなー。


 そのあと、今日のところは新入部員たちは満足して帰って行った。


 残されたのは俺と静香と杏奈。


 静香は今新入部員募集してませんと、いうポスターを作っていた。

 もちろん今日の新入部員大襲来を受けての対策だ。

 部室が狭いのでこれ以上部員が増えられても困るということだった。


 で、今部室の中にいるのは俺と杏奈だけ。

 杏奈はさっきからチラチラ俺の事を見ていた。


「なに?どうかしたの?」


「べ、別になんにもないよー」


 嘘つけ。

 そのいい方は絶対なんかあるだろ。

 

 ひょっとして、「やらせろ」とか言ってきたりするんだろうか?

 この子髪の毛赤いし、制服も着崩してる。ヤンキーみたい(違ったらごめんだけど)


(これは今から逆レされちゃったりして。ワクワク)


 俺もそろそろ逆レくらいされそうじゃない?

 むしろ、逆レしてほしいくらい。

 せっかく逆転世界に来たんだし。

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