第1話 和歌山県串本町に転生

 コカ・コーラの1.5リットルビンの首を振りながら、青年は首を左右にかしげながら、考えていた。ビンが揺れるたびに、100円玉貯金の100円玉がジャラジャラと、ぶつかりながら音を立てる。


 「大家さんへの土産には、無難な物がいいな。さてどうしたものか。くるみ餅がいいか、 ゆずもなかにするべきか。


おすそ分けが自分にも回ってくる事まで考えれば大好物の、くるみ餅も外せない。

うーん。なやむ、本当になやむ。」


 下宿先の大家おおやさんに持って行く、和歌山土産を何にすべきかで時間を浪費する、この人物こそ、この物語の主人公にして一度は死んでしまった、もと地球の引立万有ひきたてばんゆうだった。


 彼は、必死の受験勉強の末に、ついに名門大学として有名な大稲おおいな大学に合格。


 晴れて、異地球、和歌山県串本町の民宿『引立屋ひきたてや』を離れ、工業の中心地にして、日本一の人口を誇る、大阪へと明日旅立つのだ。


 彼は、部屋を見渡した。見慣れた光景ではあるが、思い出の詰まった部屋をしばらく離れるのは、やはり寂しさが、つのるようだ。


 しかし、この部屋は何かが、おかしい 。


 我々の目で見ると、という事になるのだが、

2020年代にもかかわらず。


 ペットボトルの代わりに、ガラス製1.5リットルビンが、今だに使われている。


 プラスチック製品も有るが、不透明でペコペコした物が多く、【植物由来プラスチックですので水分に注意】と注意書きが書いてある。


 カーテンや衣料品も、全てが化学繊維ではなく、木綿やウールの自然由来の繊維がほとんどだ。


 窓から見えるはずのアスファルト道路は、レンガ製の舗装路だ。


 一つ、一つ書き上げていると、きりがない。

 

 ここは、太陽系神が、地表作成を担当した異地球。石油製品が貴重な世界なのだ。


 彼は、お小遣いを奮発ふんぱつして購入した貴重な石油製品の、透明ビニール袋をうっとりと眺め回した。


 「もったいないが、必要な時は、いさぎよく使ってしまおう。」


 言うやいなや、彼はベットの引き出しを抜きだした。


 服を取り出し、引き出しの底板に開けてある小さな穴に針を差し入れた。

 

 どこで付けた知恵なのか、なんと!


 底板が跳ね上がった。二本の電極の間に、金属製の針を、はさみこむ事で、電気が通電しロックが解除され、バネの力で底板が跳ね上がる仕組みをほどこしたのだ。


 もちろん、証拠隠滅にエロ本を発火させるような装置など付けていない。

【それを もやすなんて とんでもない!】


 そこには、彼の秘蔵エロ本コレクションが、並べられていたのだ。


 彼は、秘蔵エロ本たちを、一冊づつ頬ずりしながらビーニル袋に、丁寧に収納し、しっかりと空気を抜き、麻袋で梱包した。


 続いて、ベットの引き出し底板を元通りにし、明日持って行く服を取り分けた後、秘蔵エロ本入り麻袋を一時的に収納し、残った服を上にかぶせ、ベットを元のように戻した。


 ゴミが入っているように見せかけるために軽く丸めた新聞紙を入れた、ゴミ捨て用の麻袋を左手に持ち、物置小屋にあるシャベルを右手に持ち、庭へと進んだ。


 庭に出て、作業中に見つかった時にも大丈夫なようにゴミ袋を横に置いて、穴を掘る。

 

 掘り終わるやいなや、フェイクゴミ袋を、穴の横に置き部屋に戻り、お宝を壁にぶつけない様に慎重に運ぶ。


 無事、穴に埋めることができた。もちろん土の色で気づかれないように、周辺の土も同じ色になるように浅く掘っておいた。

 

 こうして、彼の1日は、ほぼ終了した。


 こうゆう事に関して、彼は努力を惜しまない人間なのだ。


 後は、ゆったりと温泉に入り、ぐっすりと眠って、明日は蒸気機関車で大阪の天王寺駅へ、レッツゴー!。


 











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