第42話

「あっ、リリカ様。お戻りになられたのですね。実は昼すぎに王太子殿下がこちらに来られました」

「あら、レイリック様が?」

何かご用事だったのかしら。


リリカはレイリックのところにすぐに向かった。レイリックの執務室の前に控えていた騎士はリリカを見ると、すぐに中に声を掛けた。許可が下り、扉が開いた。

「レイリック様、私に何かご用でしたか?」

「いや、特に用はなかったんだけどね」

「?」

「それより街に出掛けたって聞いたけど」

「はい。楽しかったですわ」

「……そう。今度は僕と一緒に行かない?」

「えっ。ですがお忙しいのでは?」

「そのぐらいの時間なら作れるよ」

「でしたら是非ご一緒させてください」

レイリックは満足そうに頷いた。

「あの、実はお願いがあるのですが……」

「珍しいね。なんだい?」

「そのっ、お祭りに行きたいのですわ!!」

「お祭りというと、もしや豊穣祭のことかな?」

「はい。レイナに女性同士ではダメだと言われてしまって」

「うん。そうだね。ちゃんと言ってくれて良かったよ」

「どうして、ダメなのでしょうか?」

「豊穣祭に一人で参加するってことは恋人も婚約者もいないってことを指すんだよ」

「ああ〜、なるほど」

「確か、明後日だったね。いいよ。僕と一緒に行こうか」

パアッ

「ありがとうございますっ、レイリック様」

リリカは珍しく表情を崩し、嬉しそうな笑顔を向ける。


っ眩しい!! そして、可愛いすぎるっ!!

レイリックはリリカの笑顔を見て、悶え死にそうになっていた。しかし、流石は王太子とでも言うべきか決して表情を崩さない。


「ではお二人ともお忍び用の服装で参加されてくださいね。身分がバレると色々面倒なことが起きるでしょうから」

「分かりました」

「そうだ、リリカ嬢。もうすぐ僕の弟が留学から帰って来るんだ」

「弟さん? あっ、第2王子殿下のこと、ですね」

どんな方だったかしら。申し訳ないけどお名前すら思い出せないわ……。っていうか、一切記憶にないのよね。もしかして、お会いしたことない?

「ふふっ、覚えていないって顔だね」

「申し訳ありません……」

「いや、5年間も留学していたからね。それで帰って来るってこの前連絡があったんだよ」

「そうなのですね。どのような方なのですか?」

「留学中に色々な国に行っては必ず外交を成功させてる優秀な弟だよ」

「そんなに凄い方なのですね」

レイリック様がここまで仰るなんて余程優秀なのね。

「じゃあ、明後日楽しみにしているよ」

「私も楽しみですわ。ではこれで失礼いたします」

「ああ」

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