第215話 またしても何も知らない宵闇ヤミさん(28)
配信開始時刻の午後8時を迎え、宵闇ヤミが待機してくれていた1万人近いヤミんちゅ達に挨拶する。
「こんやみ~。今日は
【異常なし!】
【機材にかかった費用の足しにしてね (備品代:5,000円)】
【金ならある (備品代:10,000円)】
「音のチェックありがとう。スパチャもありがとね」
機材の変更とは言ったが、実際のところはデーモンズソフトから使えと言われた機材に変更しただけなので、宵闇ヤミが音のチェックをしているだけでスーパーチャットを貰えたのは棚から牡丹餅だった。
ヤミんちゅ達に自分の声がちゃんと届いているとわかれば、宵闇ヤミはそのまま配信を続ける。
「今夜はA国とC国、R国の要請を受け、日本政府がデーモンズソフトに3ヶ国の代表者を鍛えてカードを渡してほしいと申し入れて来たから、彼等がどんな風に鍛えられているのかヤミが解説していくよ。良かったら#UDSニュースで拡散よろしくね~」
【拡散と高評価は任せてほしい。それはそうとヤミヤミ、チャンネル登録者数90万人突破おめでとう! (ご祝儀:10,000円)】
「えっ、ちょっと待って? 今朝はまだ88万人だったよね!? なんで!?」
今朝の朝活配信では88万人になったばかりだったというのに、確かに現時点で登録者数を確認したら90万人を突破していたものだから、宵闇ヤミは驚いた。
大手のVTuber事務所ならマネージャーがいて、登録者数の動きはチェックしているかもしれない。
しかし、今のデーモンズソフトは獄先派のせいで大忙しだから、宵闇ヤミが配信の準備中に登録者数が90万人を突破したことに気づけなければ、このようにサプライズのような状態になってしまう。
【またしても何も知らない宵闇ヤミさん(28) (愉悦代:10,000円)】
「赤スパで年齢表示するの止めてくれる?」
【鬼童丸を30歳までに落としたいよね】
「そこは絶対に大丈夫。年内に落とすから」
ヤミんちゅ達のスパチャ芸にツッコミを入れつつ、宵闇ヤミが鬼童丸を年内に落とす宣言をすればコメント欄はざわついた。
それでも、今夜の配信のメインは雑談ではないので軌道修正する。
「本題に戻るよ~。ヤミは今日からUDSをプレイするA国とC国、R国の代表者達がどんな風に鍛えられているのか解説するよ。ちなみに、彼等のために会社は新たな師匠キャラを用意したの。順番に紹介するね」
配信画面はニューススタジオであり、宵闇ヤミはUDSとそっくりな衣装を着たままキャスターをしているのだが、配信画面内の画面に久遠達が扮する師匠キャラのビジュアルと簡潔な紹介文が載っていた。
久遠が扮するのはマルオというA国担当の男性キャラクターであり、使役する従魔はドラメット。
徹が扮するのはヒラクというC国担当の男性キャラクターであり、使役するのはドッペルタイタン。
寧々が扮するのはムツミというR国担当の女性キャラクターであり、使役するのはエッツェルン。
ドッペルタイタンとエッツェルンだが、これらは徹と寧々がそれぞれUDSで
ドッペルタイタンは影の巨人と呼ぶべき見た目で、大きさの割に陰に潜り込んで動いたりトリッキーな動きができる。
エッツェルンは権力争いに負けて地獄に落とされた天使のなれの果てで、地獄の力を借りて堕天使として強くなったという設定があり、タナトスに似たアビリティも使える。
それはそれとして、久遠達は普通に師匠キャラを操作しているが、A国とC国、R国の代表者達には師匠キャラが最新のAIを積んだNPCと説明されており、この配信においても宵闇ヤミがそのようにヤミんちゅ達に説明した。
【俺達のNPCと違って神の名前じゃないな】
【普通に日本人っぽくて草】
【よく調べられててすごいね (調査代:1,000円)】
「ヤミもこれ以上は内緒って言われてるから、早速かく師匠キャラの視点で録画されたVTRを見ていこう。最初はA国から見ていこうかな」
宵闇ヤミがA国から見ようと言ったのは、久遠がA国の代表者に色目を使われていないか気になったからだ。
代表者はパトリックとヘンリエッタの2人で、宵闇ヤミが危惧している通り女性の代表者がいた。
目からハイライトが消えないように注意していれば、すぐにVTRが流れ始める。
久遠がマルオのアカウントを使って指導するVTRを見て、コメント欄にいるヤミんちゅ達が悪ノリしていく。
【私が貴様等の師匠であるマルオである。話しかけられた時以外は口を開くな。口でクソ垂れる前と後に“Sir”と言え。わかったか、蛆虫共! (演説代:5,000円)】
【Sir, Yes Sir!】
【Sir, Yes Sir!】
アテレコしているようなコメントと思いたいところだが、パトリックとヘンリエッタのセリフは合っていてマルオの喋っている部分だけ脚色されている。
最初は悪ノリしてアテレコするヤミんちゅ達だったが、ドラメットが【
【このマルオってNPCから鬼童丸味を感じる】
【なんだろう、鬼童丸と違って背景からゴゴゴってオーラを感じるのに鬼童丸っぽい】
【鬼童丸をNPC化したらこんな感じなのか】
(やっぱり鬼童丸のすごさは隠しても隠し切れないんだよね)
宵闇ヤミは思わず顔がニヤケそうになったが、そうならないようにヤミんちゅ達と一緒に驚いている風な顔を画面に表示した。
これは久遠もマルオのアカウントでプレイしている時は気づかなかったのだが、マルオからオーラを感じるのは久遠が舐められないようにとドラクール達が久遠の内部から威圧していたからだ。
数時間しかプレイしていないにもかかわらず、マーモンプやマルファム、バンテヒュージをA国代表者の2人に使役させたマルオの評価はヤミんちゅ達の中でかなり高かった。
「次はC国の代表者達を見てみよっか」
代表者は
だからこそ、C国の代表者達の師匠役は寧々じゃなくて徹になった。
ヒラクがドッペルタイタンで自身の力を見せつけた時の
【教わる者の態度じゃないな】
【C国人は追い詰められてなおプライドだけは高いな】
【無敵の4,000年の歴史を誇る武術でアンデッドモンスターをやっつけて下さいよォ!】
ヤミんちゅ達はヒラクが教える2人の様子を見て、不快に感じる者が少なくなかった。
宵闇ヤミとしてもC国人の態度は歓迎できないけれど、それをデーモンズソフトから貰った仕事の配信で口にするのは何かと不味いから、余計なことを言わないようにしていた。
「最後にR国の代表者達を見てみよっか」
C国の代表者とは反対で、R国の代表者2人はいずれも女性でマリーナとイリーナだ。
最初は鬼童丸に指導してもらえないのかとがっかりしていた2人だが、エッツェルンの力を見せられてNPCですらレベルが高いと判断したのか、それ以来ムツミに従順だった。
【わからせられたんですね、わかります】
【プライドはC国人に比べれば高くないけど鬼童丸の引き抜きをワンチャン狙ってた感がするね】
【命が惜しくないのかね、このR国人達は】
「本当に困った人達よね。ヤミの鬼童丸に色仕掛けを使用なんて万死に値するって言うのに」
宵闇ヤミの目からハイライトが消えたため、ヤンデレスキーなヤミんちゅ達が嬉々としてコメントを投稿していく。
それから少ししたら落ち着いて、宵闇ヤミは仕事モードに戻る。
「オホン、UDSニュースはまた3ヶ国の代表達に動きがあり次第配信するよ。明日はアンデッドモンスターが出て来ないよう祈ろうね。それじゃあ、おつやみ~」
恐らく明日も配信することになるだろうが、3ヶ国の代表達の動きに目ぼしい物がなければ毎日配信するとも限らないため、宵闇ヤミはUDSニュースが不定期であると告げた。
配信が終わったら、久遠との絡みが不足している自覚があったため、宵闇ヤミから頭をリセットした桔梗が久遠の部屋に突撃するのだった。
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