第206話 面白そうな話をしてるわね。私達も混ぜなさい
各々エリア争奪戦を終えた後、鬼童丸達は冥開にある都庁に集合した。
「悪魔と戦った人プチョヘンザ」
「「「イェア」」」
宵闇ヤミとヴァルキリー、リバースが挙手したことを確認してから、鬼童丸は話を再開する。
「ということだけど、首謀者は元中立派でデーモンズソフトで働いてたコロンゾンだった。俺達にハンデ戦なら勝てると思ってたようだが、全員問題なく蹴散らせたらしいな」
「ちょい待て。その温度差のある喋り方はなんだ? 風邪ひくだろうが」
「大丈夫だ。今のリバースなら風邪をひいた時にトリカブトが看病してくれる」
「クッ、ここぞとばかりに揶揄いやがって」
自分が今まで鬼童丸を揶揄って来たから、リバースは悔しそうに唸る。
しかし、リバースも逆に鬼童丸のことを揶揄うネタが現在進行形で残っているので、自分が揶揄えるタイミングをおとなしく待つ。
「鬼童丸が風邪をひいたら私がつきっきりで看病するから安心して良いよ」
「看病に定評がある私がいるから任せて。鬼童丸は寝てるだけで良いの」
すぐに宵闇ヤミとヴァルキリーが張り合うが、そこにドラクールが自分の意思で現れてこの話に参加する。
「マスターは鬼の血を引いております。であれば、私の【
「マジか。それは助かるわ」
ドラクールが論理的に自分の有用性をアピールすれば、鬼童丸も【
看病してくれるのもありがたいけれど、寝込む原因である風邪を治してくれるのが最もありがたいから、感謝するのは当然である。
ドラクールの自己アピールを聞き、言い争っていた宵闇ヤミとヴァルキリーは悔しがる。
「看病どころか治療できるのは勝てない…」
「ドラクールが本格的に私達と張り合って来てる」
このまま放置していると話が違う方向に押し流されてしまうので、そろそろ鬼童丸は軌道修正する。
「風邪と看病の話は置いといて、みんなを集めたのは意見が聞きたいからだ。俺達以外のプレイヤーをどうにかして育てたい。そうすれば、獄先派との戦いで少しでも楽ができる」
「まあ、全て俺達が戦う理由はないわな」
「それこそ宵闇ヤミの出番じゃない? ヤミんちゅ達に頑張れって宵闇ヤミが言えば頑張るんじゃないの?」
「それだけで私達が楽できたら苦労しない。でも、ヤミんちゅ達を育てられればかなりの戦力になると思う」
現在、師匠キャラでまともに動けるのは鬼童丸の師匠であるタナトスだけだ。
宵闇ヤミの師匠であるヘカテー、ヴァルキリーの師匠であるセケル、リバースの師匠であるモトは獄先派との戦いで負傷して療養中で、それ以外のプレイヤーの師匠達は戦死した。
この時点で親人派は苦戦を強いられているから、UDSをプレイしている鬼童丸達以外のプレイヤーには強くなってもらい、リアルで獄先派が出現した時に戦えるようになってもらわなければ手が足りない。
だからこそ、鬼童丸は周りのプレイヤーを育てたいと主張し、他3人もそれについて同意した。
具体的にどう強くするかまでは思いついていないけれど、UDSプレイヤーの中でもヤミんちゅはそれなりの数がいるから、ヤミんちゅを育てるというターゲティングは良い考えだろう。
ヤミんちゅならば、宵闇ヤミのお願いで気合を入れてくれる可能性がある。
折角VTuberという宣伝に丁度良い手段があるのだから、使わなければ損というものだ。
「宣伝はヤミの力を借りるとして、問題はどうやってヤミんちゅ達の従魔を強くするかだな。手っ取り早く強くなるには模擬戦か
「ヤミんちゅ同士の模擬戦はありだと思う。
「素材になるモンスターはガチャかミニゲーム、エリア争奪戦、通常の未統治エリアでの戦闘での勝利で手に入るのよね。ここに来てガチャ頼みってのはどうかと思うけど」
「それな。ガチャは良いアンデッドモンスターが出て来る可能性が低い。これが難点だな」
そんな話をしていると、この場にデビーラとタナトスが現れる。
「面白そうな話をしてるわね。私達も混ぜなさい」
「親人派の戦力増強に関する話し合いだろう? それなら我々も知恵を絞らねばなるまい」
(役割からしたら、デビーラに頼んでみるのが良いのかね? 試しに訊いてみるか)
1つ思いついたことがあったため、鬼童丸はデビーラに訊ねてみる。
「デビーラ、ガチャ大会みたいなイベントって即興で開けない?」
「ガチャ大会? ガチャで強くなろうってこと? ちょっとリスキーじゃないかしら?」
「別にガチャに拘った話じゃないんだ。ヤミんちゅを巻き込んだイベントを開いて、ヤミんちゅを強化したいって思ったんだよ。今はまだ1枚しかカードを渡してないだろうけど、彼等にも遠くない内に2枚目のカードが渡されるだろうからさ」
「なるほどね。だったら、手持ちのカードとガチャで手に入れたカードを使って、アンデッドラボラトリーでの
(それは面白いかもしれない。かなり具体的になって来たぞ)
詳細を詰めた後、デビーラとタナトスはパイモンに協賛の許可を得ると言ってこの場を離れた。
鬼童丸達もそれぞれの役割や進行について確認してから、夕食や風呂等の休憩を取るためにログアウトした。
宵闇ヤミが夜にリスナー参加型のイベントを行うと告知すれば、イベント開始5分前の午後7時55分には200人近くのヤミんちゅ達がレンタルしたイベントエリアに集まっていた。
実際にはUDSをプレイしていないヤミんちゅもいるが、そういった1万人以上のヤミんちゅ達は配信の待機所で配信開始を待っている。
配信開始時刻の午後8時になったら、イベントエリアの照明が全て消える。
そのすぐ後に、スポットライトのスイッチが入って壇上にいる宵闇ヤミに向けられ、彼女がヤミんちゅ達に挨拶する。
「こんやみ~。アンデッドと悪魔の出現するリアルで戦うべく、ヤミんちゅ達も強くなれるイベントを企画したら通っちゃった悪魔系VTuber宵闇ヤミだよ〜。よろしくお願いいたしま~す。今日はゲストが豪華だよ。最初はヤミの愛しの鬼童丸~?」
「どうも、昨日は敵地に攻め込んで一暴れした鬼童丸だ。よろしく」
サラッとコメントした鬼童丸だが、掲示板で鬼童丸がドラクール達を戦わせた動画は広まっているから、英雄がいるぞとイベントエリアも配信のコメント欄もざわついている。
実際、ドラクール達の戦いぶりは戦った者達から見て段違いであり、これがUDSのトップなのかと畏敬の念が向けられている。
鬼童丸がいなかったら心が折れている者もいただろうから、鬼童丸が日本の精神的支柱という役割になっているのは否めない。
「お次は鬼童丸の彼女を自称するプレイヤー、ヴァルキリー」
「誰が自称よ。私が鬼童丸の彼女だってことは事実なんだから」
「別のゲーム限定でな」
「ほら」
宵闇ヤミが勝ち誇ったようにドヤ顔を披露すれば、ヴァルキリーはぐぬぬと悔しがる。
鬼童丸としてはリアルではヴァルキリーの彼氏じゃないと言っただけで、宵闇ヤミの彼氏であると公言した訳でもないから、宵闇ヤミがドヤ顔なのはやり過ぎである。
それがわかっているから、愉悦勢のヤミんちゅ達はイベントエリアの出店で売られていたポップコーンとコーラを口に運んでいる。
「最後のゲストは、青森でアンデッドモンスターの大群と悪魔のマスティマと戦ったリバース」
「こんばんは。被害が少しでも小規模で収まったなら幸いです。リバースです」
青森県民のヤミんちゅもそこそこの数がいるようで、リバースに感謝のスーパーチャットを送るヤミんちゅ達もいた。
こうしてこの配信を見れているのもリバースのおかげだから、共演者のリバースにもスーパーチャットの分配はあるだろうと考えてコメント欄をカラフルにしているようだ。
「はい、という訳でゲストの3人には特別審査員として参加してもらうね~。ということで、今から第一回ヤミんちゅ杯を始めるよ~。配信を視聴してるヤミんちゅ達は#第一回ヤミんちゅ杯で拡散よろしくね~」
宵闇ヤミがデビーラに代わって進行する企画ということで、UDSの見る専であるヤミんちゅ達が拡散し、どんどんこの配信の視聴者が増えていった。
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