第175話 私が仕事で地獄に行ってる間に色々やらかしてくれたようね

 鬼童丸が勝ち過ぎてしまったため、その後の部屋では鬼童丸は自重して観戦モードの参加となり、適宜コメントをするに留まった。


 今日のコラボ配信は短めに終わったから、鬼童丸は先程のワールドアナウンスでミニゲームとして解禁されたアンデッドラボラトリーに触れてみることにした。


 アンデッドラボラトリーでは、本編で使える融合フュージョンの他にもカードのトレードや売却ができるようになった。


 そして、融合フュージョンの組み合わせを他のプレイヤーと競い、デイリーとウィークリーの観点でデーモンズソフトが評価する組み合わせをしたプレイヤーにささやかなプレゼントが贈られる。


 先程のロシアンルーレットもそうだが、従魔枠がいっぱいになってからカードが貯まる一方だったので、鬼童丸はこの機会にあれこれ融合フュージョンしてカードリストの圧縮を図る。


 オチタイショウとデスナイトの組み合わせでデスジェネラル。


 リビングモンクとトノサマダンサー、ヘルボマーの組み合わせでアツモリ。


 デスジェネラルとアツモリの組み合わせでリベンジジェネラル。


 ロトンマッシュアーミーとマスクドグール、グレムリンゾンビの組み合わせでヘルキャリア。


 ガーゴイルとデュラハンドレイク、スケリトルワイバーンの組み合わせでノーライフドレイク。


 一気に5連続で融合フュージョンした結果、そのままだったら使い道がなかったアンデッドモンスターを優秀な融合フュージョンの素材かそこそこの戦力に仕上げられた。


 5回の融合フュージョンではノーライフドレイクが83点で一番評価されていたが、これで終わるような鬼童丸ではない。


 (ノーライフドレイクを融合フュージョンするには素材が足りない。他のアンデッドモンスターを融合フュージョンしよう)


 たった今誕生したヘルキャリアとリベンジジェネラルは、オッドバディモンと組み合わせることでキャリアノーブルになった。


 その上、キャリアノーブルとウルピールを組み合わせることでウルキュリアが誕生した。


 ウルキュリアは99点の組み合わせだと表示されたため、あと1点足りなくて惜しかったけれどこれ以上ウルキュリアと融合フュージョンできるアンデッドモンスターはいなかったから、これで良しとするしかあるまい。


 新たに誕生したウルキュリアの能力値はアンデッドラボラトリーでも確認できるため、鬼童丸は視界にウルキュリアの能力値を表示する。



-----------------------------------------

種族:ウルキュリア Lv:1/100

-----------------------------------------

HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000

STR:6,000(+200) VIT:6,000

DEX:6,000 AGI:6,200(+200)

INT:6,200 LUK:6,000

-----------------------------------------

アビリティ:【追尾種弾ホーミングシード】【乱射刺突ガトリングスタブ

      【菌病爆弾イルネスボム】【茨牢獄ソーンプリズン

      【人狼化ワーウルフアウト】【恐怖咆哮テラーハウル

装備:疾細剣ロンド

備考:なし

-----------------------------------------



 ウルキュリアはウルピール同様に女型のアンデッドモンスターであり、野性味を感じられる吸血鬼だ。


 犬歯が尖っていて吸血鬼らしいだけでなく、レイピアの疾細剣ロンドを腰に携えていて素早い刺突も【乱射刺突ガトリングスタブ】で放てる。


 【追尾種弾ホーミングシード】や【菌病爆弾イルネスボム】、【茨牢獄ソーンプリズン】といった植物を用いた魔法系アビリティも使えるから、STRと比べてINTの方が能力値は高い。


 【人狼化ワーウルフアウト】で人狼としての本来の姿になれば、STRとAGIの能力値が上がって疾細剣ロンドを更に活かした攻撃ができる。


 【恐怖咆哮テラーハウル】を足止めとして使えるから、動きの鈍った敵を攻撃の数で圧倒するのがウルキュリアを使った戦い方だ。


 (また女型なんだけど。ヤミがまた何か言って来るだろうなぁ)


 融合フュージョンはここまでにして、鬼童丸は手持ちのアンデッドモンスターのカードをトレードと売却を行う。


 基本的に雑魚モブアンデッドモンスターのカードは売却してネクロに換金するが、そこそこ強いアンデッドモンスターのカードはただ売却するよりも同程度のアンデッドモンスターとトレードした方が良いだろう。 


 カード一覧を整理した結果、鬼童丸の所持金が2,200万ネクロを超えた。


 アンデッドガチャをほとんど回さない上に、無駄遣いもあまりしないせいで各種ブースターを買う以外に使うこともなかったから貯まる一方だったのだ。


 アンデッドラボラトリーでやるべきことを終えたら、鬼童丸は久し振りに宝探しをプレイする。


 相変わらず鬼童丸は難易度選択でハードしか選べないままだが、そんなことは気にしない。


『宝探しに参加させるアンデッドモンスターを1体召喚して下さい』


召喚サモン:ミストルーパー」


 システムの求めに対してミストルーパーを召喚すれば、鬼童丸とミストルーパーは霧がかかった河川敷に転移させられた。


 宝探しの作戦を考える暇なんて与えられるはずもなく、ミニゲーム開始のカウントダウンが表示される。


『3,2,1, Go!』


「ミストルーパー、【霧操作ミストコントロール】で霧を払え。それから【観察眼オブザーブアイ】で宝箱を探すんだ」


 ミストルーパーは鬼童丸の指示に従って霧を払い、その後すぐに【観察眼オブザーブアイ】を発動して宝箱を探し始める。


 宝探しのフィールドはそこまで広くなかったから、ミストルーパーの【観察眼オブザーブアイ】であっさりと宝箱の位置を突き止められた。


 ここまでは順調だったのだが、宝箱の位置を特定した瞬間に霧が再び発生すると共に河川敷の砂利の下からゾンビの大群がわらわらと現れる。


「ミストルーパー、【霧操作ミストコントロール】で霧を凝縮させてゾンビ達の視界を塞げ。その間に目的地に向かうぞ」


 このステージはミストルーパーと相性が良かったから、凝縮させた霧でゾンビ達の視界を塞いでおろおろさせている間に鬼童丸とミストルーパーは宝箱の位置まで移動した。


 宝箱はお地蔵様が抱えるように安置されており、それを見つけることで鬼童丸にシステムメッセージが届く。


『ミッションクリア!』


『ミストルーパーの【霧操作ミストコントロール】と【螺旋水線スパイラルジェット】が【水支配ウォーターイズマイン】に統合されました』


『ミストルーパーが【影移動シャドウムーブ】を会得しました』


 (ミストルーパーが更に応用の利く従魔になったか。良いことだ)



-----------------------------------------

ミニゲーム①宝探し-5(ハード)

-----------------------------------------

クリアタイム:4分33秒

評価:S

報酬:100万ネクロ

   各種ブースターⅢ型×1セット

-----------------------------------------



 ミストルーパーのアビリティが強化されただけでなく、能力値強化アイテムが手に入って鬼童丸はホクホク顔になった。


 ステージ5のハードモードをクリアしたことで、ミストルーパーが強制送還されて鬼童丸もミニゲームのトップ画面に戻されたが、そこに疲れた顔のデビーラが現れた。


「私が仕事で地獄に行ってる間に色々やらかしてくれたようね」


「あっ、デビーラ。お疲れ」


「お疲れってそうじゃない! もうちょっと自重してよね!」


「自重したからドラクールに頼らず宝探しをプレイしたんだが」


「そうだったわね畜生!」


 鬼童丸の言い分はもっともだったから、デビーラはキレつつも自分の誤りを認めた。


 疲れているデビーラを揶揄うのは悪いと思ったから、鬼童丸はデビーラを労う。


「デビーラは本当によくやってくれてると思うよ。タナトスに会ったら、ちゃんとデビーラを甘やかすように言っておくから」


「絶対に履行するのよ。私はもっとタナトスに甘えたいけど、タナトスが恥ずかしがるからあんまりグイグイいけないの。鬼童丸から根回ししてくれれば、タナトスももっと私を甘やかしてくれるはず」


「そんなに大変だったんだな。獄先派の動きは活発なの?」


「獄先派は中立派の残党を甘い言葉で釣って捨て駒にして来るから、あんまり獄先派に損害を与えられてないわ。その分、中立派の残党が消えて地獄は完全に親人派と獄先派の二極化が完了したけどね。鬼童丸、あんたは獄先派から結構睨まれてるから気をつけなさいよ。それじゃ」


 デビーラを見送った後、鬼童丸はUDSからログアウトした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る