第174話 逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ
ミニゲームのトップ画面に戻って来たところで、鬼童丸が提案する。
「俺がこのまま勝ち続けて儲けると申し訳ないから、一旦観戦に回るわ。確か、UDS内でも他のプレイヤー同士の勝負を観戦できたはずだし」
『ぐぬぬ…。悔しいけど言い返せない。ヤミんちゅ達、鬼童丸さえいなければヤミの勝ちだと思うけど勝負する覚悟はある? 次は先着3人まで受け付けるから入って来てね!』
鬼童丸が視界に映ったウィンドウを操作して観戦モードを選択してから、宵闇ヤミの対戦ルームの3つの枠が一瞬で埋まる。
対戦者は黄昏トキとスロッカース、アヴォーキンの3人で決定した。
(スロッカース、こんなところで遊んでて良いの?)
特務零課が遊んでいる場合ではないだろうと思い、鬼童丸はやれやれと溜息をついた。
それぞれのプレイヤーが賭けたカードだが、宵闇ヤミはマダムワイトで黄昏トキはマミーウィザード、スロッカースがスッカラン、アヴォーキンがジェネラルオークゾンビである。
全員の賭ける対象が決まったところで、画面がホラーハウスをコンセプトとするバーに遷移する。
拳銃のリボルバーが自動的に回され、初回の親はランダムでアヴォーキンに決まり、テーブルに出すように指定された文字は北だった。
観戦モードでは好きなプレイヤーの視点で観戦できるから、鬼童丸は宵闇ヤミの視点でロシアンルーレットを見守る。
(ヤミの手札は南が2枚と東、西、北が1枚ずつか。ちょっと厳しいな)
そんな風に考えていれば、アヴォーキンががいきなり2枚のカードを裏向きで出した。
『2枚だ』
『飛ばすねぇ。じゃあ、俺も2枚』
アヴォーキンの次はスロッカースであり、その後は黄昏トキ、宵闇ヤミと続く。
『チェック』
黄昏トキがスロッカースを疑ってチェックと宣言したが、ひっくり返されても2枚の北のカードで正しかった。
『チッ、外した』
黄昏トキは口調を取り繕わない女性プレイヤーであり、自分の判断ミスで拳銃の引き金を引くことになり舌打ちした。
幸いにも1発目は空砲であり、黄昏トキはゲームに残ったままだった。
続いて黄昏トキが1枚カードを出したところで、宵闇ヤミもカードを1枚出す。
「1枚だよ」
そう言って宵闇ヤミが出したのは西のカードであり、最初に少しでも違うカードを減らしておこうと嘘のカードを1枚場に出した。
『チェック』
宣言したのはスロッカースだ。
それによって場に出されたカードがひっくり返され、嘘である西のカードが画面に映る。
『逃げちゃ駄目だ。逃げちゃ駄目だ』
引き金を引いても空砲だったため、宵闇ヤミは初手で死なずに済んだ。
次はアヴォーキンのターンであり、迷うことなく1枚のカードを場に出す。
『1枚だ』
『早過ぎて逆に不自然。チェック』
宵闇ヤミがチェックを宣言したところ、ひっくり返されたカードは東だった。
4分の1の確率で当たりになるのだが、アヴォーキンは不幸なことにその4分の1を引き当ててしまった。
『無念』
それだけ言い残してアヴォーキンが机の上に倒れたため、宵闇ヤミはその様子を見て喜ぶ。
『やった! ヤミがキルした!』
次は宵闇ヤミが親であり、北のカードを出す勝負だ。
一度全ての手札と拳銃が回収され、新たに5枚のカードが全プレイヤーに振り分けられて拳銃にも1発の弾丸が装填される。
(北と東が2枚ずつ、南が1枚か。ヤミがどう仕掛けるかな)
『2枚出すよ』
強気に東のカードを2枚出した宵闇ヤミに対して黄昏トキが動く。
『チェック』
『えぇ!?』
ひっくり返されたカードは東のカードが2枚だったから、宵闇ヤミは拳銃を手に取ってこめかみに向ける。
『私は死なない。私は死なない。ギャアァァァ!?』
6分の1の可能性を引き当ててしまい、宵闇ヤミが賭けていたマダムワイトは机に突っ伏した。
コメント欄では愉悦勢のヤミんちゅ達が喜んでおり、机の味について質問する投稿が次々に投稿された。
結局、この部屋の勝負ではスロッカースが勝利して賭けたカードはスロッカースが総取りした。
『対あり~。スロッカースはクールに去るぜ~』
スロッカースが煽るような言葉を残して対戦ルームから去った後、鬼童丸は宵闇ヤミに追い打ちをかける。
『ヤミ、俺がいないのに勝てなかったね。今、どんな気持ち?』
『鬼童丸によしよしされたい』
『ブレないな。次は俺も参戦するぞ』
鬼童丸が再びゴーギャストを賭け、宵闇ヤミがヘルボマーを賭けたところで次の対戦ルームが開かれる。
参戦枠が残り2人の状態で対戦ルームが開いたけれど、すぐに猫貴族とトニトニートがインして埋まる。
猫貴族はグレムリンゾンビを賭け、トニトニートはデスナイトを賭けている。
全員の賭ける対象が決まり、画面がお馴染みのバーに遷移する。
拳銃のリボルバーが自動的に回され、初回の親はランダムで鬼童丸が選ばれた。
テーブルに出すように指定された文字は東である。
(東が2枚と西が3枚か。賭けに出よう)
「3枚だ」
鬼童丸は西のカードを3枚出した。
嘘だと思われても6分の1を引き当てなければ良いとハイリスクハイリターンな選択をしたのだが、誰もチェックと宣言しなかった。
どうしてそうなったかと言えば、鬼童丸ならこうやって釣って来る可能性もあると宵闇ヤミ達は考えたからである。
結局、宵闇ヤミがカードを1枚出したことで鬼童丸の嘘はそのまま通ってしまった。
(通っちゃったか。それならそれで別に構わないけど)
続いて猫貴族が2枚のカードを出した時、トニトニートが動く。
『チェック』
トニトニートの宣言で2枚のカードがひっくり返されたが、猫貴族は本当に東のカードを2枚出していた。
『俺はこんなところでは死なない! まだ本気を出してないだけ! よぉ~し!』
空砲だったからトニトニートは死なず、鬼童丸の番が来た。
この時点で自分の勝ちは確定しているから、鬼童丸はとても穏やかな表情で宣言する。
「2枚だ」
『『『チェック!』』』
配信を見ているヤミんちゅ達も、流石にこれは嘘だろうと思ってチェックというコメントが続いた。
ところが、ひっくり返されたカード2枚はどちらも東だった。
この瞬間、鬼童丸の手札が0枚になったため、誰も死なずに鬼童丸が一人勝ちした。
『そんなぁ…』
『なん…だと…』
『あァァァんまりだァァアァ』
「ふぅ、強過ぎてごめん♪」
鬼童丸が宵闇ヤミ達を煽った瞬間、ワールドアナウンスが鬼童丸達の耳に届く。
『ロシアンルーレットに死神カードが追加されました』
『アンデッドラボラトリーがミニゲームに追加されました』
(一気に2つも変化が起きたか。何かトリガーでも引いたかね?)
久遠がそんなことを思っていたら、宵闇ヤミが宣言する。
『緊急企画! 死神カードが追加されたロシアンルーレットをやってみよ~!』
宵闇ヤミがそのように宣言すれば、鬼童丸もコラボ配信中なので付き合うことになる。
追加された死神カードだが、通常のカードが白地なのに対して黒地でデスサイズを装備してマントを被った骸骨の背景になっている。
そこに東西南北か中央の文字が書かれており、出した死神カードをチェックされたら全員が特別に2分の1で死ぬ特殊な拳銃の引き金を引かなければいけないのだ。
鬼童丸が三度ゴーギャストを賭け、宵闇ヤミがスッカランを賭けたところで次の対戦ルームが開かれる。
参戦枠が残り2人の状態で対戦ルームが開いたけれど、そこにリバースとトリカブトがインして埋まる。
リバースはトゥームフェンサーを賭け、トリカブトはローズレイスを賭けている。
全員の賭ける対象が決まれば、画面がお馴染みのバーに遷移する。
拳銃のリボルバーが自動的に回され、初回の親はランダムでリバースが選ばれた。
テーブルに出すように指定された文字は西である。
(あっ、来た)
鬼童丸の手札は西が2枚と中央、南、北が1枚ずつだが、西の内1枚が死神カードだった。
『2枚だ』
『ヤミも2枚』
「じゃあ、俺は3枚」
『チェック』
チェックと宣言したのはトリカブトだ。
ここまで複数枚のカードを出す流れだったから、鬼童丸は中央のカードも含めて3枚出したのだが、トリカブトは流石にそんなはずないと思ってチェックと宣言した。
ひっくり返されたカードの中に死神カードが入っていたため、全員の手に特殊な拳銃が渡る。
『ごめんなさい!』
『いきなり!?』
『嘘だろ!?』
3人が引き金を引いた結果、乱数の悪戯でトリプルキルに成功してしまって鬼童丸が連勝した。
この結果には戦犯トリカブトのコメントが続出してしまうのだが、それは仕方のないことである。
鬼童丸は3つの部屋でいずれも勝利して9枚のカードを手に入れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます