第77話 好感度システムあったの!?
タナトスは鬼童丸に近づいて話しかける。
「鬼童丸、私と模擬戦をしよう」
「唐突だな。なんでこのタイミング?」
「理由は2つある。1つ目は鬼童丸が<鏖殺伯爵(冥開)>の称号を得て、これから獄先派に狙われる可能性が出て来たので鍛えておきたいから。2つ目は私の相棒が起きたから、其方のドラクールと模擬戦をさせたいからだ」
「あっ、タナトスの相棒が起きたんだ?」
「ああ。
タナトスが頷いて召喚したのは、青いドレスアーマーとレイピアを装備した眠そうな女型ヴァンパイアだった。
ベルヴァンプの姿を見て、ドラクールは【
「マスター、私の後ろにいて下さい。この者、かなり強いです」
「ん~? アタシ以外にも喋れる
ベルヴァンプは間延びして眠そうな喋り方をしているが、その目はしっかりとドラクールを捉えていた。
大抵の相手なら適当にやっても圧勝できる自信があったが、ドラクールはちゃんと相手をしないと不味いと一目でわかったようだ。
「ベルヴァンプ、私の弟子の鬼童丸とその相棒のドラクールだ」
「ふ~ん」
ベルヴァンプは一瞬で鬼童丸の隣まで移動し、その首筋をペロリと舐めた。
「これは良いものだねぇ」
「マスターから離れなさい!」
「おっとっと~」
ドラクールが武器を振るのをぬらりと躱し、ベルヴァンプは元居た場所に戻っていた。
(速いな。あの口調からは考えられないAGIだ)
首筋を舐められた鬼童丸だが、特に引いたりせずに冷静に分析していた。
これから模擬戦をする相手なのだから、少しでも情報は集めておいた方が良いのでそちらに意識を向けているらしい。
タナトスは相棒がいきなり弟子の首筋を舐めたため、その奇行に対してやれやれと溜息をつく。
「はぁ…。ベルヴァンプ、何をしてるんだ」
「ん~? タナトスの弟子から美味しそうな匂いがしたからちょっと舐めてみた~」
「行儀の悪いことはするんじゃない。軽率な行為で敵を無駄に増やすな」
「は~い」
敵を増やすなとタナトスが告げたのは、ベルヴァンプに対して敵意を向けていたのがドラクールだけでなく宵闇ヤミもだったからだ。
自分だってまだそんなことはしていないのにとブツブツ言っている宵闇ヤミはさておき、タナトスはコホンと咳払いする。
「鬼童丸、仕切り直しだ。今から其方のドラクールと私のベルヴァンプで模擬戦をする。狙いは獄先派からの襲撃に備えるためだ。良いな?」
「わかった」
タナトスからの模擬戦の誘いに応じたことにより、画面が戦闘モードに変わって鬼童丸とタナトスの模擬戦が始まる。
「ドラクール、落ち着いて戦え。【
「かしこまりました」
鬼童丸からの指示を受けてドラクールは動こうとするが、AGIはベルヴァンプの方が高くて先にベルヴァンプが【
その動きはかなり素早く、眠そうな喋り方からは考えられないものだった。
ダメージを負ったドラピールだが、負けじと【
高火力のアビリティであることに加え、
「ふむ。ベルヴァンプがダメージを負うのは久し振りだな。鬼童丸よ、ドラクールをよく育てているな」
「だよね~。アタシもびっくり~」
「そりゃどーも」
油断大敵という言葉があるから、鬼童丸はタナトスとベルヴァンプに褒められても適当に返して戦闘に集中していた。
それはドラクールも同じであり、自分に少なくないダメージを与えて来たベルヴァンプに対して警戒を強める。
「ドラクール、【
「承知しました」
鬼童丸の指示に従って【
しかし、【
本来の【
「喰らいなさい!」
【
どうやら物理攻撃はあまり効かないようで、ベルヴァンプはケロッとしていた。
「流石タナトスの相棒だ。一筋縄ではいかないか」
「当然だ。私が獄先派に目を付けられてもやり過ごせているのは、何も<流浪の隠者>だけのおかげではない。ベルヴァンプがいるから獄先派も手を出せないのだ」
「ドヤァ」
ベルヴァンプはタナトスの言葉を聞き、渾身のドヤ顔を鬼童丸達に披露してみせる。
「ドラクール、【
「お任せ下さい」
やはりAGIでは勝てないから、ドラクールよりも先にベルヴァンプが【
【
(【
鬼童丸がそんなことを考えていると、ドラクールが立ち直ってベルヴァンプに反撃した。
深淵の薔薇が咲き乱れてベルヴァンプにダメージを与えたことにより、両者のHPが半分を下回った。
HPが半分を下回ったことにより、ベルヴァンプが好戦的な笑みを浮かべ始めたのでタナトスが模擬戦を止める。
「ふむ。模擬戦はこの辺りにしておこう」
タナトスがそう言った瞬間、鬼童丸の耳にシステムメッセージが届く。
『鬼童丸が模擬戦にて引き分けました』
『鬼童丸がLv80に到達しました』
『ドラクールがLv18からLv22まで成長しました』
『ドラクールの【
『ドラクールは【
『ドラクールは【
(フラグ回収はっや!)
先程会得できないかなと思っていたものが、システムメッセージによってドラクールが会得したとわかって鬼童丸は驚いた。
それだけでなく、ドラクールに足りない部分を補うアビリティも会得できたため、この模擬戦はとても価値があったと言えよう。
【
特化していたアビリティが1つに統合されて自由度が増したということは、決められた結果を出せる訳ではなくなるという点で扱いは難しい。
それでも、使いこなせればとても強いのは間違いない。
空いたアビリティ枠には、ダメージを受けた時にMPを消費して部位欠損も含めて回復する【
これで今まで以上にドラクールは万能型への道を進んだのは間違いない。
鬼童丸がドラクールの新しいアビリティを確認し終えた時には、タナトスはベルヴァンプを送還していた。
「すまんな。ベルヴァンプはHPが半分を切ると好戦的になるから、模擬戦じゃなくなると思って終わらせてしまった」
「いや、それは構わないよ。どうしても今の実力じゃベルヴァンプを追い詰めるのは難しそうだったから、ベルヴァンプにパワーアップされて暴れられたらドラクールが危なかった」
「私が不甲斐ないばかりに申し訳ございません」
「そうじゃない。俺もまだまだ未熟なんだ。一緒に強くなろうぜ」
「慈悲深いマスターに感謝します。これからはより一層忠義を尽くしましょう」
『ドラクールからの好感度が一定以上に達したため、鬼童丸の称号<死の隣人>が称号<死の君主>に上書きされました』
(好感度システムあったの!?)
システムメッセージがしれっと重大なことを知らせて来たため、鬼童丸は声にこそ出さないがびっくりした。
<死の君主>には自分の従魔の能力値を常時1割強化する効果があり、記念称号の<死の隣人>よりもありがたいものになっていた。
「ふむ。相棒と良き絆が育まれているようだな。師匠として鼻が高い。だが、相棒だけでなく他のアンデッドモンスターにも目を向けた方が良い。時には相棒の力だけでは覆せない状況もある」
「肝に銘じておくよ。アドバイスありがとう」
おそらく実体験のあるタナトスのアドバイスに対し、鬼童丸は素直に感謝して受け止めた。
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