第72話 好奇心旺盛なのも良いけどストーカーは良くねえよなぁ、良くねえよ
イビルクロスが力尽きたことにより、そのショックでニコは気絶した。
乱戦モードが解除された直後に、タナトスとヘカテーがファントムホークに乗ってこの場にやって来る。
「よくやった。統治者の消えた足立区の治安を乱す愚か者は親人派に引き渡すぞ」
タナトスがそう言うと地獄の門が開き、地獄の使者が気絶したままのニコを地獄に連れて行った。
ニコは気絶していたから、ぎゃあぎゃあと喚くことなく静かに連行された。
「今回の愚か者はヘルストーンを持っていなかったか。まったく、面倒なことだ」
「ヘルストーンは足立区にあるの?」
「あるはずだ。獄先派からすれば、統治者のいなくなってすぐのエリアなんて早く治安を悪くしたいだろうから、手っ取り早くそうするためにヘルストーンがばら撒いているはずだ」
「なるほどね」
メタいことを言えば、そうしないと統治権を持ったプレイヤーがいなくなったエリアにいるプレイヤーがそのエリアで遊べない。
そう考えれば、ヘルストーンがばら撒かれた場所の1つの可能性は極めて高いと言えよう。
「タナトス、生存者達はどの辺りにいる?」
「総合スポーツセンターにいたぞ」
「わかった。次はそこに行ってみる」
「それが良い」
タナトスとの会話が終わり、ヘカテーも宵闇ヤミとの話が終わったようで2人はファントムホークに乗って飛んで行った。
タナトスと話すことを優先したが、鬼童丸は進化したフロストパンツァーとヨモミチボシがどうなったか知りたくてうずうずしていたので早速調べ始める。
宵闇ヤミも進化した2体の従魔についてしらべているようだったから、鬼童丸も気兼ねなく調べられるというものだ。
まず、フロストパンツァーは冷気を纏った戦車である。
【
-----------------------------------------
種族:フロストパンツァー Lv:1/100
-----------------------------------------
HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000
STR:5,900 VIT:6,000
DEX:6,000 AGI:6,300
INT:5,900 LUK:5,900
-----------------------------------------
アビリティ:【
【
【
装備:なし
備考:なし
-----------------------------------------
やはりAGIの数値が高めだが、フロストヴィークルと違って他の能力値の数値も6,000か5,900なので全体的に高い。
しかも、【
これは大きな変化と言えよう。
続いてヨモミチボシだが、巫女風目隠れアイドルになったヨモツシコメと表現するのが良いだろう。
(デーモンズソフトはヨモツシコメに思い入れでもあるのか?)
思わずそう言いたくなる外見であり、鬼童丸は心の中でツッコんでからヨモミチボシのステータスの方も確認する。
-----------------------------------------
種族:ヨモミチボシ Lv:1/100
-----------------------------------------
HP:6,000/6,000 MP:6,000/6,000
STR:6,000 VIT:6,000
DEX:6,000 AGI:6,000
INT:6,000 LUK:6,000
-----------------------------------------
アビリティ:【
【
【
装備:呪髪艶衣
備考:なし
-----------------------------------------
(能力値が平均的に高い支援系だな)
基本的にヨモミチボシもリビングフォールンと同様で、支援系の従魔と考えて良いだろう。
もっとも、ヨモミチボシはバフやデバフではなく、状態異常に重きを置いているのだがそれは置いておこう。
鬼童丸はLv73で従魔は8体使役できるが、現在使役しているのは6体だ。
あと2体をどうするか考えているものの、すぐにでも7体目や8体目の従魔が必要という状態でもないから、どんな従魔が欲しいかじっくり考えている。
(6体中3体が女型従魔だし、ドラクールに至っては喋るんだから執着されるのも仕方ないか)
遠くからこっそりと監視されていることに気づき、鬼童丸はやれやれと溜息をつく。
仕方なくフレンドリストを開き、コール拒否設定を解除してジョブホッパーにフレンドコールする。
鬼童丸からのフレンドコールなんて次にいつ来るかわからないから、ジョブホッパーはワンコールで応じた。
『鬼童丸さん、もしかして取材を受けてくれる気になったのかい?』
「足立区で検証班っぽい連中に監視されてる。本物か偽物か知らんけど不快。何が言いたいかおわかり?」
『…すぐに対処しよう』
「よろしく」
鬼童丸はフレンドコールを切った。
そして、自分達を監視しているプレイヤーの方を見たら、誰かから連絡があったようで大急ぎで退散した。
(好奇心旺盛なのも良いけどストーカーは良くねえよなぁ、良くねえよ)
やれやれと溜息をついていると、進化した従魔の確認を終えた宵闇ヤミが鬼童丸に話しかける。
「鬼童丸さん、ごめんね。待たせちゃった?」
「あー、宵闇さんに溜息をついた訳じゃない。検証班らしき連中に尾行されてたもんでな」
鬼童丸の言い分を聞き、宵闇ヤミは申し訳なさそうに訊ねる。
「その言い方からすると、実はヤミとの配信もストレスを感じてる?」
「ん? いや、コラボ配信は俺の意思で参加してるから良いんだけど、許可なく尾行するのってストーカーと同じだろ? 楽しくゲームしたいのにそれは無粋じゃないかって話だよ」
「確かに。ゲームも配信も楽しくやりたいよね」
自分から進んで披露するのは良いが、勝手に見られたり探られたりするのは嫌だと思うことは不思議ではない。
特にVTuberのような配信者の場合、見てほしいとか褒めてほしいという承認欲求が強いのだ。
「そーいうこと。ストーカーは置いとくとして、グラッジイーターとグレイヴアサシンはどうなった?」
「フッフッフ。グラッジイーターはグラッジブリルに進化して、グレイヴアサシンはグレイヴリーパーに進化したよ」
グラッジブリルはギルタブリルのアンデッドと呼ぶべき外見で、人の上半身と蠍の下半身を持つ合成屍獣という表現がぴったりだった。
乗ろうと思えば蠍の甲羅の部分に乗って移動できなくもないが、尻尾の針が怖くてなかなか勇気がいるだろう。
グレイヴリーパーはグレイヴアサシンと比べて死神のような見た目に変化しており、今まで見て来た男型アンデッドの中でもかなりハイレベルなビジュアルの持ち主だった。
その後、宵闇ヤミがフロストパンツァーとヨモミチボシを見せてほしいと言ったから、鬼童丸も今見せてもらったお礼に披露した。
「ヤミんちゅがヨモミチボシは俺の嫁って言ってるよ」
「残念、俺の従魔だ。欲しければ自分で手に入れてくれ」
「フロストパンツァーで街を壊したりしないのって質問が来てるよ」
「それやったら絶対に害悪ネクロマンサー認定されるじゃん。やらんよ」
コメント欄にいるヤミんちゅ達と宵闇ヤミを経由して交流してから、鬼童丸と宵闇ヤミは総合スポーツセンターに向かってフロストパンツァーに乗り込んで移動することにした。
戦車の中なんて人生で見る機会はほとんどないから、鬼童丸と宵闇ヤミは少しの間だけポカンとしてしまった。
ヤミんちゅの中には戦車や乗物が好きな者もいたようで、移動中はその豆知識を聞きながら総合スポーツセンターに移動した。
しばらくして総合スポーツセンターに到着したら、そこにはデスナイトとデスランサー、デスアーチャー、デスメイジの混成軍とそれを束ねるデスジェネラルが総合スポーツセンターを包囲していた。
(えっ、待って。グールからこれって急に難易度上がり過ぎじゃね?)
ニコの使役していたイビルクロスは除くとして、足立区に大量に発生していたグールの次に戦うのがこの軍団だと知れば、鬼童丸がそのように思うのは当然のことだった。
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