第8章 Moving
第71話 鬼童丸さんが同棲を認めるまで作るのを止めないッ!
翌日の水曜日、
そのおかげでUDSに早めにログインできたから、鬼童丸はデイリー生産系クエストを終わらせて都庁に戻って来た。
「鬼童丸さん、こんばんは」
「こんばんは、宵闇さん。今日も弁当美味しかったよ。まさかキャラ弁で攻めて来るとは思わなかったけど」
「フッフッフ。同じアプローチばかりだと飽きられちゃうからね。それに鬼童丸さんがハートマークとか刻み海苔のLOVEだと本当に困ってそうだから、気の利くアピールとしてキャラ弁にチェンジしたの」
本当に気が利くならば、成人男性に対して頼まれてもいないのにキャラ弁にはしないものなのだが、下心ありとはいえ美味しい弁当を作ってもらっているので鬼童丸はそれについてツッコまなかった。
「キャラ弁なんて桜田麩や刻み海苔よりも手間がかかるだろ。朝活配信もあるんだから、無理しなくて良いんだぞ?」
「鬼童丸さんが同棲を認めるまで作るのを止めないッ!」
「そこでボケんでも良いのに。シェアハウスの件だけど、これ以上宵闇さんの負担をかけるのもあれだし良いよ」
「ホント!? もうクーリングオフは効かないからね!?」
「悪徳商法にも程があるだろ」
どんな押し売りだと言外にツッコむ鬼童丸は苦笑していた。
お互いが嫌になったらシェアハウスなんて止めるものなのだから、絶対に出戻りしないなんて意気込みで来られても重く感じるのは当然だ。
「良かったぁ。でも、これでやっと引っ越しできるよ。もう荷造りもある程度済ませてたし、家族にも事情は話してるから何時でも引っ越しできるよ。明日にでも引っ越せる」
「用意周到かよ。一応、明日は休暇を取ったから、宵闇さんの朝活配信が終わったら引っ越し作業しようか」
「わかった!」
宵闇ヤミは粘り勝ちして鬼童丸との同棲する権利を掴み取ったから、同窓会で鬼童丸が久遠だとわかった時と同じぐらいご機嫌になっていた。
それから、コラボ配信の打ち合わせをサクサクと済ませ、足立区に移動したところで午後8時を迎える。
「こんやみ~。昨日はガシャドクロをドロップした悪魔系VTuber宵闇ヤミだよ〜。よろしくお願いいたしま~す」
新人戦の準優勝に加え、ショート動画やコラボ配信の影響もあって宵闇ヤミのチャンネル登録者数はもうすぐ10,000人に届きそうなところまで来ており、同時接続者数も安定して5,000人を超えるようになった。
宵闇ヤミのチャンネル登録者の内訳だが、元々宵闇ヤミを推していた者に加え、UDSプレイヤーや鬼童丸が過去にやっていたゲームをしていたプレイヤー、デーモンズソフトの社員が登録している。
デーモンズソフトのゲームは大衆受けを狙っていないこともあり、宵闇ヤミのチャンネルはバズッたというところまではいかず少しずつだが着実にチャンネル登録者数を増やしていると言えた。
そのおかげで収入も日に日に増えており、宵闇ヤミはVTuberとして自信を持てるようになった。
「じゃあ、鬼童丸さんからも挨拶をお願いね」
「どうも、同じく昨日のレイドでガシャドクロをドロップした鬼童丸だ。よろしく」
「鬼童丸さん、匂わせですかってコメントが来てるよ」
「ガシャドクロでお揃いを匂わせって考える思考は斬新過ぎる」
「それはそう」
アクセサリーがお揃いで匂わせというならまだしも、ドロップしたアンデッドモンスターのカードが一致したことを匂わせというのは無理がある。
しかし、それを否定的に発言すると宵闇ヤミのチャンネルに迷惑をかけるかもしれないから、鬼童丸は斬新過ぎると表現を否定的なものからマイルドなものに変換した。
「さて、今日は鬼童丸さんと一緒にUDSから姿を消したきたくぶちょーの統治してた足立区を奪うよ」
新人戦後のアップデートにより、3日間ログインしなかったプレイヤーが統治していたエリアは統治権がなくなってアンデッドモンスターが再び湧き出すようになる。
そこを狙っているプレイヤーは少なくなく、鬼童丸はヴァルキリーから北区は貰ったと連絡を受けていた。
まだ足立区は誰のものにもなっていないから、鬼童丸と宵闇ヤミは足立区の攻略をコラボ配信のネタにすることにしたのだ。
「なんということでしょう。昨日まで治安が良かった足立区が今やグールのうろつく世紀末に早変わりです」
「そんなビフォーアフターは嫌だ」
「それな。
「
鬼童丸と宵闇ヤミは2体ずつ従魔を召喚した。
何故この4体だけなのかと言えば、あともう少しで進化するからだ。
全ての従魔を召喚すると経験値が分散されてしまうから、特に強い敵でもないなら早く進化させたい従魔だけを召喚した方が経験値稼ぎの効率は良い。
ちなみに、昨日の配信では鬼童丸の従魔が2体進化していたが、宵闇ヤミもワイローンがでデスレイプニルに進化した。
デスレイプニルは8本脚の魔法使いケンタウロスだが、【
移動砲台かつ移動手段ということで、この進化によって宵闇ヤミがUDSを快適にプレイできるようになった訳だ。
それはさておき、鬼童丸と宵闇ヤミはグールを倒しながら進んで行く。
乱戦モードが終わらないぐらいにはグールの数が多いけれど、昨日はグールよりも強いスッカランと対峙していたこともあって何も苦労はない。
ヨモミーナが【
これが効率的であり、周囲にいるグール達もこの戦闘に引き寄せられたかのように集まって来た。
無論、宵闇ヤミもグール達がフロストヴィークルに寄って来るのを利用して攻撃しており、経験値稼ぎはサクサク進んだのだが、グール達を倒してもカードにならず黒い靄になって1ヶ所に集まっていく。
黒い靄を辿っていった先には舎人公園があり、舎人公園には害悪ネクロマンサーらしき女性が待ち構えており、画面が一時的にストーリーモードへと変わる。
「オーッホッホッホ! ここまでよく来れたわね!」
「特に大した苦労もなく来れたぞ。なあ?」
「うん。グールが弱過ぎてウォーミングアップにもならなかった」
「黙らっしゃい! このニコ様の
イビルクロスと呼ばれたアンデッドモンスターは、黒い靄を纏って中心にぎょろりとしたモノアイがある十字架だ。
黒い靄が舎人公園に集まっていたため、てっきりニコがヘルストーンを持っているのかと思っていたから鬼童丸は煽るように訊ねてみる。
「なんだ、偉そうにしてるくせにヘルストーンは持ってないんだな」
「ヘルストーン!? 持ってるの!? アタクシに寄越しなさい!」
(この様子じゃ持ってなさそうだな)
ニコの反応からしてヘルストーンは持っていないようだったので、鬼童丸は少し落胆してニコの言葉には応じず、セットコマンドを使って戦闘を開始する。
AGIで勝るフロストヴィークルが【
氷に閉じ込められたイビルクロスのモノアイが光った時、氷が融け始めてしまったがヨモミーヌは【
その結果、氷漬けになっているせいでなかなか発動しなかったアビリティがキャンセルされ、グレイヴアサシンが【
投擲物が敵に命中した時にイビルクロスが麻痺状態に陥り、イビルクロスは融けた氷から露出する部分がビリビリ痺れ、麻痺と氷結の状態異常が重なった。
ここにグラッジイーターの【
『鬼童丸がLv71からLv73まで成長しました』
『フロストヴィークルがLv70からLv75(MAX)まで成長しました』
『鬼童丸が称号<掃除屋殺し>を保持した状態でフロストヴィークルがレベル上限に達したため、フロストヴィークルがフロストパンツァーに特殊進化しました』
『フロストパンツァーが【
『ヨモミーナがLv68からLv75(MAX)まで成長しました』
『鬼童丸が称号<掃除屋殺し>を保持した状態でヨモミーナがレベル上限に達したため、ヨモミーナがヨモミチボシに特殊進化しました』
『ヨモミチボシが【
『イビルクロスを1枚手に入れました』
ラストアタックはグラッジイーターに譲ったため、鬼童丸は<足立の主>を会得できなかったけれど、ここまでの戦闘における目的は果たしたため良しとした。
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