第49話 許せ宵闇さん。戦いはいつも非情なんだ
3位決定戦で戦った2人が戻って来るのと入れ替わる形で、鬼童丸と宵闇ヤミがバトルステージの両端にある塔に転移させられて向かい合う。
「いよいよ決勝戦だね! 2人の戦いが派手になることを期待するよ!」
『1分以内に決勝戦に参加させるアンデッドモンスターを2体選択して下さい』
(さっきの戦いでグリキュラを選んでたから、宵闇さんはワイローンを使うのは確定。もう1体は何を選んで来るかね?)
グラッジイーターとゲイザス、もしかしたらもう1体ぐらい新たな従魔をゲットしているかもしれない。
その中からワイローンとタッグを組ませるとしたら誰か考えてみたものの、結局はこちらも最高戦力を出せば良いだけの話だから考えるのを止めた。
「
「
鬼童丸がドラピールとデスライダーを召喚したのに対し、宵闇ヤミはワイローンとゲイザスを召喚した。
(ゲイザスから潰そう)
ワイローンは強いけれど、言ってしまえば移動砲台に過ぎない。
それに対してゲイザスはデバフも使えるから、さっさと倒すに越したことはない。
「準備は良いね? じゃあ、決勝戦開始!」
鬼童丸はセットコマンドを使い、デスライダーに【
「えっ、動きが鈍い!?」
自分の従魔達がデスライダーの【
セットコマンドを使っているはずなのに、それが実行されなければ慌ててしまうのも無理もない。
ドラピールがゲイザスに【
追撃ボタンが表示され、鬼童丸は当然のことながらそれを押す。
「おぉっと、これは容赦ない! 鬼童丸が開始早々ゲイザスをフルボッコにしてるよぉぉぉ!」
【
そのタイミングでセットコマンドが実行され、ワイローンが【
デスライダーは僅かにダメージを受けたが、ゲイザスは追撃された影響で一時的に行動不能でありアビリティを使えずにいた。
ゲイザスが立ち上がって攻撃をしようとした時、鬼童丸はそれを阻止するべく別のセットコマンドを使う。
そのセットコマンドはドラピールに【
ゲイザスの【
「鬼童丸さんの鬼畜!」
「許せ宵闇さん。戦いはいつも非情なんだ」
そうは言っても、鬼童丸だってデスライダーを麻痺状態にされているから、戦力が半減とまではいわないが、デスライダーの行動に制限がかかっているのは間違いない。
「ワイローン、デスライダーに【
「ドラピール、【
デスライダー目掛けて飛んで行く暗黒の追尾弾に対し、ドラピールがインターセプトして吸収する。
「吸収ってそんなのあり~?」
「アビリティ的にOKならありなんだろ。次は?」
デスライダーが【
そして、ワイローンの攻撃は基本的に魔法系アビリティだから、【
「ワイローン、デスライダーに【
「ドラピール、【
ドラピールの方がSTRの数値は高く、【
つまり、ドラピールの【
「ドラピール、【
転倒しているワイローンにドラピールが迎撃すれば、大ダメージを受けてワイローンがダウン状態に陥る。
「圧倒的じゃないか鬼童丸は」
デビーラがそうぼそりと呟いた時、鬼童丸は視界に表示された追撃のボタンを押してワイローンのHPを削り切った。
『鬼童丸がLv56からLv58まで成長しました』
『ドラピールがLv46からLv50まで成長しました』
『ドラピールの【
『デスライダーがLv44からLv48まで成長しました』
『デスライダーの【
「そこまで! 新人戦のチャンピオンは鬼童丸に決定! 宣言通り、ネクロマンサー界の王になったね! おめでとう!」
システムメッセージが終わるのと同時に、デビーラが鬼童丸の優勝を宣言する。
それと同時に優勝を祝う紙吹雪が盛大に飛び出した。
ドラピールとデスライダーを送還し、鬼童丸は塔の上からバトルステージの中心に現れた表彰台の上に移動させられた。
その時には2位の位置に宵闇ヤミ、3位の位置にヴァルキリーが一緒に転移させられていた。
そして、このままの流れで表彰式に移る。
「新人戦3位、ヴァルキリー殿。貴殿が優秀な成績を収めたことをここに表彰します。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
観客席とVIP席にいるプレイヤー達が拍手する中、ヴァルキリーはデビーラから銅メダルを首にかけてもらった。
それと同時にヴァルキリーの正面にシステムメッセージが現れたようだから、称号かアイテムが手に入ったのだろう。
「新人戦準優勝、宵闇ヤミ殿。貴殿が優秀な成績を収めたことをここに表彰します。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
宵闇ヤミもデビーラから銀メダルを首にかけてもらい、何かしらの称号かアイテムを得た。
次はいよいよ鬼童丸の番だ。
「新人戦優勝、鬼童丸殿。貴殿は戦略面と実力面において、他者の追随を許さぬ圧倒的な強さを見せつけて優勝したことをここに表彰します。おめでとうございます」
「ありがとうございます」
『鬼童丸は称号<新人戦チャンピオン>を獲得しました』
『鬼童丸は専用武装交換チケットを1枚獲得しました』
称号<新人戦チャンピオン>を持つ者は、NPCからの好感度が上がるだけでなく地獄の各勢力からも一目置かれる存在になる。
きっとストーリーを進める際に役立つことだろう。
専用武装交換チケットは任意の従魔専用の武装をショップで交換できるアイテムで、そのアイテムを持ったモンスターが進化や
こちらもストーリーを進める助けになるのは間違いない。
「さて、チャンピオンの鬼童丸から何かコメント貰っても良いかな?」
「俺がチャンピオンだ! お前等、たんまり稼いだか!?」
「「「…「「ウォォォォォ!!」」…」」」
「えっ、MC乗っ取られた?」
観客席の盛り上がりが自分の進行している時よりも上だったため、デビーラの素が出てしまった。
実際、鬼童丸が1位、宵闇ヤミが2位、ヴァルキリーが3位、リバースが4位と予想していたのは全体の3分の1程いたらしく、賭けに勝った者達が大声を出している訳だ。
運営としてお知らせが残っていることを思い出し、デビーラは咳払いしてから再び喋り出す。
「オホン、鬼童丸のおかげで稼いだみんなは静粛に。これからUDSに関するお知らせを発表するよ!」
新人戦のような大きなイベントならば告知の効果も十分なので、この場を借りてデーモンズソフトとしてはいくつかの告知をしておきたいと考えた。
その告知の内容は3点あった。
1つ目は借金制度の解禁であり、借金とはリアルマネーではなくネクロが足りなくなった時にネクロをこれからプレイヤーが稼ぐ経験値で支払う形で借りられるようになる。
借りる金額によって返済条件が異なっており、その条件を守れないと地獄からペナルティが与えられるため、返済期限は絶対に守った方が良さそうだ。
ネクロの主な使い道はアンデッドモンスターガチャだから、ガチャの沼に入ってしまったプレイヤーは要注意である。
2つ目はミニゲームの解禁で、ミニゲームにクリアするとネクロやミニゲーム限定のアンデッドモンスターが手に入る。
ガチャを引きたい時にミニゲームをクリアするということも想定されている。
3つ目は、これから明日の正午までUDSのアップデートが行われるというものだ。
ただし、アップデート中もミニゲームは既に解禁されてできるようになっているから、アップデート中もUDSで遊べないということはない。
「以上! プレイヤーのみんな、これからもUDSを楽しんでね! バイバ~イ!」
デビーラが笑顔で手を振った直後、鬼童丸達は特設エリアからUDSの開始画面まで強制的に移動させられた。
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