悪役令嬢にTS転生したからとりあえず最強を目指す
吉都 五日
プロローグ
第1話 入学令嬢
「――――であることを望む。諸君らは我が帝国の将来を担う―――また、世界の希望たる英雄候補として―――なることを切に願う。これからは―――」
ぼんやりと意識が覚醒してくる。
と、同時にやや甲高い声の男性が何かを言っているのが認識できた。
ああ、『私』は入学式に来ていたのだったか。
しかし、いつの間に眠ってしまったのだろう。
昨夜はしっかりと睡眠を取った筈だが…
「―――を切に望むこととして挨拶と変える。ジュエラルム騎士学院学長、ルドラルオ・ザン・ジュエラルム」
「―――はぁ?」
その名を聞いた瞬間思わず呆けた声が出た。
しかしその声はどうやら周囲の拍手によってかき消されたようだ。
助かったと思う一方、それどころではないとも思う。
徐々に意識がハッキリしてくるにつれ、ありえないことが起きていることに気付く。
私は…いや、俺は男だったはずだ。
だよな?恐ろしい事にそんな事にも自信がない。
先ほど出た子供のような高い声も、目に映る細い腕も、目の端に映るぐりぐりした金色の髪も、さらには恐ろしく巨大な胸部装甲も…すべてが記憶にある自分の体とは異なるモノだと感じる。
混乱して小声で変な声を上げながら体をペタペタする私をよそに、入学式と思しき式典は進む。
次は来賓の祝辞らしい。
知らないおっさんが延々とお目出度い事を喋っている。
うん、どうでもいいな。
それどころじゃないんだこちらは。
長い話を無視して周囲を見る。
どうみても入学予定だった地元の国立大学のホールではない。
どこかのホテルや結婚式場なんか話にならないほど豪華な会場、そして自分が座っている席もパイプ椅子のような貧相な椅子ではない。劇場の椅子?いや、もっと立派な物だ。
それに周囲の頭の色が凄い。
日本だと居ても茶色や金髪で、入学式なら大抵黒髪だろう。
だが金髪どころじゃない。青髪や緑髪、ピンク頭までいるのだ。うーむ。
そして極め付けは学長の名前だ。
なんだったか、ルドラ…ジェラルム?そんな名前の日本人が居たらお目にかかりたいものだ。
だがまあ、その金髪の学長は不思議と日本語を喋り、続けて来賓として紹介された緑髪の男性もピンク頭の女性も日本人離れした容姿でスラスラとネイティブな日本語を喋っているのだ。
夢かと思ったがどうもそれにしてはおかしい。
どうやらこれは流行りの異世界転生という奴だろうか。
だがそれにしては、どこかに既視感がある。
「続いて生徒代表挨拶、生徒会会長、ラルフレル・フォン・エメラガレア君」
「はい」
そう呼び出され、前に出て喋り始めるイケメンがいた。
ラルフレ?うーん、どこかで聞いたような??
「新入生諸君、入学おめでとう。君たちは栄誉ある騎士学院に入学した。だが、これはあくまで始まりに過ぎない。これからの君たちの努力次第で――――」
どこかで見たことのある顔の若者が、聞いたことのあるような祝辞を述べている。
わからん、どこかで…?
「続けて新入生代表、アルバート・ラ・ジュエラルム君」
「はい」
「…はぁ?」
今度は俺の隣に座っていたイケメンが呼び出されて前に出た。
新入生代表?壇上に登り、こちらを向いてあいさつを始める。
私には分からない言葉で何かを言っている。
何を言っているのかは分かるが、何を言っているのかサッパリ頭に入ってこない。
お前が何言ってんだって?私も同じ意見だよ。
しかし、今喋っている銀髪イケメンのこの男、顔に見覚えがある。
というかモニター越しに見たことがある。
コイツは…そう、コイツは乙女ゲーのヒロイン、じゃなかった。攻略対象様だ。
そう認識した瞬間、激しい頭痛とともに走馬燈のように脳内にこれまでの記憶が流れ込んできた。
俺は、いや私はカタリナ。カタリナ・フォン・ダイアレアル。
そしてもう一つ、大学生になるはずだった俺の名前……名前は…?
ダメだ、思い出せない。
だがこの世界のことはわかる。
ここは高校時代に姉に勧められてやり込んでいたゲームの記憶と重なる。
さらには地名も、そして自分の名前も…
(あー…なんてこった)
恐らくだが、ここはVR乙女ゲー、『遥かなる君へ』の世界だ。
どうやら『俺』はゲームの中に入り込んでしまったようだ。
それもよりによって悪役令嬢として。
そこはせめて皇子ポジだろ!?何で女?
その事実に気づいた瞬間襲い来る激しい頭痛に吐き気。
急激な体調不良を起こした私の意識は新入生代表のあいさつが終わるのを待たず。コンセントをブチ抜いたPCのようにシャットダウンされた。
―――――――――――――――――――――――――――――
新作はじめました。
面白そうと少しでも感じていただけたら☆や♡をお願いします。
最弱×内政×ダンジョン=最強? 最弱魔王は恋人のために強さを手に入れる
此方の方は本日エピローグを投稿予定です。未読の方は是非ご一読ください。
本作は連休中は1日2回投稿、後は1日1回投稿の予定です。
投稿作業と並行して執筆!?できらあ!?(できません)
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