第97話 リッチな冒険者
「実はさ」
シャルが
午後の
遠くでは、まだ祝賀の花火が
人々の
「あたし、今までの
「……?」
首を
きちんと記帳されているその紙には、これまでの
インクの
「えっとね。シャロウナハトの
シャルの指が、
その動きに合わせて、
「全部合わせるとね、500クラウンくらいになるんだよ……! ほら、通帳!」
シャルが見せてくる銀行の通帳。
深緑色の表紙には、アランシア王国銀行の金の
預金額を示す数字の
(500……クラウン……? え、えぇと……)
1クラウンで、
かなり高級な
つまりこれは……街一番の宿に
いや、もっと? 計算が追いつかない……!
「あとこれ、ミュウちゃんの分も
「え……えぇ……!?」
思わず声が
今まで最高でも2クラウンくらいしか持ったことない
「このお金はミュウちゃんの
シャルの声には、迷いがなかった。その
秋の風が
「でも……そんな……」
「まあ、お金のことは
宿代とか必要最低限は使ってたけど、ミュウちゃんと
確かに、
馬車で
もちろん宿に
「それでね、せっかくだから使おうよ! あ、もちろん半分くらいは取っておくけど。
ミュウちゃんの装備も新調したいし! 今の服とかボロボロ……ではないけど、古いでしょ?」
シャルの提案に、
いつもどおりの、シンプルな白いローブだ。確かに、少し
「どう? お金あるんだし、たまにはお買い物とかしてみない?」
シャルの声には期待が
背後では花火が上がり続け、秋の空に色とりどりの花を
(うう……。お金の使い方とか、わかんないし……。いつも、最低限必要なものしか買ってこなかったし……。
高いものを買うのって、なんか
「
この街けっこう広いし、洋服とかもたくさんあると思う!」
そう言って、シャルは
その手のひらは、いつもの通り温かい。
(……まあ、いっか。シャルが言うなら)
正直、
というか、この
街には祝賀の準備をする人々の姿。
そんな中を、
「あ、いい店があるよ!」
シャルが指差した先には、白を基調とした
大きなガラス窓に、色とりどりの服が
入り口の
高級店の
「た……高そう……」
小さな声で
その表情には、何かを
「
足元の
「いらっしゃいませ!」
店員の女性が満面の
しかし、
そりゃそうか。
シャルは
「あの、シャルさまと……ミュウさま……!?」
「!?」
あ、そういうことじゃなくて!?
いつの間にかすっかりここでも有名になってしまっているらしい。
なんか石の密議の人ですら知ってたしね……! 名声って
「まさか聖女さまがこのお店に……! どうぞどうぞ、中へ!」
店員は
通路の
シルクのような
(でも、このサイズじゃ……)
そんな
が、すぐに
「申し訳ありません! こちらは
上品な大理石の階段を上ると、そこには子供用――いや、「
といっても、
「わぁ、かわいい! ミュウちゃんにぴったりじゃない?」
シャルが手に取ったのは、
布地に
「これなんて上品で、聖女様にぴったりですわ!」
店員も続けざまに服を
白のブラウスに
服が作り出す
(うっ……たくさん……! なんか、どんどんMPが減ってく……!)
「試着してみませんか? お
「そうだね!
MPがゴリゴリ
とりあえず、仕切られた
布地が
「わぁ! すっごく似合ってる!」
水色のワンピースに
……鏡を見ると、確かに悪くない。今までの服より、ずっと
いや、
でも、ちょっとだけ、
「聖女様にお似合いです! 白のリボンを付けましたら、さらに
(ヒィ~……!)
店員の提案で、
……不思議と、
「あ! これもいいかも!」
シャルが次々と服を持ってくる。
店員も
(た、助けて……これ以上は……もう限界……)
試着を重ねるたび、MPが急速に減っていく。
シャルとの会話は
しかも、
2階のフロアに人が増えてきている。ざわめきが大きくなっていく。
「あれ、本当に聖女様?」
「かわいい! 子供なのね!」
「思ったよりちっちゃい子ね!」
「ミュウちゃん?
シャルが心配そうに
「あ、ごめん! 楽しくなっちゃって! じゃあ、気に入ったやつだけ買おっか」
結局、水色のワンピースと白のブラウス、それにリボンを
会計の時、金額を見て
こんなに高い服を買うのは人生で初めてだ。
でも、確かに上質な
軽くて動きやすいし。
「似合ってるよ、本当に! あ、そうだ。次は――」
「……!」
次、という言葉に思わずビクッと体が
もうMPが限界……! お願い、休ませて……!
■
「ミュウちゃん、もうちょっとだけ付き合って? この先に、すっごくいい
「……うう」
思わず顔をしかめる。でも、
今使ってる
それに、服とかと
新しい服を着て歩く感覚は、まだ慣れない。
(す、スカートが短い……。
そんな気持ちを
(あれはたしか、カール……?)
カールしたヒゲを生やした男性が、高級な衣服店に入っていく。
黒い服に身を包んだその姿は、以前とは
石の密議の元メンバー。いろいろとミスをやらかしてリーダーに石にされたところを、
(なんでこんなところに……?)
「千年周期の……」
「そうだ、あの
(!
その会話を聞くべく、少し近付いて耳を
「きゃっ!」
不慣れな服のせいで、足を
「……っ!?」
「ミュウちゃん!
シャルが急いで
「う、うん……ごめん……」
それから
(あの
「どうしたの? さっきから様子がヘン」
「……あ、えっと……」
「ふーん、なるほどなるほど。たしかにあいつならなんか知ってるかも!
あっ、でももうミュウちゃん
今から人を追いかけて、しかも話を聞いて……となると、厳しいかもしれない。
「そっか、ごめんごめん! じゃあ
シャルの提案に、小さく
ただ、心の中では確信があった。
カールなら、リュークの言う「
商店街に
風に乗って、
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