第13話 パーティを組もう

 コンコンコンとドアを叩く音。


 瞼の裏側を焼くような眩しさが朝を告げている。


 「タクミ、朝ですよ〜起きてくださ〜い」


 扉を開けるとそこにいたのはエプロン姿に箒を右手に持った少女。目が前髪で隠れていて前が見づらそうだと会うたびに思う。


 「ラナちゃんおはよ、今日はどうしたの?いつも起こしになんて来ないのに」


 彼女はガストンの親戚の子で先週くらいからこの宿で働いている。


 「もう10時です、みんな朝ご飯食べちゃいましたよ」


 もうそんな時間か…


 階段を降って宿の食事場所へと向かう。そこで待っていたのはガストンだ、昨日殴られていた右頬が赤く腫れている。


 「よぉ、昨日は楽しそうだったじゃねーか」


 どこか含みを持った言い方だ。


 「どこがだよ、あんなイカれた冒険者に殺されかけたってのに」


 「ハハッ、冒険者ってのは基本イカれてるもんだ。そうでなきゃやってられん」


 そう言ってガストンは笑いながらも真っ直ぐに俺の目を見つめる。


 「いや、俺はイカれてねえよ!あん時はアンタが殴られてだな、その怒りで—」


 「どちらかと言うと飯が台無しにされてキレてたように俺は見えたが…?」


 「そ、そんなことは…!」


 今思い返せばそんなことあるかもしれない。


 「まあいい、お前の連れてる"変な"スライムのことと言い聞きてぇことは山ほどある。でもな—」


 「お前が冒険者としてやってけそうで何よりだ」

 

 ガストンはそう言うと席を立ち、奥の部屋に入って行った。

 

 ◇◇◇


 遅めの朝食を済ませた後、冒険者ギルドに向かったタクミ。


 さて、今日はどんな依頼を受けようかな。なんて考えながら依頼掲示板を眺めていた。


 いつもより遅い時間、ほとんどの冒険者は既に依頼を受け終わっている。そのため建物内にいる人は少ない。

 

 だからこそ、明らかに自分に向けられた視線を感じ取ることができた。


 バッと後ろを振り向く、しかしそこには誰もいない…


 と思いきや、柱の裏で何か影が動いたのを目で捉えた。


 ◇◇◇


 「君、そこで何してるの…?」


 柱の後ろに回り込み、こちらを覗き見ていた人物に声をかけた。


 「ひゃっ、ひゃぁっっっ!!!」


 とても驚いたような声を出したその人物はまるでカエルのように跳ね、そして大きく尻餅をついた。


 「いたたっ」


 「だ、大丈夫?」


 尻餅をついた反動で深く被ったフードが脱げ、水色の長い髪が露わになった。どうやら女の子だったようだ。


 「あなたは…!」


 と彼女は俺の顔を見上げて言う。


 この子、俺のことを知っているのか?俺は申し訳ないが記憶にないぞ。


 「昨日酒場で見かけたんです!」


 あ〜、あの場にいたのか…顔までしっかり覚えられるなんて昨日はちょっと騒ぎすぎたようだ。


 とりあえずなぜ俺を柱の裏から覗き見ていたのか尋ねようとしたが、それより先に彼女が口を開いた。


 「わ、私の師匠になってください!!!」


 ん—???


 彼女の突拍子もない一言に俺の思考は止まった。


 彼女の首元に掛かった冒険者バッジはD級を示している。俺よりランクの上の人間がなぜ?


 固まったタクミを見て彼女は慌てて訂正した。


 「間違えました、私とパーティを組んでください!」


 う〜ん…冒険者に成り立ての俺にパーティというシステムがあまりピンと来てないが、依頼をこなす仲間になってくれってことだよな?


 でもまあ何やら訳がありそうだから、とりあえず話だけでも聞いてみるか。


 ◇◇◇


 二人は街の中心に店を構えるケーキ屋にいた。


 このケーキ屋は街一番と名高いパティシエが腕を振るっているとかで貴族も買い付けに来るそうだ。


 「あ、このショートケーキ美味しいですよ!」


 話をするだけなのに何故こんな場所に連れて来た?という疑問を投げかけたかったが、彼女はもう既にケーキに舌鼓を打っていた。

 

 …


 「す、すいません〜前からここのケーキ屋に行ってみたくって!」


 「それにしても食べ過ぎじゃないか?」

 

 彼女は至高のショートケーキを食して勢いづいたのかチョコレートケーキと更にアップルパイまで平らげてしまった。


 「で、俺とパーティを組みたいってどういうこと?わざわざE級の俺なんかじゃなくても」


 彼女の完食を待つ間に3回おかわりをした紅茶のカップを飲み干してから尋ねた。


 「やっぱりダメですか…?」


 ケーキを夢中になって食べていた時と打って変わって萎んだ表情をした。


 「う〜ん、ぶっちゃけ今はパーティとかあまり考えてないかな」


 現在E級の俺が受けられる依頼は複数人で受けるほどの難易度ではない。そのためパーティを組む意味もあまりないと考えていた。


 「そうですか、あなたとパーティを組んだら"ダンジョン"に挑戦できると思ったんですが…」


 ダンジョン…?


 タクミは席を立って帰ろうとする彼女の手首を咄嗟に掴んで言った。


 「ダンジョンについて詳しく話を聞かせてくれ!」



 第十三話 完


 すみません、最近忙しすぎて更新速度が低下してました。次回からはもっと早く上げられると思います


 今話も読んでいただきありがとうございます。星、コメント、作品のフォローを頂けたら続きを書く励みになるので是非お願いします🙇


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