第28話 陶然と
「クハッ。何だ?
崖の頂にて。
無言で向日葵の種クッキーを食べ終えた
咲茉が二人の様子をトマトミートソースと溶けるチーズ入りの揚げパンを食べながらじっと見つめていたので、善は少しからかうような気持ちも込めながら、どうせ否定するのだろうと予想しながら言った。
案の定、咲茉は否定した。
「ただ、意外だっただけだ」
最後の一口を食べ終えて、善に御馳走さまでしたと礼を述べ、檸檬水を二口飲んでから、咲茉は口を開いた。
「マスターと昴と詩がこんなにも早く距離を縮めるとは思いもしなかった」
「クハッ。まあ。利害の一致。というやつだ」
「利害の一致」
「吾輩とそなたのような関係ではなくとも、距離を縮められる関係性がある。という事だ」
「………私と、マスターの関係」
「そなたは吾輩とそなたの関係にどのような名称をつける?」
「教えを与える者と教えを乞う者だ」
「それ以外は?」
「それ以外、とは何だ?」
「クハッ。咲茉よ。そなた、吾輩のように飛翔できたならば、吾輩の傍から離れるつもりか?」
「………わからない」
「わからない。つまり。その可能性もある。という事だな?」
「ああ」
善は目を細めては、陶然と笑った。
「そうか。それもよかろう」
(2024.8.26)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます