第16話 国元の独白

 国元が予約していた店は、訳ありカップルが

お忍びで行くような感じのところだった。

すべて個室になっていた。

個室と言うより、離れが点在しているような造り。

長野にこんな店があったんだ。



扉を開けて靴を脱いで、一段上がり、ふすまを開けて見ると畳の部屋だった。

座敷席だったけど、テーブルの下は掘りごたつ式になっていて、足をおろして座れた。


テーブルの上には、既に2人分の料理が並べられていた。


席についたところで、ふすまの向こうから、お飲み物はいかがいたしましょうか?と、声がした。


「とおる君、ビールでいいの?」


「えっ?あ、うん」


「生大2つお願いします」


かしこまりました、と声がして、扉を閉める音がした。


「なに ここ? すごいね?」

俺は思わず国元に聞いた。


「うん!いいでしょ?大人のデートには」

 

「は? デートじゃないだろ?

ってか、会いたいってゆうから会いにきたけど、用件はなんだよ?」


ちょうどそこで、失礼致します、とビールがきたから俺は黙った。


「じゃ、とおる君!

久しぶりの再会に、カンパイ!」


そう言って、俺のジョッキに、自分のジョッキを当てた。  


「久しぶり過ぎて、緊張しちゃうよ~!」


「全く緊張してるようには見えないけどな。

で、俺と連絡取りたがってたって?室堂が言ってたけど、なんだよ?」



そこから国元は、ほぼ1人で、喋り続けた。



「高校に入学してさ、1番最初 席隣りだったの覚えてる?

名簿順だったから、国元、倉田って、隣りだった。 

配られたプリント1枚落としちゃって、それが

とおる君の椅子の真下にいっちゃって、どうしようって思ったら、とおる君拾ってくれて、ありがとうって言ったら、別にって、それが初めての会話だった。

なんか、ぶっきらぼうだけど、きっと優しい人だろうな~って思った。

私、室堂と中学一緒だったからさ~、とおる君

剣道部入って、室堂も剣道部だったから、室堂に

とおる君の情報流してよ!って、頼んだんだ。

そしたらさ、倉田は先輩だけしか目に入ってないから、って。

中野柚希先輩だって。

それからは、私ずっとゆき先輩をマークしてた。

彼氏があの超モテモテの矢沢弘人で、学年トップの優秀賞だって?

は?って、頭に きた。 

クラスマッチで対戦することになって、バレーボール、めちゃ狙って当てたもん。

次の年、卓球でも対戦して、私は圧勝した。

ゆき先輩、キャ~キャ~怖い!!とかって騒いでて、超ウザかった!!

とおる君が、それを見てて、かわいいなぁみたいに笑っててさ~!!

中野先輩ファイト~!!とか言って応援してんの!!

はぁ??って思ったよ。

クラスマッチなんだから、私を応援するんじゃないんかよ?って。

とにかく、大っキライだった!!

矢沢先輩にフラれればいいのに!!

そう思った。

そうだ!矢沢弘人をゆき先輩から奪ってやろうって、思った。

私、高校の頃から胸大きかったから、矢沢先輩を誘惑したの。

結構しつこくアタックしたけど、相手にされなかった。

それもマジでムカついたんだけど!!

そんなこんなで、3年生が卒業してさ。

私たちが3年生になった。

ジャマなゆき先輩もいなくなったし、じゃ、晴れて とおる君に告白できるな~って思った。

だけど、とおる君 剣道を頑張ってやってて、室堂からも倉田、今 必死に剣道してるから!っていわれて。

だから、部活引退したら告白しようって待つことにしたの。

剣道部 全国大会まで出ることになっちゃったから、思ってた以上に待たされたけど。

私がとおる君に告白して、つきあってって言ったら、あっさりとOKしてくれて、うれしかった!!

なんだ!もっと早く告白してれば良かった!!って思った。

とおる君も、私のこと好きだったんだな~って。

夏休みに私の部屋で初エッチして、それからは、公園のベンチや芝生の上とかでもしたよね。

ドキドキした。

大好きだった。

とおる君が私のものになってくれて、本当にうれしかった」




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