第55話 嫁とデート③

 せーちゃん IN サイ○リヤ


 ショッピングモールで昼ご飯を食べに来た俺たち。何を食べようかとせーちゃんと話していると、有名なイタリアンなお店が。


「あ、ここ知ってる!有名なんだよね!ミナくん、ここにしない?」


 どうやらサイ○リヤは魔族にも有名らしい。せーちゃんにせがまれたら行くしかないよね。


 ちょっと前にデートでサイ○リヤはありか無しかで謎の論争があったみたいだけど俺個人としてはありだ。美味いし、他のイタリアンと比べると安いし。これだから童貞は…と言われるかも知れないが、せーちゃん以外になんと思われようと正直どうでもいい。


「〜〜!!」


 せーちゃんは夢中で辛味チキンを食べている。いっぱい食べる君が好き。魔族は割と健啖家が多いらしく、細身の女性でも一人前大盛りをペロリと食べる。せーちゃんも良く食べるのだ。それで太らないのだから世の女性の羨望対象であろう。


 話は変わるが、俺は父さん似の馬鹿舌だと思う。大抵の物は食えるし、苦手な物は無い。「湊、人間ちょっと馬鹿舌の方が幸せなんやで」というのが父さんの弁。俺もそう思うな。大抵の物が美味しく食べられるならそれは幸せなのだ。サイ○リヤは凄く美味しい。せーちゃんの手料理?マジ神。美味すぎる。既に胃袋は掴まれているのだ。


 ちなみにせーちゃんはミートソースのボロニア風、俺はハンバーグステーキを頼んだ。二人で分ける用に、モッツァレラのピザを注文。ピザは既に六割がせーちゃんの胃の中に消えた。美味しそうに食べるのでどんどん食べて欲しい。見ていて気持ち良い食べっぷりだ。


 辛味チキンを食べ終わると同時に注文した料理が運ばれて来た。せーちゃんは目をキラキラ輝かせている。俺の分のハンバーグステーキもあげたくなるな。まぁ、足りなければまた注文すれば良いだろう。父さんからもらったお小遣いはまだまだあるのだ。


「ミナくん!美味しいね!」


 天使のような笑顔だ。全てが浄化されていく。ご飯を食べながらほっこりした気持ちになったのだった。


◆◇◆

 昼ご飯を終えて少し休憩した後、再び海遊館へ。次に向かうのはクラゲコーナー。水中を漂うクラゲが幻想的で美しいと評判のコーナーだ。照明が他のコーナーよりも暗めに設定されており、仄かな明かりに照らされたクラゲがゆったりと泳ぐ様はまるで異世界のようだ。ソファが用意されており、カップルを良いムードにする事を狙っているのかも知れない。そのためかこのコーナーは静かで二人の世界に浸っているカップルが多数居るのが分かる。


 不意にせーちゃんが肩に頭を乗せて来た。花の様な香りが鼻腔をくすぐる。サラサラ、フワフワな髪が少しくすぐったい。


「ミナくん」


「どうしたの?」


「えへへ。何でもない」


 その場の雰囲気から静かな声でせーちゃんが甘えてくる。そんな姿が愛おしい。そっと肩を抱く。せーちゃんはされるがままだ。


「今、良いかな?」


「うん。誰も見てないから大丈夫だよ」


 そのまませーちゃんと口づけを交わした。恥ずかしくなってすぐ離れた。せーちゃんは顔を真っ赤にしている。俺の顔も似たようなものだろう。


 そのまま小一時間、二人の世界に浸るのだった。

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