その②
◇ ◇ ◇
「――で、いつまで話を聞けば良いのだ」
旅先から持って数日。アリサさんが聞き飽きたと疲れ顔で訴えてきました。
「サラ殿も言ってやれ」
「で、でも、ソフィーさんすごく嬉しそうだし……」
「アレはただの惚気だ。まったく、ソフィー殿! いい加減上の空から帰って来い!」
「だってエドがギュッって抱きしめてくれたんですよ」
「おまっ⁉」
「手だって繋いでくれたし、温泉だって一緒に入ってくれたんだよ」
「サラ! このバカになんか薬飲ませろ!」
「えぇ⁉」
「もう、サラちゃんはまだ新米なんだから無茶振りはダメだよ」
優しく注意する私をなぜか不気味がるエドとアリサさん。サラちゃんはどうすれば良いのか分からずアタフタしています。
ようやく叶った新婚旅行。その最中、エドはとにかく私を甘やかしてくれました。
温泉宿でも道中の馬車でも常に気を掛けてくれ、二人きりの時はいくらでも甘えさせてくれました。ただそれだけなのにすごく嬉しくて、とても幸せな時間を過ごしました。
「――良いなぁ」
「サラちゃん?」
「わたしもいつかエドさんみたいな素敵な人と出会えるのかな」
ボソッと呟くサラちゃんは羨ましそうに私を見つめました。アリサさんの前だから上手く言えないけど、彼女にも素敵な人が現れることを願う私。ちょっと浮かれすぎてたかな。
「そろそろお仕事モードになるかな」
「お? やっとやる気になったな」
「なによ。エドにもちゃんと働いてもらうからね」
ニコッと素敵な笑みを見せた私に少しだけ顔を引き攣らせるエドだけど、すぐに仕方ないなと言った感じで肩を竦めます。そんな普段と変わらぬやり取りをする私たちを見てアリサさんは微笑み、それに釣られるようにしてサラちゃん笑顔になります。
(エドと2人で過ごすのも良いけど、2人がいての私なんだよね)
サラちゃんが弟子となり、アリサさんも旅から帰ってきて賑やかになったお店。エドと二人の時間も必要だし大切にしたいけど、4人で過ごすこの日常も好きみたいです。
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