第12話 あの時の約束

その①

 前略

 

 リリアさんお久しぶりです。村は連日の雪で銀世界に変わりました。今年は雪が多くて雪下ろしが大変ですがみんな元気にやってます。

今年は春にサラちゃんが来て、それからすぐアリサさんも旅から戻ってきて、なにかと忙しい時もありましたがなんとか無事に一年を終われそうです。

この手紙がリリアさんの下へ届く頃には大樹祭も終わり、新しい年を迎えるだけでしょうか。リリアさん、今年も一年お世話になりました。少し早いですが、良き年を迎えることを祈って。


 追伸 誰かさんが“栗より果物が良い”っていうから林檎を送りますね。


                      ソフィア・ローレン


「ソフィーさんって――」

「なに?」

「どうしてエドさんと結婚しようと思ったんですか」

「……はい?」

 それは大樹祭のごちそうを食べ終え、ルークを寝かし付けた後のこと。ここからは大人の時間ということでアリサさんたちとお酒を楽しんでいた時です。サラちゃんが私たちの馴れ初めを聞いてきました。

「ソフィーさんとエドさんってずっと一緒なんですよね。いつから気になってたんですか?」

「い、いつって……ねぇ?」

「俺に聞くな」

「もちろん求婚はエドからしたんだよな?」

「そ、それは……」

 なんで私を見るのよ。程よく酔いの回ったアリサさんを前に困惑するエドは「私から」と言わせんばかりに私を見つめます。確かにきっかけは作ったかもしれないけど、プロポーズはエドからしてくれたのを忘れたとは言わせません。

「で、どうなんですか?」

「サラ、おまえはもう酒飲むな」

「答えてくれたら飲みません!」

 サラちゃん、やっぱり酔ってよ。ほんのり頬が紅くなってるからもしかしたらと思ってたけど、生まれて初めてのお酒はちょっと飲み過ぎたようです。

「どうなんですか。教えてください!」

「あ~もう。ソフィー」

「え、なに?」

「おまえから話してやれ」

「なんで私なの……って! どこ行くの⁉」

「ルークと寝てる。あとよろしく」

「卑怯者~」

 酔いが回ったのを口実に敵前逃亡を図る旦那様はリビングを出て行き、残された私は仕方なくサラちゃんたちに結婚する少し前の話をしました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る