神の運命さえ曲げる、恋という強欲

あやかしとの恋をミステリー調で書くという、作者さまの名作をいくつも産み落としてきたパターンの作品です。
今回もその例に漏れず、謎が明かされ、パズルが噛み合うほど切なくなる、考え抜かれた物語でした。

これまでのあやかしとの恋は、意思が弱い人間があやかしにつけ込まれる形が多かったのですが、今回はその限りでありません。ヒロインの意思がとてもつよい。毒を喰らわば皿までで、あやかしを引っ張ってしまう力強さがある。その部分がやはり新鮮で、絶望に堕ちていきながら再生していくかのような、生命力を感じました。

一番好きな場面は「私は絶望していない」の所です。
本当の絶望は、多難ではなく孤独なのだと思う。この純真ながら打たれ強いヒロインなら、この世でなくてもいつか幸せを掴みそう。
妖艶かつ透明なすばらしい物語でした。ありがとうございました。

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