⑥-3 聖女として③



 ティトーは見えた色の属性の不安定さから、逆属性を指示しようとするものの、混乱してしまう様だ。先ほども、錯乱していたのだ。無理はない、ティトーはまだ六歳なのだ。


「逆属性、ごっちゃごちゃになる」

「平定するのはティトーちゃんじゃないから、ティトーちゃんは色の見分けから属性を言い当てないとね」

「マリアおねえちゃん、また修行てつだってくれる?」

「もちろんよ」

「あら、私も参加したいですわ!」

「サーシャ様もですか?」


 サーシャはキラキラと目を輝かせると、マリアではなくティトーへ迫った。


「一緒にやったら、楽しいと思いますわ!」

「うん! そうだよね! サーシャおねえちゃんも一緒にやろうよ!」

「サーシャ様、まだ教会の方へは言わないで下さいよ。でなければ、ティトーの取り合い、ラダ族の取り合いになります」


 取り合い、とは。戦争を意味する。それは少年でも理解できる話であった。


「判っていますよ。私は水、地属性と光が専門ですから、赤と緑の時に対応すべきですわね。あら? 先ほどは私の出番でした?」

「サーシャ様は、危ないので後方で……」

「まあ、マリア。私の事はサーシャで構いませんわ!」

「…………はい、サーシャ」


 マリアはついに諦めると、両肩を落とした。そのままティトーへ色のカードを見せながら、属性の逆を言うように努め、何故かサーシャが手を挙げて答えた。


「マリアがげんなりするとはな」

「おい、あの聖女、本当にお前の親族か?」


 レオポルトはやっと警戒を解くと、剣から手を離した。とはいえ、剣を抜くくらいレオポルトにとっては朝飯前であり、その居合い抜きは愛刀ではないものの、アルブレヒトよりも早い。


「母方のな。母の妹、その娘なんだ。……ここだけの話、もうサーシャの両親は亡くなられている」

「そうか。すまない、変なことを聞いた」

「構いませんわ。孤児だからこそ、聖女になったのですから」

「サーシャおねえちゃんは、こじ?」

「ええ。家族がもういないのです。親戚も、彼くらいで。だからこそ、教会へ保護されて、見出されたのですわ」


 サーシャはアルブレヒトへ笑顔を向けるが、げんなりした男はその煌めきを避けた。


「もう、冷たいですわよ。お兄様」

「いい妹を持ったな、アル」

「お前、楽しんでるだろう」

「俺の弟はいい子だ」


 レオポルトはそういうと、ティトーの頭を優しく撫でた。小動物のように手厚く撫でられ、ティトーは万遍の笑みを浮かべると、小動物のように飛び跳ねた。

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