賢者・金のアムゼル
「で、ギムさんここは?」
「えー、デーモンキングの島の南の陸地ドライラント、王国で三番目に大きな土地です」
「え、一番はお城のあったさいしょのとこで」
「ええエインスラント、そして二番目に岩山の大地ツバイラント」
「ここが三番目で、次は?」
「デーモンキングの島フィーアラントです」
「あーやっぱり」
頭の中の地図とギムさんの説明はだいたい合致した。
「じゃデーモンキングんとこ以外はもう制覇しちゃったわけか」
「まだここのダンジョンがのこってます」
「のこってたかー」
「でも、三人目の賢者様『金のアムゼル』をすくいだせば、あとすこしです」
「よかったよ。意気あがるね」
ぼくらがびしょびしょのふくをしぼり、もう一度着て出直すころには、鬼城さんもおちついた。
「さっさと終わらせて、アップルさんむかえにいきましょう」
「そだねー。あんまり一人にしときたくはないよねー」
一、異世界では一人で行動しない
させない、か。この場合。
「よーしやるぜー」
つかれてはいたが、ゴールが見えたのは大きかった。
ぼくらはサクッとのこりのダンジョンを攻略した。
「フラミンゴヘルムいるよ! まあまあつよいよ!」
「つよさはヴァイスヘルムとおなじくらいです。きをつけてくださいね」
賢者様二人が警句を発する。
「パパは優しいね」
「えへ」
「おいブラウ。パパを見習えよ」
「スオーはイスルギみならえ!」
ミーの評価あがってる。
「おま、岩動さんのガチしんねーだろ。引くぞ」
「まじか」
「ああドン引きだ」
「うわー」
「周防くんブラウ、俺はふつうだよ?」
「な?」
「ひくわー」
毀誉褒貶がはげしい。
フラミンゴヘルムはそれなりだった。右ききだったから、今回は店長が割りをくった。ラッキー。
防御に使ってる盾が、なんか固くてつよかった。
「これ、もらっていいです?」
倒したフラミンゴヘルムから、盾をとってギムさんにたずねる。
「どうぞ。むしろ前衛の石動さんこそ使ってください」
「それシラカバのタテだから! マホウのボウグ! イスルギよかったな!」
ラッキー。
盾は今までより軽くてもちやすいのに、なぐられても衝撃がすくなかった。
「この先、エインスラントにもどります」
「おー、冒険のはじまりの地だ」
ぼくらはダンジョンを出る。
地上にあがったら、さっきまでは見かけなかったモンスターがたっぷりいた。
「ニョロスキーじゃん。城からもれてんじゃん」
「あの城おもらししやがりましたねー」
夜の中をウネウネやってくるニョロスキー。
ずっと保ってた几帳面さをかなぐりすてて、自由の翼で大きく世間に羽ばたきやがった。
アップルさん大丈夫かな?
「ちょっとアップルさんのようす見とかない?」
「いっすね。でもドバッシーいないし」
城の北側に駐車してたはずの土鳩さんがいなかった。
キャノピーもなくなってた。
「なら歩きかー」
「すぐですよ。いきましょう」
アップルさんと別れた場所は、バイクなら五分の場所だが、歩くと20分ちょっとかかった。
そこにも初見のモンスターがいた。
「魔法使いじゃん」
「マジュツシよ! マホウをつかってくるわ!」
「ファイヤーボールがきますから、ちゅーいしてください」
「まじかー」
まじだった。
魔術士ファイヤーボールうってきた。
「あっちい! あっちい! みんななんで俺のうしろに隠れてんの! 攻撃して!」
「やー、だって石動さん時間帯責任者だし」
関係なさすぎる。
「店長! クレーム発生でーす前でてよ!」
「クレームじゃないよマジックだよ」
「デビッド・カッパーフィールドですね」
「あ、思いだした。帰って見なきゃ」
「やべーよ新しいシラカバの盾でも攻撃通ってるし。このまま至近距離までよるからみんなせーので倒してね」
「あの、私反撃しましょうな?」
「鬼城さんは最終兵器レジバイト女子だから温存ね。いくよせーの!」
「おらー死ねやあ!」
「うりゃあ!」
「あちち、本当にこれあつい。ダメだ僕の防具でも攻撃通ってる」
「焼き豚店長気をつけて」
けっこう苦労して魔術士を倒した。
「浅生くんドサマギで僕に焼き豚って言ったよね」
「まさか。夢でも見たんじゃ」
「もうー気にしてるんだからやめてよー」
「やせましょうよ店長」
「あ!」
「アムゼル!」
ブラウとパパが声をあげる。
倒した魔術士のふところから、3人目の賢者がニョコニョコ出てきた。
「ううー、たすかったー」
黒いアゲハみたいな羽の、夜の嬢っぽいだ賢者だ。
ペプシNEX0の500㎖ペットボトルのカラーリングとサイズである。
「たすけてくれて、ありがとうございます」
「おかげでさんにんそろったわ!」
「これであなたがたを、まおうのおしろにつれてゆけます」
「それではめをとじて……」
ぼくらは光につつまれた。
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