Episode.22「“想像力は武器”」
1
闇の巨人がカズキを挑発して居る頃....
パラディンナイトに変身したレナードは盾を前に構え、剣を後ろに高く構えながらシーザーが変身したダークナイトへ突っ込んだ。
(相変ワラズ勢イ任セダナ)
シーザーは真剣に余裕の笑みを混ぜた様な表情を浮かべると剣と盾を構えた瞬間、表情から笑みを消し、レナードの剣撃を弾いた。
(俺は此奴と比べて何もかも劣って居る。けど、)
レナードは構え直すと再び突っ込み、シーザーと鍔迫り合いになった。
(負けらんねぇ。絶対負けたくない)
レナードは身体を横にずらして剣を滑らすとシーザーの背後に回り込んだ。
シーザーはすぐさま身体を回して剣を振るうと再びレナードと鍔迫り合いになった。
「コノアイダヨリハ楽シマセテクレルノカナ?」
(・・・)
姿勢と鍔迫り合い状況を利用して荷重を掛けてシーザーの剣撃を押し返そうとするレナード。だがそうも上手く行くわけもなくレナードは押され気味だった。
(同じ手は恐らく通じない....なら、)
レナードは右腕から一瞬だけ力を抜くと同時にシーザーの剣を盾で抑え込むと剣の刃先をシーザーに向けて鋭く構えると勢いを付けてシーザーを突いた。
「見事ナ一手。ダガアマイ」
シーザーは身体を横にズラしてレナードの突きを避けるとそのままレナードを払い避けた。
(しまっ)
シーザーはレナードの背中に蹴りを入れるとレナードを吹っ飛ばした。レナードは受け身をとりながら地面を滑ると地面に突き刺した剣を軸に180度ターンした。
(基礎でも負けてる。やはり何もかも劣ってる....俺じゃ勝てないのか?)
※
2
「レナードがシーザーに勝てる確率?」
「ああ。ヴィクトル、お前ならどう見る?」
魔導書を閉じ、消滅させたヴィクトルは自室を訪ねて来たクラウスと顔を合わせながらベッドから立ち上がった。
「現時点では、20%だ」
「俺と同じだな」
「まぁ、場合によっては15%かもしれないがな」
「それも同じだ」
ヴィクトルは目を瞑りながらクラウスから視線を外し前を向くと目付きを鋭くしながら「但し」と言いながら右手人差し指と中指を挙げ、ピースサインを作った。
「2つの事に気が付ければ、確率は65%ぐらいまでは上がる」
「2つ?。3つじゃなくてか?」
「恐らく1つ目は、カズキが気が付かせるだろ」
「1つ目、“命ある限り負けは無い”をか?」
「恐らくな。それに気が付き納得すれば、25〜30%には増える」
そう言うとヴィクトルはピースサインを崩しながら手を下ろすと天井を見上げた。
「残りの2つに気が付けるかどうかだな」
「ヴィクトルは、何だと思う?」
「・・・」
ヴィクトルは左手を前に挙げると魔導書を出現させ、右手で指差した。
「2つ目は、コレです」
クラウスは鼻で笑うと、
「恐らく、俺と同じだ。・・・3つ目は?」
ヴィクトルは魔導書を消滅させると自分の頭部を指差した。
クラウスは再び鼻で笑うと呆れ笑みを浮かべた。
※
3
(向コウハ以外トイイ勝負ラシイナ。ヤッパリ此奴ガ弱イダケカ)
レナードと鍔迫り合いになるシーザーはそう思いながらガッカリした様な表情を浮かべるとレナードの剣撃を弾き返した。
「モウオシマイカ?」
レナードは言葉を発する前に盾を前に構えてシーザーに突っ込んだ。
(ハァ。モウ飽キタ)
シーザーはレナードの突撃をヒラリと交わすとレナードの背後をマントごと斬り裂いた。
(ガッ!。・・・やっぱり、無理か?。....いや、まだまだ、まだ生きてる)
レナードは自身の魔力を使って鎧とマントを修復するととある事に気が付いた。
(ん?。鎧を魔力で直せるなら、再生も出来るのか?)
「メンドクサイネ〜。再生モチカ!」
シーザーは勢いよくレナードに斬り掛かった。レナードはシーザーの剣撃を全て盾で防ぎながら必死に次の一手を考えた。
(どうする?どう攻める?)
「防戦一方カナ?デモモウ、限界ジャナイカナ?」
(チッ!マジでどうする。このままじゃ負ける!)
シーザーが振り翳す剣とレナードの盾がぶつかり合い、火花を散らす中、レナードは必死に頭を回した。
それを見ていたセシリア達は次第に苛立ちの様なものを覚え始めた。
そんな中、ソフィアは数歩前に出ると呆れた溜息を吐きながらレナードを見上げた。
「何やってんのよレナードォォォォッッ!」
(ッ!)
「頭が硬いのもいい加減にして!。昔のセシリアそっくり!。考えてないで試せば良いのよ!、やってみれば良いのよ!」
(・・・)
レナードはシーザーの剣撃を盾で受け止めると硬直した。その瞬間、レナードとシーザーは膨大な魔力を感じ取るとリョウタの方を向いた。
(リョウタガ本気ニナッタ?)
※
4
「ヴィクトルさんがそんな事を?」
「彼奴、本当に凄いよ」
ヴィクトルの部屋から退出したクラウスは偶然出会ったアニエスと並んで通路を歩いていた。
「彼奴の直感と分析力はまるで未来予知だ」
「それは、私も前から思ってました。・・・それで、」
「?」
「お二人は、何がレナードさんに欠けて居ると?」
クラウスは腕を組みながら顔を斜め上に挙げると、
「“自身が持ってる魔力の特性理解”と“それを扱う想像力”だ」
「“想像力は武器”。教官達がよく言っていた言葉です」
「彼奴の魔力は膨大且つ汎用性が高い。それに気が付けるか否かが勝敗のカギだ」
そう言うとクラウスは顔を元に戻すと僅かに表情を鋭くした。
「でも、シーザーって方が仕掛けて来るとは限らないんじゃ」
「来る。奴らは仕掛けて来る。・・・そして、」
「?」
「俺達がこうしてる今も、戦ってる」
そう言うとクラウスは再び顔を斜め上に挙げた。
「ただ俺的には」
「?」
「レナードよりカズキが心配だ」
「え?」
「シーザーは恐らく慢心してる可能性がある。ただカズキはリョウタに一矢報いた。もし長期戦になったら、カズキも危ない。いや、それ以前に、」
「それ以前に?」
「俺が敵なら、カズキを消耗させてから仕掛ける。変身前の状態である程度消耗させ、勝負を挑む」
「・・・もしかしたら、カズキさんもレナードさんも危ないんじゃ」
「ただ、カズキの力には“未知数”な部分が多い。無論、これはレナードにも言える事だがな」
「難しい戦いですね」
「簡単な戦いなんて無い。だろ?」
「その通りです。ただ、」
「?」
アニエスは僅かに俯いたのち数秒考えると顔を挙げたのちクラウスと顔を合わせた。
「クラウスさんが居れば大丈夫。そんな気がします」
そう言われたクラウスは僅かに驚いた様な顔をするとアニエスから顔を逸らし、僅かに照れ隠しの様な動作をすると、
「俺も、....アニエスが居るから戦える。・・・アニエスが居るから安心出来る....」
「・・・」
「?、どうした?」
「その台詞、顔を見て言って欲しかったです」
「す、すまん....」
※
5
(馬鹿野郎。油断シテルカラアアナルンダヨ)
そう思いながらレナードを弾き飛ばしたシーザーは軽く舌打ちをしたのちレナードに刃先を向けた。
「アアイウ油断ヲスル程、バカダト思ウナヨ。モウ終ワリニシテヤル」
(・・・)
「覚悟!」
そう言いながら剣と盾を構えるシーザー。
するとレナードは盾を前に構え、カードの姿勢に入った。
(出来るかどうか分からないけど。やってみるしかない。正攻法で勝てないなら、魔力を上手く使うしない。カズキ。お前のやり方、真似させて貰うぜ)
そう思ったレナードは自分の元へ突撃して来るシーザーに盾を投げた。
「バカガッ!」
(今だ)
シーザーはレナードが投てきした盾を弾くとレナードに斬り掛かり、左右真っ二つに斬り裂いた。
「ァッ⁉︎」
「....」
「嘘....」
“レナードが殺られた”。誰もがそう思った。
・・・2人を除いて....
(レナードが意味もなく盾を投てきする訳ない。恐らく、何か理由があった筈。だとするなら、あれは....)
(違う。何カ違ウ。鎧ハ斬ッタ。ダガ、ナンダコノ妙ナ感ジハ....)
シーザーは斬り裂いたレナードから数歩離れると表情を険しくしながらハテナを浮かべた。
(・・・ッ!)
シーザーはハッとした表情を浮かべると後ろを振り向いた。そこには鎧やマントを再生させつつ片手剣を両手で構えながら飛び上がるレナードが居た。
「ナニ⁉︎」
シーザーはすぐさま回避行動に出た。が、レナードは構わず剣を振り下ろした。
残念ながらシーザーの回避行動が早く致命傷を与える事は出来なかったがレナードはシーザーの背中をマントごと深く斬り裂いた。
(“想像力は武器”。そんな言葉があるが、こんな使い方があったとはな)
「ナマイキナァァァッ」
シーザーはすぐさまレナードに向かって剣を振った。その剣撃を受け止められたシーザーはすぐさま超至近距離でシールドバッシュを仕掛け、レナードを突き飛ばした。
「一体、一体レナードさんは、何を?」
「・・・鎧を、パージしたのね」
「え⁉︎」
「で、パージした鎧を魔力で生成した人型人形に着せ、囮にした」
「そんな事したら、レナードさんの身が....」
「鎧を修復した時に、行けると踏んだんじゃないのかしら」
表情を若干和らげながらソフィアはそう言うと「やれば出来るじゃない」と呟き僅かに口角を挙げた。
「鎧が魔力製。なら、パージしても再生が出来る....」
「変身時には、変身時なりの戦い方があるって事ね」
セシリアに続いてそう言ったソフィアはそのままレナードを見守った。
シーザーのシールドバッシュで吹っ飛ばされたレナードは盾を再召喚しながら体勢を立て直すと逆にシールドバッシュを仕掛けた。
「僕ニ擦リ傷を負ワセタグライデ、調子ニ乗ルナ!」
(チッ!擦り傷程度だったのか!)
シーザーの言葉を鵜呑みにした状態でシールドバッシュを仕掛けたレナードはシーザーが左側に避け始めたの見ると盾を消滅させたのち剣を左手に持ち替えた。
(ナニ⁉︎)
レナードはシーザーと目を合わせるとそのまま剣を横に振った。
振り向きの勢いも混ぜて思いっきり振ったがシーザーの回避の方が早く、シーザーの鎧に傷をつける事しか出来なかった。
(ッ!やはりダメか⁉︎)
剣を右手に持ち替え、盾を左腕に装着したレナードはすぐさま次の一手を考えた。
「レナード!諦めないで!」
(ソフィア....)
レナードはソフィアの声に反応する様に剣を強く握るとシーザーと顔を合わせた。
しかしシーザーは自分が今だに有利な状況にあるにも関わらず、急に戦闘体勢を解いた。
(チッ!。リョウタガ撤退シヤガッタ。クッソ、後少シダッテ言ウノニヨ)
シーザーは全身を黒や赤の魔力で包むとその場から消えた。
それを観たレナードはリョウタの撤退を確認したのち変身を解くと、その場に座り込んだ。
レナードは軽く息を切らし、俯きながら立ち上がれずに居た。そんなレナードの目の前に一本の手が差し伸べられた。
「?」
「お疲れ様」
「ソフィア....」
レナードはソフィアの手を掴むと力を借りながら立ち上がった。が、レナードはすぐにはソフィアの手を離さなかった。
「?」
「暫く、握ってても良いか?」
「・・・お好きに」
レナードは僅かに口角を挙げた。
そんな2人を静かに見守って居たセシリアは少し長めに息を吐いた。
「もう、大丈夫そうね」
「?」
「多分、レナードは多少の自信を持てたんじゃないかしら」
「成る程」
セシリアは強く手を握り締め合うレナードとソフィアを再度見ると「意外とお似合いかもね」と呟いたのちストライクアルファの方に向かった。
「?。ヘレナ先輩?」
「・・・レナードさん....」
「?」
※
6
次の日....
力の過剰使用により医務室のベッドに横たわるカズキの見舞いをすませたレナードは医務室から出るとヘレナとバッタリ会った。
「ヘレナ?。君もカズキの見舞いに」
「あっ、いえ。レナードさんに、用があって」
「俺に?」
医務室の扉を閉めたレナードはヘレナと並んで通路を歩き始めた。
「レナードさんは、凄いですよ」
「?」
「魔法をあんな風に使うなんて、誰も思い付きませんよ」
「・・・ソフィアの」
「え?」
「ソフィアの言葉に諭されたってところかな?」
「・・・レナードさんは、1人じゃないですから」
「え?」
「1人で何もかもやろうなんて、思わないで下さいね」
「別に、思ってるつもりは無いが....」
「なら良いんです。レナードさんは1人で抱え込んで、1人で頑張ろうとしてる様に見える時がありますから」
「・・・かもな」
「レナードさんには私が付いてますから、安心して下さい」
そう言うとヘレナはレナードに微笑んだ。
レナードは心の中に複雑な何か抱えながら頷き返すとヘレナと別れた。
「・・・」
(色々、整理出来てないな。俺)
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