Ⅱ.Want to Spend my Youth
陸軍司令部ビルディングの地下5階。そこは
「5963、エージェント
四十代初め頃の男、こいつが俺の上司。
「青春うるわしい男子をこんな所へ呼んで何がしたいんです?」
「ハハハッ。そんな所で申し訳ないが、敏腕スパイのお前さんに、小任務だ」
「はぁっ?」
内容はこう、
港はターミナルの出川駅からモノレールで終点まで乗ると着く。都会には変わりない位置にあるので大きな動きは敵味方両方できない。
『先のスパイ狩りで多数がやられてしまってな。代わりにお前が行け、
いやお前も来いよ。なんて愚痴を思っていると、
「何かぞろぞろと来たな……」
スーツケースを転がせている屈強な男たちが20人程やって来た。
「ツアーなら、確かガイドさんが付くことが義務化されているから、こりゃあ怪しいな」
ただ仲の良い団体だったら申し訳ないが少しの間、彼らをマークした。
「やっぱり国際港、監視カメラの数が尋常じゃない。こりゃあ潜入しづらいな」
かつて世界で冷戦が繰り広げられていた時代、諜報員は今よりも断然多かったと言われている。監視カメラはあれどそれを制御するシステムが発明されていなかった分、諜報はしやすかったのだろう。
だが今ではそうもいかない。全世界の監視カメラを制御するシステムが世界政府や世界警察の本部に置かれていたり、人工知能で
先の怪しい男団体はというと、
「立ち入り禁止エリアに堂々と入っていったぞ、どういうことだ?」
「どれにも映っていない。つまりは、何者かが書き換えている」
そうと分かってはトイレに駆け込み、清掃員の変装をして彼らを追う。
時刻は19時。辺りはまだ活気づいているのにも関わらず、闇の取引を予定しているとは思えない。だがスパイにとって先入観は一番の敵。彼らが監視カメラの映像に映っていないのならば、俺も映らない。尾行をしてもバレずに済む。後1時間で接舷するというのに入りが早い。今消しておくというのも悪くないが、まだ泳がせておく。極力一撃で仕留めたい。
例の船が来航。表向きはただの都市間フェリー。荷台のごく一部に闇商人がいる様に思われる。
スコープの付いた消音ライフルを手に取り、現場を監視。案の定ヤバい品々が取引されている。
「これは
アタッシュケースを持っている一人の頭を撃ち抜いた。バタッと倒れた矢先、他の組員は「何だ何だ?!」と左右をキョロキョロ見ている。
「ほれっ」
一人の組員が気付いた時、もう遅かった。手榴弾がきれいな放物線を描き、見事に爆発。もう大部分が消されたが、残党は
「あっちだ!撃て!」
とこちら側に無差別乱射。これじゃあバレるだろっ!と敵ながら思う。
銃を構えるのは5人。ライフルに持ち替え、一人一人丁寧に消していく。
「ふぅ。誰も出てこない。大丈夫だな」
後は物品の回収と後始末。上手くカバンに詰め込み、党を海へ返し、戦場を去った。
「あぁーっ、疲れた」
任務を終えた途端、ただならぬ安堵感と同時に疲労感を感じた。
「ご苦労だった。エージェント
「良ければ鑑定にでも出します?良い品々ばっかりですけど」
アタッシュケースには、金銀財宝がぎっちり。
「電子機器の材料にでもするか」
「貰っても良いですか?」
「却下」
「そういえば高校、入学したんだろ?」
「ええ、まあ」
不意な質問にこの程度の返ししか出来なかったと思えば、
「じゃあ入学祝いだ。俺も第二の親みたいなもんだからな」
「生々しい……」
金一封。現金は一番困らないけれど手渡しなのかよ。
「現ナマ100万だ。普段の給料に上乗せしておいた。4月分の給料ということにしておいてくれ」
「ありがとうございます!」
金額を聞いた瞬間、テンションが上がってしまうのが人間の宿命なのである。
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